第2話 白桃
「……ここは人間の世界なのか」
「そうだよ」
謎の声が耳に入り、オートは即座に一二三の方へと目を向けた。心なしか小さくなっているクラゲの魔獣は、いつの間にか部屋中をふよふよと漂っていた。
「こっちこっち」
その台詞の正面を顔を向けると、少年の目の前には根元ピンクで白髪の少女と、三つ編みの女の子が居た。
おぼろげな記憶を辿ってみると、根元ピンクの白髪は男性という所まで、オートは思い出すのに成功した。
「確か……ハクト、だっけ」
少年の言葉に、根元ピンクの白髪は嬉しそうに微笑んだ。まるで少女のような笑顔だから、本当に性別が男なのかを疑うオートだった。
「そう、君はオートって言ってたっけ。やっぱり、髪色から?」
オートは黙って頷いた。ハクトという名前も白桃から因んでいると聞いて、ノイリがつけたのかと問いかける。
「ノイリってなぁに?」
「なんでも……ない」
ハクトはノイリを知らなかったのを見て、オートは口が滑ったと感じた。そもそも相手がどういう存在かも分からないのに、軽はずみに何かを話すべきではない。
「僕はハクト、白桃髪のハクト。得意魔法は氷を意思で変化出来るもの」
目の前に手を差し伸べられたが、オートは握手に応じなかった。
ハクトの手のひらは思った以上にゴツゴツしていて、自分と大きく差がないのに気が付いた。ようやく少年は、白桃色の彼を男性だと認識したようだった。
「何が……目的だ?」
オートの言葉に、ハクトは女子のような円い瞳を更に丸くした。
「なにが……って?」
「俺を此処に連れてきた理由だ」
「それは……」
「……聞きたいことがあるから」
ずっと押し黙っていた三つ編みの女の子が、ここに来て初めて口を開いた。まるっきり表情も変えずに淡々とした口調だったので、なんとなくオートは眉をひそめた。
「……わたしは白樺つむぎ、魔法少女。元々は同じクラス」
つむぎという三つ編みの女の子の台詞は、彼とってには全く理解不能だった。
ここでオートは、クラスというのは階級という意味だと捉えていた。魔獣には上級と下級の二つの階級があって、保有魔力や強さによって分類される。
一番の違いは、再生能力だとノイリは言った。受けた攻撃が致命的なものでない限り、魔力を使って回復が出来るのが上級魔獣。傷の深さや欠損度合いで、時間や魔力の消費量が変動するものの、治せない傷は皆無としても過言じゃない。
「魔法少女も……上級とかあるのか?」
少年の言葉にハクトは目を点にして、つむぎは黙って首を横に傾げた。
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