二日目
第1話 無音
起きたらベッドに寝ていて、窓の向こうから朝日が顔を出していて欲しかった。
そんな願望は、既に幻想と化してしまっているかもしれない。少年は心底うんざりしたような表情を浮かべた。
空は雲一つ無いのに灰色で、太陽なんて欠片も存在しなかった。砂利の上で起き上がり、彼は大きく欠伸をする。
時間が分かるものも無ければ、朝も夜も判別が出来ない。不自由な空間だと感じたが、そもそも分かった所で何の意味も無いのに気が付いた。
周囲を見渡せど、大カエルどころか、何の生き物も出てくる気配はしなかった。
ここはあの世なんじゃないか、と少年は思った。天国とか地獄というものは人間の作り出した出鱈目であって、人は死んだら此処のような虚無に放り出されるのかもしれない。
仮にここが死後の世界だとしても、この能力は何なのだろうか。彼は指先を弾いて、燐寸程度の火を放った。
この能力はまるで、昨日の大カエルを倒す為に用意されたように少年は思えた。ここは何者かが用意した箱庭で、舞台装置として用意された者が、与えられた日を描くような世界。
おぼろげな考えを脳内に広げてみるが、どうもしっくり来ない少年が居た。難しいことは考えたくないし、そもそも頭を使うのは得意じゃない。それでも自分の置かれた状況は理解したいものの、判断材料が少なすぎるのだ。
少年は立ち上がり、砂利を踏みしめて歩き出した。目的なんて無かったが、座っていても何の意味もないと感じたのだ。
乾いた地面と、塗りつぶされた空の狭間。まるで彼は、そこに居る自分を見出したかったようだった。
跳んだり走ったりする意味が無ければ、口を開く理由も無い。全てのものに始まりと終わりがあるのだとすれば、少年は自分がどの辺りに居るのかが全く分からなかった。
彼が居る荒野は、どこまで行っても無音だった。
草木も無ければ、風も吹かない。ありったけの静寂が、世界を支配しているようだった。だからこそ少年の耳には、どこかで何かが砂に倒れる音がはっきりと聴こえた。
久しぶりの自分以外の何かが起こす物音に、少年の感情が大きく揺れた。
何となく周囲の雰囲気も変化したように思えたが、そこは気のせいなのかもしれない。音がした方向は、なんとなく分かっている。
駆けだしたい衝動を抑え、少年は慎重に足取りを進める。自分の足が砂利を踏む感触に、心臓が呼応するような感覚を持つ。一歩進むごとにより、緊張が一段階上がるような気分だった。
そして少年の瞳には、倒れている何者かの姿が映った。
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