第70話 告白①
「ここって……」
「知ってる?」
「うん、知ってるよ!! テレビとかでも結構景色映ってることあるから、来たことないけど見たことはある!!!」
灯は興奮気味に歩き、近くの柵に手を置いて身体を少し乗り出す。
目の前に広がるのは昼間の爽やかな青い海から少し様変わりした、青の中にも少し暗さがある青と黒の海。
周りには観覧車や船のターミナル、巨大なビルがあり、暗さと光が良い感じに混ざり合っていて、なんだか大人な雰囲気だった。
「あそこの辺りで、よくニュースでお天気キャスターの人が『今日の天気はーー』とか言ってない!? ほら、絶対あの観覧車いつも映ってるやつだって!!!」
灯が指を差した場所は、ちょうど観覧車がバックで映りそうな場所だった。
「きっとそうだね。 朝になってあの辺に行けば、お天気キャスターさん見れるってことかな?」
「確かにそうかも。 うわーなんだか凄いなー! 私たち、テレビでもよく映ってる場所に来てるんだーー!!」
「地元はあんまりテレビで映ることないしね」
「そうそう。 私、人生であの縦長くて先の方にモフモフつけてるカメラ持ってるカメラマンや、マイクを持ってる美人さんとか2回ぐらいしか見たことないよ! それも旅行先」
「見たことあるなら良いじゃん。 俺なんて一回もないよ」
何気ない話をしながら俺たちは歩く。
周りを見ると人はあまりいない。
いるとしてもジョギングをしていたり、犬の散歩をしている人とかだ。
ネットで夜は意外と人も少ないって書いてあったけど、本当に少ないんだな。
あれかな?
けっこう有名だけど、この時間帯は他の有名な場所に人が集まるのかな?
右には海が広がり、左には大きな噴水がある公園。
けっこう前の方には大きなビルがたくさん建っていて、観覧車の辺りでは陽気な音楽と楽しそうな声が響いていた。
「海風がきもちーね」
灯が風で揺れる髪を手で少し抑えながら笑う。
その笑みはどこぞのお嬢様のように美しく、可憐だった。
しかし、その瞬間に大きな風が吹く。
海の潮の香りが鼻を突き抜けると同時に、灯の綺麗な黒髪が暴れ、鞭のように髪が灯の顔に当たった。
「うぶっ!? うへーちょっと痛かったー! 髪の毛、口に少し入っちゃったよー!!」
「っっ大丈夫?」
「あーーー!! 泉、なにちょっと笑い堪えてるのー!? そんなに面白かったのー!? 酷いっ!!」
「いやっそのご、ごめん。 笑うつもりはなくって……!!」
「とか言って笑ってるじゃーーん!!」
灯がプンスカ頬を膨らませて怒る。
その表情が灯には悪いんだけど、更に面白さに拍車をかけていた。
「えぇーー!! そこまで笑う??」
灯は首を傾げて不思議そうに聞いてくる。
確かに他の人から見たら、ここまでツボに入るのは不思議だよね。
でもねーーーーー
「だってさ、風で揺れる髪を手で抑えながら笑う灯はどこぞのお嬢様みたいに可憐で可愛いのに、その次の瞬間には、いつものどこか抜けてるけど、可愛い愛嬌のある灯に戻ってるんだもん。 そのギャップが激しくて思わず笑っちゃった」
「えっ…………!?!?」
俺は目尻に溜まった涙を指で掬う。
俺の横にいる灯は顔を真っ赤にしていた。
ふふっ………あーなんだか余計な身体の力が抜けたかも。
「ねぇ灯」
「は、はい!!!」
俺は灯の前に立つ。
そして笑顔で言うのだった。
「ーーーーーーーーーーーー俺は、あなたのことが大好きです。 俺と付き合ってください」
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