第69話 少し観光しよう
「おぉ〜やっぱり高いところは綺麗だね」
「ねっ!! こんなに綺麗だと嬉しいよね〜」
「もっと暗くなれば夜景とかも綺麗に見えそう」
「そうだね。 でも、ビルとかの光がついてたら、それだけ働いている人がいるってことで……」
「灯、夢のないこと言わないでよー!!」
「あははっごめんごめん」
俺は窓側のベットに腰掛けた状態で、隣のベットで時計をいじっている灯に声を掛ける。
俺たちの荷物はテーブルの上に置いたり、床に置いている。
確かに2人で使っても大丈夫な広さだけど、少し窮屈には感じるかも。
「これからどうしよっか? どこに観光行きたいとかある?」
灯が窓の外を見ながら言う。
……実を言うと、俺はどうしても行きたい場所があるんだ。
後は灯に提案するだけ。
…………ふぅ。 覚悟は決めてるんだ。
後は実行する勇気だけだ。
頑張れっ頑張れ俺っ!!
俺は震えそうな身体に力を入れる。
手は開いた状態で膝の上に置いていたが、気づけば爪が食い込むぐらいぎゅっと握っていた。
「……俺、行きたい場所があるんだ。 灯が良かったらそこに一緒に行かない?」
俺は灯の顔を見ながら言う。
声は震えてないかな? 表情はいつも通りかな? 灯に断られたらどうしよう?
俺の中で色々な気持ちが混ざり合う。
外からの音は全く気にならず、とにかく自分の心臓の音などがうるさかった。
「良いよ〜一緒に行こっか!!」
俺がドキドキしていると、灯がニコッと笑って答えてくれた。
それを見ると少し身体の力が抜ける。
首元や脇には少し汗をかいていた。
「それで、泉が行きたい場所ってどこ?」
「それは着いてからのお楽しみってことで」
「えぇーーー!! なにそれっ! 気になるな〜」
「そんなに遠いところじゃないとだけ言っとこう」
「ふ〜ん……どんなとこなんだろ? 気になるし楽しみだなー!!」
灯はニコニコと笑いながら、テーブルに置かれている鞄を手に取る。
俺も床に置いてある荷物を手に取って、ベットから立ち上がった。
「そこまでの行き方とかはもう調べてあるから安心してね」
「準備良いね。 そんなに行くの楽しみなんだ」
正直楽しみなんて殆どない。
不安とドキドキでいっぱいいっぱいだ。
「まっそんなとこかな」
俺たちはそんなことを話しながら部屋を出る。
そして、目的地へと向かうのだった。
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