第68話 ✳︎やっちゃった!!

「(やっちゃったやっちゃったやっちゃった!!! なんで私はこうポンコツなの!? 初歩的なミスすぎるでしょう〜〜!!)」


 今日は待ちに待ったライブ遠征の日。


 来る途中にハプニングはあったけれど、迷わず泊まるホテルに着くことはできた。


 後はチェックインして荷物置いて、泉と少し観光しようと思ってたのに!! それなのに!!


「あの〜お客様〜〜??」


 私がショックを受けていると、受付のお姉さんが苦笑いをしながら声を掛けてくる。


 うわ〜この人綺麗だな〜やっぱり受付の人って美人の人が多いのかな??ってそうじゃなくって!!!


「予約は一部屋となっておりまして、本日は他の部屋も空いていない状況でございます。 どうなされますか??」


 どうなされますか?ってそりゃ常識的に考えると男女の部屋は分けた方が良いはず。


 でも、今から他のホテルで二部屋も予約とれるの?


 取れたとしてもそのホテル代+このホテルのキャンセル料払わないといけないよね?


 でも、そんなことすると高校生の私たちにとってはお財布に大ダメージだ。


 どうしよう??


 私はどうするべきか悩む。


 すると、さっきまで後ろで見守ってくれていた泉がいつの間にか私の横に来て、受付のお姉さんと話し始めた。


「その一部屋ってどんな感じですか?」


「ご夫婦やカップル様が使われることが多い部屋となっております」


「ベットはどんな感じですか?

 大きなベット1つみたいな感じですか?」


「いえ、普通のベットが2つでございます」


「なら予定通りそのままお部屋に泊まらせていただけないでしょうか?」


「い、泉?」


 どうしたの? 私と2人っきりでライブ遠征って知った時、ななちんにチケットを譲ろうとしていた泉とは思えない。


 なんだか覚悟を決めている顔なような気がする。


「私たちは問題ございません。 しかし、お連れの方がーーーーーーーー」


「大丈夫です。 ねっ灯?」


「えっ、あっうん」


「彼女もこう言っているので、ぜひ泊まらせてください」


「分かりました。 それでは部屋の鍵をーーーーーーーー」


 私がテンパっている間に、あれよあれよと進んでいく。


 私が落ち着いた頃には既に、2人とも鍵を持ってエレベーターの中にいた。


「あわわわわっっつ!!」


「勝手に進めてごめんね」


「いや、いやいやいや! 泉が謝らないでよ!! 元はといえば間違えた私が悪いんだし!!」


「でもーーーーーーーー」


「でもじゃないの!!」


 そう。 泉はなにも悪くない。


 悪いのは間違えた私だ。


「じゃあ、もう問題は解決したし、これでこの話はおしまいにしよっ! ねっ」


 泉は私に笑いかけてくれる。


 私は少し言葉に詰まったけど、謝るのは泉が望んでることではなかったので代わりにお礼を言った。


 そんなやりとりをしていると、私たちの部屋がある階へと到着する。


 エレベーターが開くと近くに観葉植物とベンチが見え、廊下の下から転々と光る明かりは高級感を出しているように見えた。


「えっと、俺たちの部屋はーーーーーーーー」


「左の方みたいだよ」


 私は泉の手を握って引っ張る。


 後ろで泉が驚いたような気配を感じたけど、私だって泉にはさっき驚かされた。


 まさか一緒の部屋で良いって言うなんて……。


 今までの泉には考えられないことだと思う。


 でも、そんな考えられないようなことをしたのは、ななちんの家で晩御飯を食べたあの日が影響してるってのはなんとなく分かった。


 泉は今、色々覚悟を決めて頑張ってくれている。


 なら、私も頑張る。 受け気味だけでは終わりたくない。


 私は泉の手を握りながら泊まる部屋へと向かう。


 そして、鍵を開けて一緒に一晩泊まる部屋へと入ったのだった。

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