第59話 水族館デート②
「おぉ……神秘的だなぁ」
「凄いね……360度どこを見ても青い水と魚達がいるよ」
「わっ! 灯、下見てよ下!」
「下? うわっ! デッカいエイが泳いでる!」
俺たちはお金を払って水族館の中に入り、歩いていく。
最初は周りの人の顔がギリギリ見えるかってぐらい室内は暗く、展示されている魚も小さな物が多かった。
でも、少し歩いて行くと視界が晴れ、見えてくるのは大量な魚達と、透き通るような青が広がる世界だった。
これを見て俺達は大興奮。 パンフレットでも書かれてたけど、実物はやっぱり違うな。
迫力がパンフレットの何倍もあるよ。
「なんかファンタジーの世界みたいだよね。 まるで深海の中を歩いてるみたい」
「その気持ち分かるよ。 少なくとも、日本にいるなぁって感じはしないよね」
「本当だよー! あっ! 泉見てみて! ジンベエザメがいるよ! でっかいなー!!」
「うわっ! まじでデカイじゃん。 どんぐらいの大きさなんだろ……12m以上!?」
俺はガラスに貼られている手作り説明板を見る。
そこには飼育員さんが書いたと思われる愛らしいジンベエザメの絵と、説明が書いてあった。
「泉って身長181cmでしょ? ってことは……あのジンベエザメ、泉が6.5人分ぐらいの大きさがあるってことじゃん!!」
その言葉を聞いて俺は、6.5人分の俺が繋がって泳いでいる姿を想像してしまった。
……なんだかそう言われると弱そうだな。 スピードも出なさそうだ。
「あっ! こっちの説明板の絵、ムッチャクチャリアル!」
「画風がさっきと全然違うね」
ジンベエザメの絵は可愛らしいタッチだったけど、エイの絵は光とか影を上手く使っていて、説明板から飛び出してきても不思議じゃないぐらい凄かった。
「見てて飽きないよね」
「うん。 魚達が凄いのも勿論だけど、お客さんを楽しませたい!っていう、飼育員さん達の思いが伝わるような工夫も凄いよね」
「これはハマりそう」
「分かる」
俺達はそんなことを話しながら、手を繋いで歩いていく。
クラゲエリアでは俺のテンションが上がり、ペンギンエリアでは灯のテンションが上がった。
ペンギンのヨチヨチ歩きを見て、同じように歩く灯は可愛く、思わず動画を撮ってしまうほど。
それを見た灯は『誰に許可とって撮ってるのー!』と少し怒った感じで言っていたが、その表情は満面の笑みを浮かべていた。
そんなこんなでイルカショーとかも見て、俺達は目一杯水族館を楽しんだ。
残すは触れ合いコーナーとお土産屋ぐらいだ。
「あっ! もう出口見えてきたね。 でも、いっぱい面白いことがあって充実感凄いよ!」
「なんか心が満たされたよね!」
「それ分かる!!」
俺たちが水族館に入って2時間半。
楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、気づいたら出口が目で見えるぐらい近づいていた。
「最後に触れ合いコーナーあるね」
灯の言葉を聞いた俺は、磯場を再現した水槽の中を見る。
そこにはヒトデやウニ、ヤドカリなどがいた。
「うわっ。 結構身近で見ることないから新鮮だわ」
「泉! ヒトデって不思議な感触するよ! 硬すぎず柔らかすぎずで変な感じ! 泉も触ってみなよ!」
そう言って灯はツンツンとヒトデを突く。
不思議な感触が気に入ったのか、良い笑顔を浮かべていた。
「そ、そうなの?? じゃあ、触ってみようかな」
と言ったものの、俺は未知なる生き物に躊躇してしまい、出した手を何回も引っ込めてしまった。
そんな俺をみて痺れを切らしたのか、灯はガッと左手で俺の右手を掴み、ヒトデへ触らせるのだった。
「うぉぉぉ!!??……ふ、不思議だぁ……」
「でしょでしょ」
感触は確かに不思議だけど、水が良い感じで冷たくて気持ち良い。
これは灯がハマるのもなんとなく分かるような気がする。
「ウニはトゲドゲしてるよ! なんか攻撃技でトゲ飛ばしてきそう!」
「そのトゲ、攻撃技にも防御技にもなりそうだよね」
「あーそれ分かる!!」
俺たちは触れ合いコーナーで童心に戻りながら楽しんだ。
その後は出口付近に設置されているお土産屋に行き、あれよあれよと店員さんの口車に乗せられて、予定以上のお土産を二人揃って買ってしまったのだった。
「あ〜楽しかった。 このヒトデの被り物、お姉ちゃんにあげよーと」
「それ陽さんにあげんの!?」
「うん。 案外ノリノリで被ってくれると思うよ? 酔っ払っている時に!」
俺の脳裏には酔っ払った陽さんの姿が浮かんでくる。
確かにあの状態の陽さんならやってもおかしくないな。
「これはお母さんにあげるやつでしょ? これはねーーーーーーーー」
灯は袋の中からウキウキでお土産を取り出し、誰にあげるのかを説明してくれる。
その楽しそうな姿、表情を見て、今日の目標を達成することができたんじゃないかと俺は思った。
「泉はお土産誰にあげるの??」
「このイルカのアクセサリーは都と晴かなぁ。 これはーーーーーーーー」
俺も灯と同じように袋の中からお土産を取り出す。
片桐さんには色々助けてもらったから、お土産渡さないとな。
そんなことを頭の片隅に残しながら、俺達は水族館を出て、帰路についたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます