第53話 ✳︎二人三脚
『これから2年生による二人三脚を始めます』
「あっ! ななちんと泉の番だ!」
放送を聞いて私は友達との会話を中断して、入場ゲートの方を見る。
どこにいるかな?、見つけられるかな?とか思ったけど、案外2人は簡単に見つかった。
「あ、奈々と高山君じゃん。 2人とも頑張れー!」
友達が気づくと、声を出してエールを送る。
それを聞いて、クラスのみんなが『頑張れー!』とか、『負けるんじゃねーぞ!』と、各々熱い声援を送った。
それを聞いてななちんは笑いながらピースサインをし、泉は頬をかきながら小さくピースサインをする。
んぁぁぁぁぁ! 顔を少し晒して照れながらピースサインする泉がわぃぃぃぃ!!
さっきの腹チラで見えた男らしい腹筋とのギャップ、すごすぎぃぃぃぃ!!
私は心の中で悶えていると、気づいたら泉達の順番になっていた。
「あれ!? もう泉達の番!?」
「そうだよ。 灯大丈夫? なんか百面相してたけど」
「嘘ぉ!?」
「マジマジ。 見てる分には面白かったよ」
友達はニヤニヤ笑う。
うわ〜! 恥ずかしい!
そんなことを思っていると、泉達がスタートラインに立つ。
あっ! 応援しなきゃ!!
「ななちーん! 泉ー! 頑張れぇぇぇ!」
私が声援を送ると同時に鳴る、ピストルの音。
それを聞いて2人は一気に走り出した。
2人は口を『1.2! 1.2!』と動かしながら、リズムよく前に進んでいく。
他の人たちはゆっくりだったり、転けたりしていたのに、2人だけは早くて、妙に浮いていた。
「やばいやばい! あの2人くそ速くね!?」
「他を寄せ付けてないわよ!!」
「圧倒的すぎて笑うわ」
クラスメイトが笑ったり、驚いたりしながら2人の走りを見る。
2人の走りを見ていたら凄いと思う気持ちと、仲の良さを見せつけられているような気がして、ちょっとムッとした気持ちになった。
でも、そんな気持ちになるのは2人に失礼だと思ったから、私はそんな気持ちを掻き消すように声を張った。
すると、2人はブッチギリで1位になる。
それを見て、クラスメイト達はお祭り騒ぎになった。
「よっしゃー! 1位じゃあー!」
「やっぱり仲が良いな! 息ぴったり!」
「2人とも相性良いんだねぇ」
「お似合いだなぁ!」
みんながワイワイ話しているのが遠くに聞こえる。
同じ空間にいるのに、なんだか別世界にいるような錯覚に陥った。
……むぅ。 確かに2人は仲良いよ。 相性も良いよ。 お似合いだなとも思うよ。
でも、でもなぁ……むぅ、なんだかムムッって気持ちになってきたぞ。
「どうしたの灯? 唇尖らせて。 拗ねたちっちゃな子どもみたい」
「べっにー」
友達が不思議そうな顔を浮かべながら話しかけてくる。
それに対して私は、ぶっきらぼうに返事をしたのだった。
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