第51話 スーパーで妹分とお買い物

 学校からの帰り道。


 俺は母親にお使いを頼まれていたので、近所のスーパーへと向かっていた。


 歩くこと数分。


 俺の視界には懐かしのスーパーが見え、中に入って俺は買い物カゴを右手に持つ。


 店内にはBGMが流れていて、そのBGMを聴くと、幼少期の思い出が蘇った。


「(よく親に連れられて、俺と都と晴の3人でこのスーパーに来たなぁ。 店内を走るなって何回怒られたっけ)」


 俺は近くではしゃいでいる子ども達を見ながら、昔の自分達を思い出す。


 あの頃はスーパーに来ることが楽しみの1つだったっけ。


 もしかしたらお菓子買って貰えるかもしれないってワクワクしたし、友達にバッタリ会えるんじゃないかって期待した。


 でも、いつからだろう?


 スーパーに行かなくなって、行くのがめんどくさい、親と行くのは恥ずかしいって思うようになったのは。


「(昔すぎて覚えてねぇ。 でも、やっぱり昔よく来てたところに来ると、少し気持ちが昂るな)」


 俺は記憶を頼りにお菓子コーナーへと向かう。


 お菓子コーナーは昔と変わらない場所にあり、そのことを知って少し心がホッと温かくなった。


「(うわっ! このお菓子懐かしい! まだあったんだ! 昔はカード欲しくて、よく母さんに買ってっておねだりしたっけ。 あっ、これは都と晴がハマってたお菓子だ)」


 俺は左手でお菓子の箱を持つ。


 箱の感触は変わっていないけど、昔はこんなに箱って小さかったっけ?


 箱が小さくなった?


 それとも、俺の手が大きくなったから、小さく感じるのか??


「あれ? いずみん? こんなとこで会うなんて珍しいね」


「ん? おおっ晴か」


 俺は箱をグルグル動かしながら確認していると、制服姿の晴に声をかけられた。


 右手に持っているカゴの中を見てみると、ジャガイモや玉ねぎ、にんじんやお肉が入っている。


 大槻家の晩御飯はカレーかな?


「いずみんもおつかい?」


「そうだよ。 それにしても、このスーパー久しぶりに来たけど、あんまり変わってないな」


「確かにそうかも。 私ちょくちょくこのスーパーに来るけど、大きく変わったな〜って感じること少ないよ。 変わったのはセルフレジが増えたぐらいかな?」


「いや、それ結構な変化じゃない?」


 俺たちはお菓子コーナーを離れて、一緒に買い物をする。


 それにしても、なんだか不思議な感じ。


 俺の記憶にあるスーパーでの晴は、大人の腰ぐらいまでの高さで、服装は私服だった。


 でも、隣にいる晴は少し目線を下げればそばにいるし、制服姿だ。


 その姿と、記憶の姿にギャップを感じてしまった。


「ん? どうしたの?」


「いや、晴大きくなったなって」


「えっ、何急に。 いずみん、おじさんくさい」


「誰がおじさんだ。 俺はまだピッチピチの高校2年生だぞ」


「今時ピッチピチなんて言わないよ!」


 晴に軽く腰を叩かれながら、俺たちはレジへと向かった。


 そして、買い物袋に食材とかをつめて、スーパーを出る。


 晴の方を見ると、両手で袋を持っていて、少し歩きにくそうにしていた。


「片方持とうか?」


「えっ。 でも、うちの物だし……」


「そんなの気にしなくていいよ。 家だってそんなに変わらないし、片方持つよ」


「ん……なら、お願い」


 俺は袋の片方を持つ。


 1つの袋を2人で持つのは、なんだか新婚さんみたいだなって、柄にもなく思ってしまった。


「うちの晩御飯はカレーなんだ。 いずみん家は?」


「うちはーーーーーー」


 俺たちはゆっくりとした足取りで、家へと向かう。


 夕陽に照らされてできた影を見ると、なんだかセンチメンタルな気持ちになってしまったのだった。

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