第45話 ✳︎お姉ちゃんの馬鹿!
「んじゃあ、俺は帰るよ。 今日は楽しかった。 また遊ぼうね」
「私も楽しかったよ! また遊ぼうね!」
「私も楽しかったぞぉ〜〜!! またね〜〜泉くぅん〜〜」
「お姉ちゃんは黙ってて!!」
「えぇ〜〜妹が冷たーい!!」
「あははっ……それじゃあ、灯、陽さん、またお会いしましょう」
そう言って、泉は私達の前から消える。
私達は泉が見えなくなるまで見送ってから、家の中へと入った。
「ただいま〜」
「たらいま〜」
「お帰りー! ってあら。 なんで陽が灯といるの??」
エプロンで手を拭きながらお母さんがトコトコと歩いてくる。
私達2人の組み合わせを見て、不思議そうな表情を浮かべていた。
「公園で泉と花火してたら、酔っ払ったお姉ちゃんに絡まれたの」
「あらそうなの……。 灯、大丈夫だった? 泉君との時間とか邪魔されなかった??」
「あー……それはねーーーー」
私はお母さんにどういう状況でお姉ちゃんに会ったのかを話す。
最初はウンウン頷きながら聞いてくれていたお母さんだったんだけど、途中からは無表情になって、ただただお姉ちゃんを冷めた目でジッと見つめていた。
お姉ちゃんは酔っ払って私をバジバシと軽く叩いているので、お母さんの様子には気づいていない。
「とりあえず、灯お疲れ様。 ありがとね。 今度泉君にお礼言っといてくれる??」
「う、うん……分かった」
な、なんだこのプレッシャーは……!!
直接私に来ている訳じゃないのに、膝がガクガクと笑ってちゃいそうだ。
ってか、このプレッシャーをお姉ちゃんは感じていないの!?
寧ろ、感じてるけど気にしていないだけなの!?
お酒ってそこまで人を変えてしまうものなの??
「灯は化粧とか落としてきなさい。 浴衣は脱いだらお母さんにちょうだいね」
「わ、分かった」
「陽は私が預かるわ。 かなり酔っ払っているみたいだし、とりあえずリビングでお水を飲ませる。 ほら、陽を私に預けて」
「う、うん!!」
私は首に回されているお姉ちゃんの腕を外し、お母さんの首にお姉ちゃんの腕を乗せる。
そのおかげで随分身体が楽になった。
「お風呂はもう沸いてるから、いつでも入っていいからね」
「分かった。 ありがとう」
私は自室へ向かおうとする。
全く……良い感じだったのに、お姉ちゃんのせいで台無しだよ。
お姉ちゃんの馬鹿っ!
私は心の中でグチグチとお姉ちゃんに文句を言う。
そんな私の耳に、お母さんの小言が聞こえてきたのだった。
「陽。 今は酔っ払ってるから介抱してあげるけど、朝になったらどうなるか分かってるんでしょうね……………??」
「うぇ? なになになに??」
「ふふふふふっ……朝が楽しみね」
バタンッと扉の音を立てて、お母さん達はリビングへと消えていく。
私はこれから起こるであろう悲劇を想像し、お姉ちゃんに向かってそっと手を合わせたのだった。
「ふぅ……」
私は自室に入ってへたり込む。
あの感じは以前にもあった。
ライブデートをした日と同じ感じ。
きっと、泉はまた私に告白をしてくれようとしたのだろう。
でも、前と同じで今回も失敗に終わってしまった。
「気持ちは伝わってるからね、泉……」
私ははぁ〜とため息を吐く。
上手くいかないなぁ。 いっそ私から告白しようかな??
……できたら、こんなことになっていないか。
私は付き合いたい、でも、告白は泉からしてほしいという、めんどくさい乙女心に嫌気が差してしまった。
「はぁ……今日はさっさとお風呂に入って寝ちゃお」
私は浴衣を脱いでお風呂に入った後、泉から来ていた連絡に返信をして、眠りに入った。
そして次の日。
私はお姉ちゃんの絶叫で目がぱっちりと覚めたのだった。
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