第25話 女友達の家に行こう! ②

「……はぁ!?!?」


「……へ?」


「ええええええええええええええええええええええ!?!?」


 大河さんの言葉を聞いて片桐さんは思わず立ち上がり、灯は大声を出してしまう。 俺は予想外の言葉に思わず口が開けっぱなしになってしまった。


「はぁ!? どういうこと!? 勉強見てくれは分かるけど、なんでうちの恋人になるって話が出てくるわけ!?」


 片桐さんは2人に捲し立てる。 その様子を見て大河さんと理沙さんは少し笑っていた。


「いや、恋人になってくれたら奈々の成績上がるかなーって思ったりしてなぁ」


「だからってそれはマジないって! そういうのは本人達の気持ちが大事じゃん!」


「そこまで怒らないでよ〜。 なってくれたらいいなぁ……ぐらいの淡い期待だったんだから」


「言われた方はビックリするに決まってんじゃん!! そういうこと淡い期待で言うのはやめてよ!」


「すまんすまん……で、泉くん。 実際のところはどう?」


「とぉぉぉさぁぁぁんん???」


 大河さんの視線が俺に向く。 俺は大河さんの顔を見た後、片桐さんの方を見た。


 片桐さんは可愛い。 これは俺の感想だけじゃなくて、クラスメイトの男子からも思われていることだ。


 白いスラっとした脚に、短めのスカートは可愛くてオシャレ。


 フレンドリーな性格でボディタッチも多めで、男子をドキドキさせる小悪魔系。


 ニカッっと白い歯を見せながら笑う姿は爽やかで、見ていて嬉しい気持ちになる素敵な笑顔は片桐さんの武器だ。


 実際にボディタッチをされて、片桐さんの笑顔を見て惚れたと言う人は少なくない。


 そんな片桐さんの親御さんから恋人にならないか?と言われるのは、凄いことだ。


 正直、灯と出会わずに片桐さんと仲良くなっていたら、片桐さんに惚れていた可能性はかなり高い。


 でも、でも! 今俺が好きなのは灯だ。


 …………どうすればこの場をギクシャクせずに終わらせることができる!? 俺はなんて答えればいいんだ!?


 俺は混乱している頭で、今答えるべき1番良い返事を考え始める。


 すると、さっきまで影が薄くなっていた灯が慌てながら喋り始めた。


「そ、そういうのはななちんも言ってたとおり、本人達の気持ちが大事だと思います!」


「灯ちゃん……」


「それに、泉には可愛い妹分がいるんです!」


「……灯ちゃん?」


 少し流れが変わり、大河さんと理沙さん、片桐さんが困惑した表情を浮かべ始める。 もちろん俺も困惑していた。


 灯なにを言おうとしているんだ??


「え、えっと……えっと……とにかく、泉ってモテるんです!」


「そうなのかい泉くん?」


「そ、そうなんですかね……??」


 俺、告白されたことないしお付き合いしたこともないぞ。


「と、とにかく泉と付き合うなら本人達の気持ちが大事だし、泉には可愛い妹分がいるんです!! 泉と付き合うのはそう簡単じゃありませんよ!!」


「お、おう……」


「あ、あらあら……」


「う、うん……」


 なんともいえない空気が流れる。 流れは変わったけど、なんだか場がギクシャクし始めたぞ。


「あ、あとあれですよあれ!」


「あれってなんだい?」


「おれはあれであれがあれですよ!!」


「…………??」


 理沙さんが頭に?マークを浮かべる。 それは俺たちも一緒だった。


 てか、灯すごくテンパってるな? 目がグルグルになっていて、なんとかしようという気持ちが前面に出ている。


 多分、本人も何言ってるのか分からなくなってるな。


 でも、上手く言葉にはできないけど、伝えたいなにかがあるのはよく分かった。


「あの、すみません」


 俺はみんなに話し始める。 最初は俺もテンパっていたけど、灯の様子を見ていたら、少し冷静になることができた。


 焦っている時に、自分以上に焦っている人を見ると冷静になるって聞いたことがあったけど、それ本当なんだな。


「大河さんの気持ちはとても嬉しいです。 俺でよかったら時々片桐さんの勉強を見させていただきます」


「本当かい!?」


「本当です。 俺も人に教えることで復習できるので」


「ならよかったわ〜」


「それで、恋人の件なんですけど……」


 俺は一息吸ってから話し始めようとする。


 すると、大河さんが苦笑いを浮かべながら俺より早く話し始めた。


「いやーみんなの言う通りだ。 確かに本人たちの気持ちが1番大事だよな。 軽い気持ちで提案してしまって申し訳なかった」


 そう言って大河さんはペコッと頭を下げる。


 それに続いて理沙さんも頭を下げたのだった。


「いやいや頭をあげてくださいよ2人とも!」


「そうですよ! 私もよく分からないこと言って場を掻き乱しちゃったし……私こそごめんない!」


「2人とも今後こういうこと言うの無しにしてよね……うち、久しぶりに嫌な汗かいちゃったよ」


「本当に申し訳なかった……今からは普通にお話をしよう」


「学校での奈々ってどんな感じなの?」


「はぁ!? それはそれでちょっと恥ずかしくて嫌なんですけど!」


「普段のななちんはですねーーーーー」


「ちょっとあかりんやめてよ!」


「片桐さん凄いんですよ。 例えばーーーーーーー」


「2人ともやーーめーーろーー!!」


 片桐さんの絶叫が部屋に響き渡る。


 顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうにしている片桐さんを見て、俺たちは思わず笑みが出てしまったのだった。

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