第18話 ハーレム

 家に帰ってリビングに入ると、そこには教科書を広げて勉強をしている都と晴がいた。


 都は自分の腕を枕にしながら文字を書いていて、晴はシャーペンでおでこをツンツンと突いている。


 見るからに集中力が切れていた。


 しかし、俺たちの姿を認識すると2人ともシャキッと背筋が伸びる。


 特に晴は顕著に姿勢を正していた。


「あれ? みやちんの横にいる娘誰?」


「わ、私は大槻 晴って言います! 都の親友で、いずみんの妹分です!」


「妹分!? まじで!?」


 片桐さんが口を開けながらビックリした表情で俺のことを見る。


「まぁ、そんなところだよ」


「はぇ〜……こんな可愛い娘が妹分……。 高山、やるね」


「なにがだよ」


 片桐さんがニヤニヤ笑って口元に手を置きながら、俺の脇を肘でツンツン突く。


 くすぐったいからやめてくれ。


「それでどうして灯さんと奈々さんが家に? またライブ鑑賞会でもするの?」


「こっちもお前らと同じでテストが近いんだよ。 だから、勉強する為に家に来たんだ」


「あーどこもこの時期はテストが近いか」


「都ちゃん達もテスト勉強してたんだね」


「まぁ、あんまり進んではいないんですけどね」


 都が肩をすくめる。 


「いずみん、勉強教えてよー!」


 晴が俺の近くに来て、上目遣いで俺の制服の裾を掴む。 瞳はウルウル潤んでいた。


「今日は無理だな。 片桐さんと灯に勉強教えないといけないから」


「そんなーーー!!」


「まぁ、しょうがないよ晴……ん? 『灯』?」


 都が俺の言った言葉に違和感を覚えたのか、俺の方を向く。


 とりあえず、俺は都の顔を見ながら首を横に振った。


 すると、今はそれに触れてほしくないことに気づいたのか、都は気づいていないフリをしてくれた。


 できた妹だよお前は。


「あの……泉がいいなら、都ちゃん達も一緒に勉強しようよ。 勉強するならみんなでやった方が楽しいよきっと」


「良いこと言いますね灯さん! ね、ね! 灯さんもそう言ってるんだから、みんなで勉強しようよ!!」


「うちはどっちでもいいよー」


「んー……なら、みんなで勉強するかぁ」


「やったーーー!!」


「本当にいいんですか? 灯さん、奈々さん」


「私達はお邪魔させてもらってる立場だしね」


「なんだか面白そうだし全然いいよー!」


 ということで、俺達はリビングにカバンを置いて、教科書などを取り出して机に並べる。


 長方形の机の縦長の辺りに俺が座り、横には中学生組、高校生組に別れて座った。


 こうすれば移動をあまりせずにみんなに教えることができるな。


「じゃあ、テスト勉強始めていこうか。 分からなかったり、気になるところがあったら俺に聞いてな」


「「「「はーい」」」」


 勉強会が始まる。 よく考えれば、俺ハーレム状態だな……。


 ま、あんま気にせず勉強するか。


 俺達はノートにシャーペンを走らせて、黙々と勉強を始めたのだった。

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