第17話 勉強会

 みんなにとってテストとはなんだろうか?


 普段勉強していることを発揮できる、絶好の場?


 お小遣いが減らされるかもしれないという恐怖と闘いながら挑む戦場?


 学校が早く終わる嬉しい日?


 十人十色の答えが返ってくるだろう。


 ちなみに俺にとってテストとは、普段勉強していることを発揮できる絶好の場だ。


 しかし、俺の隣にいる灯と片桐さんにとっては、どうやら嬉しくないもののようだ。


「いや、やべー! まじやべー!!」


「あばばばば。 数学嫌だ赤点嫌だ補修嫌だぁ!!」


 片桐さんは灯の机に座りながら能天気に笑う。


 それとは対照的に灯は頭を抱え込み、まるで呪いをかけるかのごとく、黒いオーラを出しながらぶつぶつ呟いていた。


「ふ、2人ともそんなにやばいの……?」


「やばいよー! 赤点毎回絶対1個はあるもん!」


「そんなななちんと私は同レベルだからその、あの……察してください」


「あ、はい」


 灯が勉強苦手なのは席替えした時になんとなく分かっていたことだけど、片桐さんも苦手なのか……。


「今回はどこで勉強する?? カラオケ??」


「カラオケだと歌って結局勉強できないからなしで。 学校の図書室はどう?」


「えぇーあそこ静かすぎて逆に落ち着かないよー!」


 灯と片桐さんはどこで勉強をするか話し合う。


 ふむ……ここは俺が先生役を買って出るのはどうだろうか?


 実を言うと俺はテストで毎回TOP10に入るぐらいには優秀だ。


 都や晴に勉強を教える機会が多く、教え方が上手いと都や晴には太鼓判を押されている。


 俺は自分の勉強の振り返りができるし、灯と一緒にいられる時間を確保することができる。


 灯と片桐さんは俺と勉強することで成績があがり、赤点から逃れることができるかもしれない。


 うん……これは両方にとってメリットがあることだ。


 ここは誘わない手はないな。


「もしよかったらなんだけど——————————————」


「泉お願い! 私達に勉強教えて下さい!!」


 俺が誘う前に、灯が俺の方を涙目で見ながら言う。


 まさかの灯からのお誘い。 俺はビックリして目が点になったけど、すぐさま切り替えて返事をした。


「俺でよければ協力するよ!!」


「高山って頭いいん?」


「泉って毎回テストでTOP10に入るぐらい頭いいんだよ?」


「それまじ?」


 片桐さんは目を見開き、咥えていたキャンディを落としそうになる。


 いや、どんだけ驚いてんだよ。 そんなに俺勉強できないように見える?


 ってか、灯。 俺が毎回TOP10に入ってること知ってたんだ……。 嬉しいなぁ。


「じゃあ、高山に教えてもらうってことで! よろしくお願いしまーす!」


「おう」


「で、どこで勉強する?」


「私の家は今日無理だよ。 ななちんの家は?」


「うちも今日は無理だー」


「なら、俺の家にする?」


「いいの?」


「別に問題ないよ」


 むしろ俺の家に来て。 好きな人が来てくれるだけでやる気かなり上がるから。


「なら、放課後高山の家で勉強会すっかー! よろしくなー!」


「はいよー」


「出来が悪い生徒かもしれないけど、私、頑張るから!!」


「期待してる」


 俺達は放課後の約束をしてから授業を受ける。


 そして、放課後になって3人で俺の家へと向かったのだった。


 しかし、俺の家に着くとまさかの事態に陥った。


 それは——————————————


「お兄ちゃんおかえり〜! あ、灯さん、奈々さんご無沙汰してます!」


「いずみんお帰りー!……って、なんでここに灯さんがいるの!? しかも、もう1人女の人がいる!! ギャル系で可愛い系の女の人がもう1人いる!! どういうことなのいずみん!!!」


 ——————————————都と晴が家にいたのである。

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