第13話 ライブデート①
『係員の指示に従ってお進みくださーい!』
「お、列が進み始めたね」
「うわっ。 ドキドキする〜!」
今日はライブデート当日。 空はカラッとした気持ちの良い天気で、まさにライブ日和だった。
「物販の列も凄かったけど、この会場に入るまでの列も長いね」
「でも、このライブ会場のキャパがMAX一万人までだから、更にデカイライブ会場だと、これ以上の列になるんだよ?」
「うへぇ……考えられないねぇ」
物販で買った帽子を被っている永吉さんは、首にかけていたタオルで汗を拭う。
今日はそこまで暑くならない予報だけど、この人数が1つの場所に集まるんだ。 熱中症とかに気をつけないとな。
「塩分確保するために塩飴舐める?」
「舐める舐める! いや〜高山君がいてくれて本当に助かったよ! 私1人だったら事前準備とかが絶対足りなくて、困るところだったよ」
永吉さんはあははっと乾いた笑みを浮かべる。
今日のライブの為に俺はできる限りの準備と、助言を永吉さんにした。
汗をかくかもしれないから着替えは持ってくること、脱水対策に冷たい飲み物と凍った飲み物を持ってくること、当日の公共交通機関の混み具合、それに対する対処方法etc……。
とりあえず、必要最低限で鬱陶しく感じない程度には、永吉さんに伝えることができた筈だ。
「それにしても暑いねぇ」
永吉さんが胸元をパタパタさせる。
その時、ピンク色の紐がチラッと見えたような気がした。
あれってあれだよな……。 ごくりっ……!
「でも、もっと人気になったらこの歌手もこのライブ会場でしなくなるのかな?」
「どうなんだろうね? でも、人気になってもここでライブしてほしいけどなぁ」
「私達にとっては、ここでライブしてもらえる方が助かるもんね」
遠くでライブをするなら、時間とお金を今以上に使うことになる。
高校生にとってそれはちょっと痛手だ。
「まぁ、未来のこと気にしててもしょうがないね! 今を楽しまなきゃ!」
「そうだな」
俺たちはそんなことを話しながら前へ前へと少しずつ進んでいく。 あと少しでライブ会場に入れそうだ。
「〜〜♪♪ 楽しみだなぁ」
永吉さんは鼻歌を歌って横に体を揺らしながら、コンサートのパンフレットを見る。
その可愛らしい姿に、周りにいた男性客は虜になっていた。
そうだ。 永吉さん学校では『残念美少女』とか、『電波乙女』とか言われてて恋愛対象としてはあまり見られていないけど、外に出ると内面の部分は出にくいから、みんな永吉さんの素敵な外見に虜になっちゃうんだ!!
俺は永吉さんの顔を見る。
今か今かと待ち遠しそうにしている表情はとても可愛かった。
……改めて思うけど、やっぱり永吉さんって魅力的な女の子だよな。 内面が残念とか言われるけど、それを上回る可愛さがある。
「あ! 空いてきた空いてきた! これで席に座れる! 行こうよ高山君!」
永吉さんが興奮気味に言いながら、俺の手を握る。
温かくて柔らかい手だった。
「そんなに急がなくて大丈夫だよ。 席は逃げないから」
「それもそっか!」
永吉さんの楽しそうな様子を見て、俺は今日誘って良かったと心の底から思った。
そして、席について俺達はライブに参加する。
圧倒的なパフォーマンス、歌声。 会場全体の一体感。
それら全てを俺達は感じ、最高な時間を過ごしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます