第12話 妹からのアドバイス
「都。 いつもお疲れ様。 これ、よかったら食べてくれよ」
「……は? え、どうしたの急に? キモいんだけど……」
永吉さんをライブに誘った次の日、俺は甘いお菓子を買って都に差し出した。
昨日はまさかの財布の中にお金があんまり入ってなくて、買えなかったんだよな。
「どうしたのお兄ちゃん? なにか私に後ろめたい気持ちでもあるの?」
アイスを食べている都が、リビングのソファから訝し気に俺のことを見る。
「いや、なにもないよ」
「うそだ。 絶対何かあるでしょ! ほら、言ってみなよ! 内容によっては怒らないであげるから」
「怒る可能性はあるんだ……」
「当たり前でしょ。 何言っての?」
都がジト目で呆れながら俺のことを見る。
俺は冷蔵庫からアイスを取り出し、都の隣に座って食べながら話をした。
「俺が一緒にライブ行こうって前誘ったじゃん? あれ、無しにしてほしいんだよね」
「なんだそんなことか。 むしろ、予定が空いてあたしは助かるんだけど」
「いや、でも一応俺から誘ったのに来るなっていうのは人としてどうかと思うじゃん?」
「確かにそうかもね……まぁ、了解だよ」
都はアイスの棒を袋に包み、俺が買ってきた甘いお菓子の袋を開けて食べ始めた。
こいつ……こんなに甘い物食ってたら太るぞ……。
怒られるのが怖いから言わないけどさ。
「あたしの代わりに誰か行くの?」
「友達と行く予定」
「ふーん……それって前家に来た灯さんか奈々さん?」
「…………」
「図星なんだ。ん〜……一緒に行くのは灯さんかな?」
「どうして分かるんだよお前! 無茶苦茶怖いんだけど!」
「女の勘……かな?」
女の勘って中学2年生が既に装備しているもんなの? こっわー……。
「ぶっちゃっけさ、お兄ちゃん灯さんか奈々さんのこと好きだよね? 私の勘的には灯さんだと思うんだけど」
「なんなのお前まじで。 怖すぎるんだけど」
なんでこいつここまで正確に当たらんの?? エスパーかなにか?
「ん〜……対応がなんか灯さんの時だけ、少し優しいんだよね。 お兄ちゃん誰にでも優しいんだけど、灯さんに対してはちょっと違う。 ま、家族ぐらいしかその違いには気づかないと思うよ」
「じゃあ、母さんとか父さんが俺と永吉さんが関わっているのを見ると、俺の気持ちがバレる可能性あるってこと?」
「全然あると思うよ」
よし。 永吉さんと恋人関係になるまでは、絶対うちの母さんと父さんに会わせないようにしよう。
あの2人に知られるとなにされるか分かったもんじゃない。
「それにしてもお兄ちゃんに好きな人か……ライブデートで告白すんの??」
「一応そのつもりではいる」
仲良くなることを第一目標に掲げていたけど、いつでも告白はしたいと思っていた。
でも、今までは告白に適したシュチュエーションが作れずにいたから、告白できなかった。
今回はライブデートという最高のデート環境が決まっていて、告白に適したシュチュエーションは作りやすいと思う。
だから、俺は今回のライブデートで告白するつもりでいた。
「そっか。 まぁ、お兄ちゃんがそう決めているならあたしから言うことはなにもないね」
「まぁ、そうだろうな」
「でも、あの子はお兄ちゃんに彼女ができたら黙っていないと思うよ。 あの子、私以上にお兄ちゃんに懐いてるから。 妹のあたしが言うのもなんだけど、あの子の方があたしよりも妹っぽいもん」
俺の頭に浮かぶのは妹の親友で、小さい頃から俺に懐いてくれている女の子。
確かにあいつは昔から嫉妬深いところがある。
俺に彼女ができたら『まず私に報告して』とか、『私がその子を見極める』とか、昔から言ってたからなぁ。
「とりあえず、お兄ちゃんファイト!」
「……ああ」
「あ、あと……」
「ん?」
都が少し頬を赤らめながらモジモジする。
なんだなんだ?
「もし、灯さんと恋人関係になったとしても、あたしに構う時間はちゃんととってよね……とってくれないと、あたし寂しくて泣いちゃうから」
「……ったく。 構わないわけねーだろ」
「わっぷ」
俺が少し強引に都の頭を撫でると、都は口では髪型が崩れると言う。
しかし、表情は嬉しそうだ。
ったく……自分であいつの方が妹っぽいとか言ってたけど、血が繋がった可愛い可愛い妹はお前だけだっつーの。
ま、恥ずかしすぎるから言わないんだけどさ。
「このこのこの!!」
「ぎゃー!! 本当に髪型が崩れるからやーめーろ!」
「あっはっは! ういやつよのぅー」
俺は都が本気で怒るまで、綺麗な髪をずっと撫でたのだった。
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