第11話 ✳︎私から見た彼

「う〜ん。 風が気持ちいいね〜あかりん」


「そうですのぉ」


 ある日の昼下がり。 私たちは屋上のベンチで食事をしていた。


 周りを見ると私たちと同じように友達と仲良く昼食を食べたり、カップルが仲睦まじく過ごしている。


「そういえばさ、高山とライブ行くことになったってさっき言ってたけど、それマジなん?」


 私が微笑ましいなと思いながら周りを見ていると、玉子焼きを口に運びながらななちんが私に聞いてきた。


「マジだよ」


「へぇ〜あかりんが男子と一対一で遊びに行くなんて初めてじゃない?」


「うーん……遊びに入るかは分からないけど、以前高山君とはマロンの散歩を一緒にしたよ」


「えっ! そんなことしたの!?」


 あの時はコタロウ君に会いたい気持ちが強かったし、深く考えずに高山君の誘いにOKしたけど、よく考えればあれってデートともとれるよね。


 ……あ。 高山君に胸揉まれたこと思い出しちゃった。


「?? あかりん顔赤くしてどしたん? 太陽当たって暑い?」


「ううん大丈夫だよ。 問題ないない」


 私は水筒のお茶を口に含む。 氷が水筒の中でカランッと転がり、冷たいお茶が私の喉を潤した。


「それにしても、あかりんうちが思ってる以上に高山と仲良くなってんね」


「私も驚いてるよ」


 高山 泉君。 クラスメイトで身長は180cm近くあるんじゃないかって思うぐらい、背が高い。


 クラスの中では特に目立つ方ではないけど、毎回テストで学年TOP10には入る秀才だ。


 よく友達やカースト上位の人に勉強を教えて欲しいと頼まれている。


 言葉ではめんどくさがっているけど、なんだかんだ手助けしてあげている姿を見ると、面倒見が良いんだと思う。


「いや〜あかりんにも遂に春が到来かな?」


「そんなんじゃないって」


 高山君は仲の良い友達だ。


 それ以上でもそれ以下でもない……はず。


「え〜でも、高山ってあかりんの連絡先知ってて、普通に連絡取り合ってるんでしょ? そんなことしている男子、うちが知っている限りだと高山だけなんだけど」


 それはななちんの言う通りだ。


 普段、私は男の子とは連絡先を交換しない。


 交換するとしたら、学校行事とかでグループで話す必要があり、必要事項などを連絡し合う時ぐらいだ。


 それに、そういう行事とかが終わると連絡を一切取らなくなるから、殆ど私は男の子と連絡を取らない。


「ぶっちゃけさ……高山のこと好きだったりするん?」


「なっ!?」


 ななちんの言葉を聞いて、私は自分の顔が少し赤くなるのを感じた。 少し体がポカポカと暑い。


「た、高山君のことは好意的には見ているけど、恋愛的な好きではないよ!!」


「!!……………ふーん。 そうなんだ。 じゃあ、あかりん的に仲が良い友達ってところなん?」


「そ、そうだよ!!」


 まったく……ななちんは急に何を言ってくるんだ! 暑い暑い。


 私は胸元をパタパタさせて、熱を外に逃した。


 た、確かに高山君は話していて楽しいし、一緒にいて安心感を感じるけど、そういう風には見てないんだからね!


「ならさ、もし高山に好きです〜ってあかりん告白されたら、どうするん?」


「な!? こ、告白なんてされねーし!!」


「例え話だよ例え話ー」


 ま、まったくななちんはなにを言っているんだ!


 高山君が私に告白なんて———————


『永吉さん……好きだ! 愛してる……!!』


 私の頭の中にいる高山君が、告白シミュレーションを勝手に始める。


 場所は綺麗な夜景が見えるタワーの中だ。


『気持ちは嬉しいんだけど、私達まだ仲良くなって日が浅いし……』


『だからなんだってんだ! 俺の永吉さんに対するこの熱い気持ちは消えないし、消えさせない!!』


『高山君……』


『永吉さん……』


 そう言うと、高山君は目を瞑って私に顔を近づけてくる。


 私もそっと目を瞑って高山君に顔を近づけた。


 そして————————


「——————い! お————い! 戻ってこーいあかりん!!」


「————————ハッ!?」


 ななちんの必死な声掛けと、体が揺らされている感覚で私は現実世界へと意識を戻す。


 あ、危なかった……やるな。 妄想の中の高山君。


「あかりん……『爆速妄想少女』っていうあだ名、つけてもいい?」


「いや、ダメだけど!?」


「それが今のあかりんには相応しいと思うんだ……」


「ふ、相応しくな——————い!」


 私は立ち上がって大声を出す。 


 私の声は屋上全体に響いたのだった。

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