第6話 妹
「お兄ちゃん。 そんなにニヤニヤしてどうしたの? 気持ち悪いよ?」
「気持ち悪いとか言うなよお前。 傷つくだろ」
「顔一切こっちに向けない状態で傷つくって言われてもねぇ」
永吉さんの連絡先をゲットした日の夜。 俺は家のリビングでニヤニヤしながら永吉さんと連絡をとっていると、妹の
現在、都は中学2年生。 女の子の中でも身長は低い方で、身体に凹凸はあまりない。
でも、可愛らしい見た目と明るい性格で、けっこう男子からの人気はあると、以前都の親友から聞いた。
「……ちょっと。 なんで私の胸を見るのよ」
「いや、別に」
今は小さいかもしれないけど、きっと多くなるよ。 だって母さん大きいもんな。
「あ——! 今、お兄ちゃん私のこと哀れんだでしょ!」
「そんなことないよ」
「いや、絶対哀れんだ! だって、顔が反対の方に背けられてるもん! 後ろめたい気持ちがあるってことでしょ!」
都はガバッと俺の背中に抱きついて、俺の髪の毛をガシガシ触る。
都のサラサラした黒髪が時々頬に当たり、鬱陶しかった。
「ちょっと都。 髪の毛当たって鬱陶しいんだけど」
「女の子の髪の毛が当たったら男の子は嬉しいんじゃないの?」
いや、全男子が嬉しいわけじゃないから。
それに都の場合は妹だし、全然嬉しくないんだが。
「都は妹だから嬉しくねーよ」
「え、でも妹の前にあたし女の子だけど」
「いや、確かにそうだけど……それとこれとは別じゃん」
妹の髪の毛が当たって喜ぶ兄は高山家にはいません。
「まぁ、あたしもお兄ちゃんに壁ドンされたとしても嬉しくないだろうなぁ」
「だろうな。 ってか、都相手に壁ドンなんてしないから」
「こっちから願い下げだよ」
都は俺から離れて、あっかんべーをする。
あれ? なんだか俺するつもりないのに、拒否されたんだけど?
「じゃあ、あたし自分の部屋戻るから」
「おう」
「後で宿題教えてね」
「え、嫌だけど」
「おねが〜い」
「かわいこぶっても意味ねーよ」
「お願いお願いおねが————い!!」
「あ——もううるっさいな! 分かったよ! 教えてやるからさっさと戻れよお前!」
「やったー! お兄ちゃん大好き♪」
都は上機嫌でリビングから出て行った。 はぁ……あいつと話すと疲れるわ。
「……ん?」
俺が体を前のめりにして溜息をついていると、スマホから連絡を知らせる音が小さく鳴った。
俺はアプリを起動してメッセージを見る。 相手は永吉さんだった。
『じゃーん! うちのマロンちゃんまじでプリティでしょ————————!!』
文章と一緒に送られてきた画像には、永吉さんに抱き抱えられているマロンちゃんが映っていた。
確かにつぶらな瞳がプリティだ。
でも、それ以上に俺は気になることがあった。
「なんて破壊力だ……!!」
薄い部屋着だからいつも以上に永吉さんの体のラインが出ている。 短パンから覗く綺麗な脚も眩しい。
そして、マロンちゃんを抱えていることにより、永吉さんの豊満な胸が形を変え、シャツから谷間を覗かせていた。
普段の制服姿や体操服姿からは決して見ることができない谷間。
それを見ることができたし、俺の為に送った写真でそれを見ることができたことに俺は興奮してしまった。
「ふぉぉお……ふぉぉぉ!!」
俺は今、邪な心と良心の間で揺れ動いている。
きっと永吉さんは純粋にマロンちゃんの写真を送ってくれたのだろう。
なのに、その写真からそこはかとないエロスを感じたことに、俺は罪悪感を覚えてしまった。
「……どうしよう」
男としてはぜひこの写真を永久保存したい。
でも、心温まる写真にエロスを感じ、写真を保存するのは人としてどうなのかと思ってしまった。
「ど、どうすればいいんだぁぁぁぁ!!」
俺の魂の咆哮は高山家に響き渡る。 その直後、リビングに母さんと父さん、都が来てうるさいと文句を言ってきたのだった。
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