第3話 髪型
「おはよう! 高山君!」
「おはよう」
俺が朝学校に着いて席に座り、教科書とかを机の引き出しに入れていると、永吉さんが登校してきた。
いつものロングではなく、今日はポニーテールだ。
今まで髪型を変えている姿は見たことないからとても新鮮だ。
……ポニーテールいいな。
「今日ポニーテールにしてみたんだけどどうかな?」
永吉さんは顔をクルッと回して髪を俺に見せる。
回した時に髪の毛が揺れ、毛先がふわっと揺れた。
「とっても良いと思います」
「なんで敬語なん?」
俺は正直無茶苦茶褒めたかった。
でも、そんなに親しくない男子に熱く語られるのは嫌だろうなって思って、当たり障りのないことしか言えなかった。
くそ!! 俺のボキャブラリーが多ければ! 少なすぎるだろ俺!!
「いや、高山君急にそんな悔しそうな顔してどうしたの……?」
「俺の力の無さを痛感しているんだ……」
「今のやりとりでそんな痛感することある!?」
永吉さんが手を口元に近づけて、体を斜めに向けながら驚く。
そりゃあ永吉さんからしたら意味分からないよな。
「ま、まぁ似合ってるならいいや。 普段ポニーテールにしないから、似合ってるか不安だったんだよね」
永吉さんは毛先を人差し指でクルクル巻きながら言った。
「永吉さんって確かに髪を結んだりしているイメージないから、新鮮だわ」
「やっぱりそういうイメージあるよね。 私だってそうだもん」
なら、なんで今日は髪型をポニーテールにしているんだろう?
「髪結ぶのってめんどくさいし、私って結ぶのあんまり上手じゃないんだよね。 だから、普段は髪を櫛とかで整えるっていう最低限のことしかしないんだけど、今日はどうしてもポニーテールにしたくて……」
「それはどうして?」
「私好きなモデルさんがいるんだけどさ、そのモデルさんのポニーテールがまじでいけてんの! だから、私も真似したくなっちゃって……」
永吉さんは少し照れくさそうに笑う。 その笑顔がとても可愛かった。
「好きな人に憧れる気持ち分かるよ。 俺も好きな俳優さんの服装を真似する時期あったから」
「やっぱりそういうのってあるよね!」
「あるある!」
俺達は席に座って楽しく雑談をする。 この時、永吉さんとの距離がグッと近くなったように感じた。
「永吉さんポニーテール良いって! もっと他にも色々な髪型試してみなよ! 絶対似合うって!」
「そ、そうかなぁ……」
「俺が保証するよ!!」
「なら、ちょっとお試ししてみようかな……」
「やったー! 楽しみぃ!!」
「ちょっと。 なんで高山君が楽しみにしてるのよ!」
永吉さんは俺の反応を見て照れているが、どこか嬉しそうだ。
やっぱり異性から好意的に見られるってのは嬉しいことなんだな。
「明日からまたちょっと頑張るから、感想教えてね。 異性の意見って大事だと思うから」
「俺に任せてよ!」
俺がはっきりとそう伝えると、永吉さんはどこか満足げに頷いた。
それから数日間、永吉さんはポニーテール以外にも色々な髪型に挑戦をしたのだった。
………………全部可愛かったな。
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