#2 突然の石化

俺の目の前に、ギガンテス二体。

現実世界に居ないはずのソイツらは俺に襲いかかろうとする。


『ォオオオオオオ――ッ!』


エタ―ナルソ―ドⅡを握った俺は、

最初に襲いかかって来た方の巨人の攻撃を避け、カウンタ―を決めるように剣で斬った――ッ!


――スパァァン


『オオオォォ―――――!』


一体のギガンテスは悲鳴を上げる。

その間にもう一体のギガンテスに攻撃を喰らわす。

巨人たちは一瞬怯むも、直ぐに俺に襲いかかる。


俺は華麗なバックステップで一旦距離を離し、ギリギリで攻撃を回避する。


レベル50の俺がレベル90のギガンテス二体相手同時はキツイ物がある……が。

アマルテアらしき存在から貰ったエタ―ナルソ―ドⅡは中々の威力を発揮していた。


それにレベルや武器の強さだけが戦闘の全てではないはずだ……。

立ち回りを活かせば――、


――――なんとか倒せるハズだ……ッ!


「はぁああああああッ!」


巨人二体の攻撃をかわしながら――流れるように剣で斬り刻んで行く……!

その直後、巨人の反撃……!


「ぐぅっ……!」


俺は剣を横に構え、ギガンテスのパンチを防ぐ!

しかし、防いだのにもかからわず俺のHPはごっそりと減る。

もう一撃喰らったら耐えられない……!


くそっ、このままじゃ俺が死ぬ……!

考えろ……考えるんだ来栖隼斗っ……!


俺は何度も逆境を乗り越えてきたはずだ……!

こんな雑魚モンスタ―二体相手くらいなんとか出来るはずだろッ!


……そうか、UIが表示されたのなら……ッ!


「スキルも使えるはずだよなぁッ! 《ファストム―ブ》!」


残りHPを1に減らす代わりに、移動速度を三秒間だけ超高速化させる究極のスキル!

リスキ―なスキルだが、どのみち一撃で死ぬのなら同じだッ……!


俺の姿は残像を残しながら高速で移動し、そして――!


――――斬るッ!!


『ォオオォオオオオオ!!』


俺から一体のギガンテスの脚を叩き斬った。

その直後、もう一体のギガンテスも同じように斬ったッ!


今の俺は速度が乗っているため、攻撃力は通常の何倍にもなる。

レベルが離れていても、このスキルなら対処可能なハズだ……!


しかし、俺の《ファストム―ブ》はここで効果時間が切れる。

三秒はあっという間に過ぎた……。


『オオオオオオォオオオ!』


――ズシン、ズシン


俺を補足したギガンテス二体は叫び声を上げながら、迫りかかる―――!


くそっ! 結構ダメ―ジは削ったのに……!

ここまで……だっていうのか?

何か方法が……何か……!


ギガンテス二体と俺の距離はどんどん縮まっていき、

もう目と鼻の先に奴らはいた。


『ォオオオオオ……!』


――ヒュン


巨人の耳元を何かが掠めた。

俺は音がした方向を振り向く。


『オォ?』


ギガンテスも音がした方向を振り向いた。


そこには……俺から少し離れた位置に“レ―ルガン”を構えた細身の男が突っ立っていた。


「加賀美……なのか!?」


そんな俺の声は聴こえていないのか、細身の男は立て続けにレ―ルガンのトリガ―を引く――ッ!


――ズガ―ン!


『ォオオオオオオオ!!』


第二射は見事に一体のギガンテスに命中し、消滅した。

モンスタ―が消滅……。


ワールドオブユートピアでは、モンスタ―が消滅するという現象は通常では起きない

消滅する事象が発生するのは、システムAI――アマルテアが直接消去するか、あるいは……。


ウイルスの集合体――AIフォルトが創ったモンスタ―だけだ……。


なぜだろうか? とても嫌な予感がした。


「来栖ッ! なにボサッとしているッ!! 君も戦ってくれ!!」


さっきのレ―ルガンを持っていた男の方向から聞き覚えのある声。


「加賀美? やっぱりお前なのか!?」

「そうだよッ! 早く支援してくれッ!」

「あ、ああ!」


ギガンテスは加賀美を脅威と感じたのか、彼の方向に向かっていく。


「後ろがガラ空きだぜ……ッ! 《ブレイブ・アタック》!」


俺の後ろを向いたギガンテスにスキルを発動させ、トドメをさした――!


◇◆◇◆◇


「来栖! 大丈夫か!?」

「大丈夫……っていうかなんでお前がいるんだよ!?」

「何故って…現実世界に戻ったからだろう?」

「それは、“ここが本当に現実世界だったら”の話だろ!?」


俺は混乱していた。何故現実世界の筈なのにUI表示にモンスターにアマルテアらしき声、そして……。


違和感。


加賀美は成る程と少し考えた後、


「正直言って僕もよくわからない。ここがどこなのか……目覚めたら僕の家にいたんだ」

「………」


俺と加賀美は今の状況が飲み込めないまま……。

次の事件が発生した。


だって……空から女の子が降ってきたのだから……!?

俺から二メ―トル程離れた位置から一人の少女が、

ゆっくりと空から落下していく。


「危ない!?」


このままだと地面に落下してしまう……そんな事を考えるより先に足が動いていた。


――ガシッ


お姫様抱っこをする形で両腕で抱え、

なんとか少女の救出に成功する。


「ハ、ハヤト……」


少女は見知った顔だった。勿忘草わすれなぐさの髪飾りをしている。


「フェ―べ!? どうしてこんなところに?」


フェ―べは顔を真っ赤にして泣いていた。


「ハヤト……すま、ない……」


――――石化


その瞬間、漆黒の少女は見る見るうちに石化していった……。

彼女の体は、動かない。


「フェ―べ……?」


俺はこのよく分からない現実世界で……何かとんでもない事が起きようとしている……そう気づき始めた――――。


◇◆◇◆


2040/6/13 AM 7:03


隼斗が電車に乗る前、隼斗がギガンテスと戦っていた街で、

フェ―べとコ―デリアは街をぶらぶらと歩いていた――。


「フ―ちゃん、ここどこですの? 人は多いわ、見たことのない服を着ているわ、空気は私達がいた場所と違うわ――」


リア――コ―デリアはさっきから質問の連続だった。


「……私にもさっぱりだ。 ハヤト達ともはぐれてしまった」

「そうですわね。皆さんも元気でいるといいですけれど……?」


街をゆくあてもなく探索していると、コ―デリアはひとつの建物が気になったようだ。


その小さな建物に人が近づいた瞬間――扉が自動で開いたからだ。

そしてそのまま建物の中に入ると、今度は自動で扉が閉まった。


「いま、扉が勝手に開きませんでしたの?」


リアはその不可思議な現象に目を輝かせていた。


「新種の魔法の類だろう。リア、あれは間違いなく罠だ――」

「――わたくし達もいってみましょうよ! 楽しそうですわ―!」

「ば、馬鹿か!? 罠だったらどうすr――」


――ウイ―ン


リアは聞く耳も立てずに建物の中に入っていった。

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