第9話 知らなかった想い

 私は見た。でも、分からない。


 〜 校舎裏 〜


「ねぇ、田中。私と……そのさ……付き合ってくれない?」

「たくしょうがないな〜」

「え?いいの?」

「ああ、いいぞ」

「やった!ありがとう!」


 〜 現在 〜


(あれが……恋愛……。告白、してたよね。はっきり聞こえたし……)


 悩んでいた。真志鳴ましなさんが田中君のことが好きであることを私に打ち明けてくれたのはいいのだけれど。なぜ私に言ったのだろう。


 恋愛はいいものだと入院していた時に、両親が言っていた。いつか、大切な人が見つかるといいなとも。しかし、入院していた私は当然のこと、恋を知らずに生きてきた。田中君とはチャットで知り合い、今ではチャット内以上に友達として接してくれている。


(そういえば……、なんであんなに……必死になって、リハビリ頑張ったんだっけ)


「想華さん」


(なんか、そう……特別なことが、あったような……。リハビリに集中し過ぎて、忘れちゃったのかな……)


「想華さん!」

「わ! はい!」

「大丈夫?熱でもあるんじゃ、

           ちょっと失礼」

「え、あの……」


 田中君の声に驚いた私は、変な声を出しながら返事をする。すると、田中君がいきなり額を私の額に重ね、熱をはかる。


「あ……あ……」


(なんで、ドキドキしてるんだろ。私……熱い。なんで……。そういえば、前も田中君とチャットしている時にもこんなことが……)


「そういえば……こんな事、前にもあったな。確か、チャットで想華おもかさんと話してる時。あの時は確か集団チャットで皆と話してる時に、1人想華さんに悪口言っていた人がいて。その時急に想華さん落ちたでしょ?」

「そういえば……」


(そうだ……あの時だ……)


 その時、心が傷ついて……でも……。


『大丈夫?

   

   ユーザ名:まりもりもり森』

『大丈夫!心配しないで

       

   ユーザ名:想いの届け者』


(私の嘘つき。

 貴方も貴方よ!気づいてよ!察してよ!)


 これでいい。だって彼は悪くないもの……。

 八つ当たりするがそう思い、チャットから目を背けようとする。


『本当に?

    

    ユーザ名:まりもりもり森』


(なんで?大丈夫って言ったのに……どうして?チャットだから、こういうことも起きることを知っているでしよ?)


『ごめんね……。


   ユーザ名:まりもりもり森』


(なんで謝るの?……貴方は悪くないのに)


 私が思ったことを、コメントで送る。

 すると……。


『だって傷ついてないわけないのに、大丈夫?だなんて……それに、自分も悪口止めれなかったから……。悩まないで、思い詰めないで。話ぐらいなら、聞けるからさ


      ユーザ名:まりもりもり森』



 〜 現在 〜

(そうだ……。私は……この時、初めて……。知らなかった自分の気持ちを知ったんだった……)

















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