第3話 転校生

 登校してから数ヵ月経ち、皆不安から落ち着きはじめ、安定し始めた頃。転校生がやってきた。


「え〜それでは、ほら入って挨拶しなさい」

「はい……。想華遠離おもかえんりです。これからよろしく……お願いします」


 その子は長髪で、前髪が少し目にかかって片目しか見えない。しかし、とても可愛いと思う容姿をしていた。皆もざわつきはじめる。学校がまた始まった当初は「久しぶり!」とか「元気だったか!」と騒がしかったが、今回はもう嬉しかったことが先にあったからかあまり騒がず静かに騒ぐといった感じだった。


「それじゃ……あそこの席へ座りなさい」

「分かりました……」


(マジかよ!)


 つい心の声がざわざわする。それもそのはずだ、こんな可愛い子がに来ると言うんだから。


「よろしくお願いします……」

「こちらこそ……」


 恥ずかしそうに挨拶する想華おもかさんをこう思ってしまう。この子があのチャットの子だったら、どんだけ恵まれた運命的な出会いだろうかと。


 そんな夢を見ている一方、強華きょうかはというと、嫉妬と怒りで自分のハンカチを噛み締めながら、般若のような顔で睨んできていることを俺は気づかないままでいたのだった。




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