気が利くらーめん屋さん

なかの

気が利くらーめん屋さん

「ほんとに勉強になるんですか?」

リナはとなりにいる、先輩に聞いた。


「DXの勉強になるんじゃないかと思っている」

となりにいた先輩はそう答えた。

リナは大学4年生。DXつまり、古い業態に最新IT技術を導入しすることを得意としている、コンサルティング会社にインターンに来ていた。


「ほんとですか?確かにすごい効率が良いという印象なんですけど、テクノロジーの印象はないんですけどね」

リナは聞き返す。

コンサルティング会社にインターンにくるだけあって、最新の経営の話は雑誌などで読んでいる。このラーメン屋さんは効率が良いとたくさんの雑誌に取り上げられている。


「さすがにあの効率はテクノロジーを使ってないとできないと思うよ」

先輩は凄腕のコンサルと言われている。

テクノロジーに詳しくいろいろな会社から相談わ受けている。


「なるほど、楽しみですね!」

先輩が言うからそうかもしれないと思い一緒に向かった。


「すごい、やっぱり混んでる!」

リナはラーメン屋の前でかんたんの声を上げた。

少し早い時間なのにすでに行列ができていた。


「いらっしゃいませ!」

並ぶと同時に店員さんが出迎えてくれた。


「え、すごい!」

先輩はおどろく。


「すぐ来てくれましたね」

リナも先輩の驚きに追随するように言った。


「ご注文は何にしますか?お兄さんには、とんこつらーめん、おねぇさんにはゆず塩ラーメンがおすすめです!」

店員さんがさっそく注文を聞いてくれた。

なかなかそれができるお店は少ない。

何人で来ているかだけ聞かれることも多い。


「それでおねがいします!」

先輩は即決した。


「わぁ、おいしそう、それがいいです!」

私も即決した。ゆず塩ラーメン美味しそう!

インスタ映えもしそうだ!


「では、しばらくお待ち下さい!」

店員さんはさっと戻っていった。


「ほら、これAIだよ」

先輩は言う。


「いや、ただめちゃくちゃ気が利くおねーさんにしかみえないですよ!」

リナは反論した。

そう、とくに難しいことをしているようには見えない。


「ロボットが接客するとかならDXなんだなと思いますけど」

リナは一般的なDXのイメージを連想した。


「ほら、見てみな、あのカメラAIカメラのDX-0R1だよ」

先輩は視線を上に持っていってそういった。


「え、たまたまじゃないですかー?」

リナは率直な感想を言った。


「たまたまじゃないよ、外に人が並んだら、アラームがなって、すぐに注文を聞きに来てくれるんだ」

先輩は言う。

しかし、そういう雰囲気は特にない。


「えー、すごく気が利くおねぇさんなんだとおもいますよ!わたしだったらできますし!」

リナはえっへん!と胸を張りながらアピールした。

そう、テクノロジーがないとできないことのようには思えないのだ。

気が利く店員であればだれでもできるといえる。


「そう、そういう、特別できる人ができることを全員ができるようにするのがDXの真髄なんだ」

先輩は説明する。


「なるほどー!説得力がありそうです!」

リナはなんとなくな相槌をする。


「いまのおすすめもたぶんレコメンドだよ」

先輩は説明する。


「え、ECショップとかにでてくるやつですか?」

リナは聞き返す。

大手ECショップだと、この商品を買った人はこの商品を買っていますとかあなたへのおすすめはこちらですなどと表示されることがあるあれだ。


「そう、顔認識して、年齢と性別を割り出してるんだ」

先輩は説明する。


「え?そうするとどうなるんですか?」

リナは聞き返す。


「リピート率が上がる」

先輩は説明する。

テクノロジーを使った先に求めていることはこのリピート率を上げる。

全体的な売上を上げることだ。

生涯で1度しか来ない人が2度きてくれれば売上は二倍になる。


「あー、そうかも!美味しかったらまた来ちゃうかもですね!」

リナは納得した。


「ということはあれもやっている」

先輩は思考を進めている。


「あれ?」

リナは聞き返す。


「そう、職業推定」

先輩は推察して説明する。


「職業推定??職業を推定してどうするんですか?」

リナは聞き返す。

職業を推定することによるメリットは何があるだろか、と考えながら。


「職業の推定、つまりオフィスワークか机仕事かで、必要な塩分も量も違う」

先輩は説明する。

テクノロジー、特にAI技術の真価により、その人にあったサービスを提供することができるようになっているとはいえ、こんななんの変哲もない店構えのラーメンやさんでできるんだろうか。


「えー、そんなことできるんですか?」

リナは思ったことを口にした。


「そう、それが理由にさっき、大盛り無料ですけどみたいなこと聞いてこなかったでしょ!ほかのラーメン屋さんはだいたい聞くでしょ」

先輩はいま起きたことから推察を続ける。


「えー、たまたまじゃないですか?」

リナは考えすぎじゃないですかーという目をしながら先輩の方を見る。


「たぶん推定して自動で調整するんだ」

先輩はさらに推察する。


「それができるとどうなるんですか?」

リナは聞き返す。


「良い質問だね、それはそもそも仕入れに関わってくる」

先輩は説明する。

そしてそのヒントでリナも理解した。


「無駄のない量で済むってことですか?」

リナは先輩に確認する。


「そのとおり」

先輩はうなずく。


「えー、そんなことできるんですかー?」

リナは聞き返す。

先輩の言っていることが実際にここで起きているとはとうてい思えない。


「では、なかにお入りください!あちらのお席にどうぞ」

店員さんがさっと手でさして二人を誘導する。


「ちょうどぴったり二人がけの席に案内してくれましたね!」

リナは喜ぶ。

混んでいると、四人がけのテーブル席に二人ずつつれていかれることもあるし、カウンターに一人ずつ連れて行かれることもある。


「そう、これもアルゴリズムで計算しているんだ」

先輩は言う。


「えー、たまたまじゃないですか!」

リナは怪しむ。

とくにパソコンらしきものもおいてないからだ。

とにかく気の利く店員さんが工夫しているとしか思えない。


「さらにいうとそもそも客のパターンで席も変えてるんじゃないかな」

先輩は言う。


「えー」

リナは驚く。


「土日と平日では家族連れなのか一人なのか違うわけだからそれも毎日のデータから導きだしてるはずだよ」

先輩は説明を続ける。


「ということは雨の日とかも工夫されてたりするってことですか?」

リナは聞き返す。そういう技術があるという事自体は聞いたことがあった。


「そのとおり!今日は天気がいいからそういう配置になってるんじゃないかな」

先輩は日の当たる外を見ながらそういった。


「はい、どうぞ!とんこつラーメンと柚子塩ラーメンになります!」

店員さんがさっと、注文の品2つを持ってきた。


「え、座った瞬間に!?」

リナは驚く!こんなラーメン屋さんはみたことがない。牛丼屋さんだとこのレベルのスピードで持ってきてくれることがあったりするけれど、ラーメンは茹でる時間もあるからこんなことは難しい。


「はい、さきにご注文お伺いしていたので!」

店員さんは笑顔で答える。


「手際めちゃくちゃいいですね!」

リナがびっくりしたようにいう。

彼女もアルバイトをしていた経験があるからこのすごさはわかった。


「ありがとうございます!研修がしっかりしてるんですよ!」

店員さんがそういった。


「へー、そうなんですね!」

リナはにっこり微笑んだ。


「あ、私のゆず塩ラーメンちょっと少なめですね!ちょうどいい!たすかるー!」

リナはでてきたラーメンを見ながらそういった。


「ほらね」

先輩はドヤ顔でそういった。


「え、ゆず塩ラーメンはちょっと少なめなのでは?っておもっちゃいますけどねー」

リナはゆず塩ラーメンはもともとそんなものでは?と思った。


「僕のは少し多めになってるよ」

先輩は自分のラーメンを見せながら食べ始めた。


「あー、おいしー」

先輩は楽しそうに食べている。


「おいしいですねー!」

リナもおいしくてほっこりした。


すると、となりのお客さんが餃子を美味しそうに食べている姿が目に入った。


「あ、餃子美味しいらしいですよ!頼めばよかったですねー!」

リナが言う。あー餃子も名物なんだ、と少し悔しそうにしていた。


すると、ぱっと店員さんがやってきた。

「こちらよかったら、初回の餃子サービスでもしよろしかったら」

店員さんはそういいながらミニ餃子を二人にプレゼントした。


「ええ!めちゃくちゃ食べたかったです!ありがとうございます!」

リナはすごい喜んだ。

ほくほくだ。


「えーすごい、サービス半端ないですね」

リナは先輩にそうつげた。


「おおぉぉおいしい!」

リナは大きな声を出しながら餃子を楽しんでいる。


「わぁぁぁぁ大満足!」

リナはさらにほっこりした。


「たぶんこれも、こうするとリピート率が高まるというデータがあるんだ」

先輩はこのサービスによる経済的効果を説明した。


「たしかにわたし次来たら頼んじゃいますね!餃子おいしー」

リナはそういいながら更にサービスの餃子を食べた。


「じゃ、お会計しようか」

先輩はそう言って席を立った。


「はい!」

リナは満足して機嫌がよくなっていたので大きな声で返事をした。


「お会計こちらになります!」

店員さんはそう言って値段を提示した。


「すごい、すでにレジの前にいる」

リナは驚いた。やはりとにかく手際がいいのだ。


「これも多分ぼくらがそろそろでるのを予測してるんだ」

先輩は説明する。


「えー!」

リナはまだ怪しんでいる。


「ほら店内のあそことあそこにDX-0R1がおいてある」

先輩はAIカメラの存在をリナに教えた。


「えー、でもモニターとかないですよ!カンで仕事してるんだと思いますよ!めちゃくちゃ気が利くスタッフをたくさんやとってるだけですよ」

リナはやはりその結論だった。


「それも十分すごいけどね」

先輩はうなずいた。


「ありがとうございましたー!またいらっしゃってください」

店員さんが元気よく二人を見守ってくれた。


「ほら、モニターないし先輩の考えすぎですよ」

リナは先輩にいった。


「えー、絶対DX使ってないとこの効率は保てないはず、でもたしかにモニターなかったね、うーん」

先輩はたしかにリナの考えにも一理あるなと考え始めながら会社にむかってあるきはじめた。


「お客様お帰りになりました!」

店員が厨房に着替える大きな声で言った!


「よし、モニターだしてくれ」

そこには、お客二人が同業者だと予測してあることが表示してあった。

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