第6話 私の人間観察

それからは、学校で桜木真琴と音楽の話をするようになった。

――と言っても教室の中では寝てるだけなので、図書委員の時だけだけど。


桜木真琴はロックの音楽が好きで、バンドっぽい曲を好んで聞いていた。

おすすめの曲があるからとCDを貸してくれたりするようになった。


貸してくれるCDは、どれもノリが良い曲ばかりで、聞いているとテンションが上がるような気持ちになってくる曲ばかりだった。


桜木真琴は、普段は寝ていて目立たないけど、実は音楽が好きなバンドマン。

ようやく桜木真琴の正体が分かった。

私は、頭の中にあったモヤモヤがなくなってスッキリした。


ある日の事だった。

いつもどおり桜木真琴と図書委員の仕事をしていた時だった。


「なあ」

「何?」

「お前ってさ、いつも人の事を観察してるよな」

「えっ……!?」


……バレた。

私は、今まで人間観察してる事を誰にも知られた事がないのに。


「お前ってさ、クラスで上手い事立ち回ってるよな。特別に仲の良いグループを作る訳でもなく、孤立するわけでもなく」

「えっ……。そ、そんな事ないよ」

「別にそれが悪いって言ってるんじゃないんだけどさ。本音で話せる友達とかいないだろ」


当たっている……。

私は表面上で仲の良い友達は沢山いる。

でも自分の心の内を本音で話し合えるような友達なんていない。


「そ、そんなこと……」

「お前あれだろ。人の事が気になって仕方ないタイプだろ。クラス全員の考え方とか行動とかそういうの見抜いてるっていうか……。で、俺が教室で寝てばかりで何考えてるのか分からないから、学校帰りに後をつけてきたんだろ?」


図星だ。見事なまでにそのとおりだ。


ああ……。そっか……。

私は今、全てを理解した。

コイツには、最初から私の事全部見抜かれてたんだ。


「……う、うん。ごめん……。実はそうなんだよね」

「やっぱりな。そうだと思ったんだよ。あんなショボいCDショップにわざわざ買いに来ないだろ。おかしいと思ってたんだよ」

「尾行してた事怒ってる……よね?……ごめん」

「いや、別に怒ってないよ」


私はホッとした。

桜木真琴の言葉ひとつひとつにドキドキさせられる。


そして私は、はっとした。気づいてしまった。

コイツが文化祭でバンドの演奏を披露したあの時から……。

私は桜木真琴のギャップに魅力を感じて……。

いつの間にか、コイツに恋をしていたんだ。

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私の人間観察 富本アキユ(元Akiyu) @book_Akiyu

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