第11話:星の魔女について・謎Ⅰ
オレ達は翌日、アリスと共に例のコルフラワーの咲いた場所を訪れていた。
前回と同様に、コルフラワーはまだ大量に咲いていた。
「改めて見ると、ほんとすごいね。綺麗だよ」
「ええ、でも同時にシオンの言う通り、不自然ね。一箇所にこんなに大量に、しかも一瞬ともいえる速度で咲くなんて」
「……ああ、やはり誰かが手を加えたとしか思えない」
「それが、星の魔女の可能性が高いってこと?」
「うん。彼女ほどの力を持つなら、可能かなって」
「けど、やっぱり魔力反応なんてないよ?」
「そこが一番の謎なんだよな。一体どうやったのか…」
薬物とか何か特殊な種のようなものでもあったのか。もう少し調べてみないと何とも言えないが、逆に調べて何かわかるのだろうか。
「いや、とにかく調べるしかないな。一先ず、周辺に何かそれらしい物がないか、探してくれるか」
「わかった!」
「了解よ」
オレ達はコルフラワーをなるべく踏まないよう気を付けながら、周囲を探ることにした。
しかしいくら探せども、それらしい物は見つからず、一度休憩しつつ改めて考えなおすことに。
「う~ん、他にどんな方法がありそうかぁ」
「魔法じゃないなら、やっぱり薬とか、そういうのを使ったとしか思えないけど」
「あるいはそれがもう花の養分となって、目には見えなくなってるとか?」
「だとしたら、ここでこれ以上探しても意味なさそうよ」
「う~ん」
「そもそも、どうして星の魔女は、こんなことをしたのかしら。私達としては助かったけれど」
「それについては、何となくわかるかも。きっとエルフの灰病のことを知って、助けたかったんじゃないかな。まあ何で直接渡しに行かなかったのかは、わからないけどね」
「助けるため、ねぇ」
「星の魔女は、『星の魔女の物語』に書いてある限りでは、ほとんど自分が直接手助けをしたわけじゃない。今回みたいに、間接的に助けることが多いんだ。その本には、あまり目立ちたくないからって書いてはあるけど」
「いや、もう十分目立ってるような」
本を読んでいても、相変わらず彼女の目的というか、なぜ間接的なのかは本当に謎なのだが、それが善意でやっていることなのは、間違いない……気がする。
「ふぅ。考えても答えが出なさそうだし、もう少しだけ調べたら引き返そうか」
「そうね」
「りょうかい!」
再び散り散りになって調査を再開する。だがやはりそれらしい物は何もなく、もう諦めるかと思った時、視界にキラリと光る何かを捕らえた。
不思議に思い見てみると、そこには銀色の丸い宝石のようなものが埋め込まれたネックレスが落ちていた。
「これは……」
「何かあったの、シオン」
「それは?」
「ここに落ちてたんだ、誰のだろう」
「もしかして、星の魔女の?」
「可能性はあるわね。少なくとも、エルフにそういうのを付けてる人はいないわ」
「…なら、これは一旦オレが預かって………」
預かっておこうと言おうとした瞬間、ネックレスの宝石部分が急に小さな光を放った。そしてその光はここから北の方角を指していた。
「こ、これって……」
「どうなってるの? こんな急に光出すなんて」
「…………もしかして、この方角に行けってことなのか?」
「宝石が道を示したってこと? そんなことあり得るの」
「わからないけど、そうとしか思えない」
「…なら、次の目的地は、その光の指す方向だね」
「ああ、もしかしたら星の魔女に近づけるかもしれないな」
オレ達が次の目的地を決めている中、アリスは何か考え込んでいた。
「それ、本当にその方向に進んでいいのかしら」
「どういうこと?」
「星の魔女がどういう人物かは知らないけど、罠という可能性はないのかしらってこと」
「まあ、ゼロではないな。オレも、この本に書いてあることくらいしか、彼女の事知らないし」
「でも、行かない限り、近づくこともできないんじゃないかな。だったら、行くしかないと思うよ」
「……そうね。ごめんなさい、余計なことを言ったわ」
「そんなことはない。ちゃんと助言として受け取るよ」
アリスの言う通り、罠の可能性だって否定出来ない以上は、しっかり警戒しておいたほうがいい。
もちろん、星の魔女がそういう人物でないと思いたいが。
「それで、どうするの? もう旅立つの?」
「そうだな、これ以上ここで調べられることも無さそうだし。そろそろ行くよ」
「そっか。寂しくなるわね」
「いっそアリスも一緒に行く?」
リニスが提案すると、アリスは少し驚いたが、首を横に振って否定した。
「やめておくわ。第一、あなたたちのイチャつきを毎日見るなんて、拷問もいいとこだわ」
「え〜、そんなにイチャついてるかな、ワタシ達」
「自覚ないのね。まあいずれにしても、まだまだエルダートでやることがいっぱいあるもの。私はここでお別れよ」
「そっか。残念だけど、仕方ないね」
「ああ。また機会があったら、ここへ来るよ」
「ふふっ、ええ。待ってるわね」
「それじゃあ、アリス。またね!」
「また会おう」
「ええ、気をつけてね! また会いましょう!」
オレ達はアリスと別れて、新たに旅立つ。
次の目的地がどこなのかはまだわからないが、とにかく光の指す方へと向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます