第35話 王子と令嬢 2
うわぁ、リアムくんのお肌びちゃびちゃ。乳液つけすぎじゃない?
この世界の化粧品って、質が悪いし仕方ないかもだけどさ。
画面越しのキミは、もうちょっと格好良かったよ?
そんな思いを胸に押し込めて、少女が微笑んで見せる。
「ごめんねー、突然来ちゃって。でもでも、王都に帰って来て、1番最初にリアムくんに会いたかったの」
顎の下に両手を添えて、目をパチパチする。
ツインテールを揺らしながら、ちょっとだけ前屈みになると、ポイント高いよね。
そうしたら、
「いっ、いや、問題ない。マリリンなら、いつ来ても受け入れよう」
うんうん、恥じらうよねぇ、キミは。
攻略本に書いてあった通り、チョロ過ぎでしょ、この王子様。
某チャンネルで、ノーマルエンド扱いされるはずだわ。
でも、わかる! わかるよ、リアムくん!
私が私だった頃と比べて、お手入れも簡単だし。
食べても肥らないって、最高でしょ!
名前が
「でね、でね。ちょっと聞きたいんだけど、メアリさんってどうなったの?」
今日の目的は、それだけ。
それさえ聞けたら、
さっさと終わらせて、帰らなきゃね!
今日こそ、パフェとハンバーグを完成させないと!
そんな思いで視線をあげると、リアム王子が誇らしげに胸を張ってた。
「あぁ、彼女なら魔の森に追放した。二度とマリリンの前には現れないから、安心していい」
「そっか、わかったよー」
ゲームと一緒だから聞かなくても知ってるけどね。
アリバイって大丈夫でしょ!
あとは、閉じこめられてる牢屋に行って、いじめられるイベントをーー。
「……え? 追放?? 牢屋じゃなくて?」
「あぁ、あの女は竜に喰われて死んだはずだ。クズには上等過ぎる最後だな」
えっ? 死んだ!?
悪役令嬢が!???
「
「なんでって。お前に怪我を負わせたんだ。当然の処置じゃないか」
「…………まぁ、うん。そうかも」
じゃないよ! あり得ない!!!!
今後のイベントを悪役なしでどうやって進めるの!?
バカなの? 死ぬの!?
もしかして、どこかで選択肢を間違えちゃった!?
そもそも、なんで選択肢の表示が出ないのよ!! バグってるじゃん!!
「ねぇ、ノーマルえん……、じゃなかった、リアムくん!」
「なんだ?」
「えっと……」
今後のイベントってとうなるの!?
なんて聞いても意味不明だろうし。
えっと……。
「なんでも、ない……」
「そうか。ならば良い」
明らかに不思議そうな顔をしているけど、聞けることなんてないし……。
でもきっと大丈夫、だよね?
私のハーレムエンドは、終わっていないはず!
悪役がいないってことは、ライバルがいないって事でしょ!
むしろ、ラッキーなんじゃない?
うん、そうだよ!
「ねぇ、リアムくん。ラテスくんは?」
「ラテス? 王都を出て行方不明になったままだが? メアリと一緒に死んだんじゃないか?」
「そっ、そうなんだ」
「なんだ? ヤツに会いたかったのか?」
「うっ、ううん。違う違う、バッタリ会っちゃったらイヤだなーって、あはは」
なんでよ! あの子もハーレムの一員でしょ!?
ってか、この子、ラテスくんの話題を振ると、目が怖すぎるでしょ。
乙女ゲームの
「
「アイツは相変わらず自室から出て来ないな。会うことはないから安心しろ」
「そっ、そうなんだー」
何なのよ、もぉ!!
このままじゃ、
あの子が一番可愛くて、どの
なんて思っていると、不意にリアムが大きく息を吸い込んだ。
「そういえば、婚約の準備は順調か?」
「ん? 婚約? ……あー、うん! 婚約!」
忘れてた。
準備なんて全然してないどころか、婚約なんてする気ないし。
でも、これってあれでしょ?
イベント中に、白龍さまが来てくれるやつ!
ノーマルエンドとの婚約事態に興味はないけど、イベントはきっちりしなきゃね!
「任せといてよ。まだ小さい子なんだけど、私が光を与えた幼竜には、乗れるようになったから。当日も成功間違いなし!」
「そうか、さすがはマリリンだな」
「でしょでしょ!」
本当なら牢屋に入れられたメアリが、禁忌の術で呪われた白龍さまを召還して。
私が光の魔法で、ズバー、って、浄化するはずなんだけど、それはまぁ、ゲームの強制力的な何かが頑張ってくれるでしょ!
「それじゃっ、私帰るね!」
「そっ、そうか……。だが、来たばかりではないか? もし疲れているのであれば、もう少しここに居てもーー」
「ううん、大丈夫。早く帰って婚約の練習しなきゃだから」
「……そうか、そうだな」
白龍さまに会えるなら、
白龍さまルートは、光魔法の力に応じたイベントだもん、今からでも徹底的に鍛えるしかないよね!
ゲームの時と違って、今は年齢的な制限なんてないし!
「もしかしたら、あんなことや、こんなことも……。ぐふ、ぐふふふふ!」
やばい、妄想が溢れすぎてやばい!
そんな思いを胸に、やすれ違うメイドや騎士に振り向かれながら、彼女は男爵家へと帰って行った。
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