終天の朔

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「これまでの捜査報告を早川事件主任より」

　川村の紹介で早川より事件の経過報告が行われ、死体発見現場の状況がスライドで照会。第一発見者とその供述及び、被害者の詳細が報告された。

　発見場所

　三島市一番町◯◯－◯カワネビル屋上

　発見時間

　九月十八日午前二時十分

　第一発見者

　アースクリーン清掃員吉田 栄一（二十五歳）及び同僚　下田 義郎（五十二歳 ）

　前日十七日午後九時より、株式会社アースクリーン清掃員四名で、二階から六階迄の廊下及び階段のワックス清掃業務を開始。十八日午前二時から二名ずつ一時間の休憩の際、先に休憩に入った上記二名が屋上で発見。死亡を確認した第一発見者 吉田が、清掃作業をしていた清掃リーダー 山口 尚吾 三十二歳に報告し、その後二時十八分、山口の携帯電話より一一○番通報された。

　通報後、駅前派出所から木下巡査が現場に急行し、現場保全作業及び、第一発見者の聞き取りを開始。二時四十分、三島警察署から到着した早川巡査部長及び、大木巡査長に引き継がれた。

　被害者　天野礼子　女性三十八歳独身

　住所　静岡県三島市◯◯町三－三十六コーポ境二○二室

　本籍 山梨県南都留郡 富士河口湖町字......

　家族 なし、親族 なし

「戸籍上の両親は、被害者が二歳の時に交通事故で死亡。両親に兄弟姉妹は無く、その後父方の祖父の戸籍に移動、しかし、被害者が14歳の時に祖父が絞首自殺、その半年後に祖母も病で亡くなっています。母親が孤児院出身の為、母方の親族は皆無。最終学歴は中学卒です」

「職業サービス業。現住所から歩いて十五分程の◯◯町スーパー大川に、今年の六月からパートとして働いております。社会保険の適用はありません」

「続いて鑑識から報告をお願いします」

「はい、検視も含め報告致します。 被害者の身長一五八センチメートル、体重四十八・五キログラム中肉中背、血液型AB」

「死因 、真正面或いはやや上方から両手での絞首による窒息死。特に被害者の首頚右側に強く絞めた痕が残ること、及び、犯人の右手親指痕が頚部上方に残ることから、右利きの者による犯行だと推測されます」

「特徴、親指から掌を経て中指先端迄の長さは二十から二十二センチ、平均より指が長いか、掌全体が大きい人物。また、被害者が直立で首を絞められたと仮定した場合、犯人の身長は一七○センチ以上であると考えられます」

「続いて死亡推定時刻ですが、司法解剖による直腸温度検査及び、死後硬直が下顎を過ぎ上頚迄達していたことからも、 発見当初の計算と同時間の十七日二十三時頃と推測されます。尚、胃の残留物は殆んどありませんでした。背中に古い傷痕がある以外、その他の外傷はありません」

「目撃者についてですが、今のところ報告はありません。尚、清掃員の話では、夜間作業中に、ビル内の階段及びエレベーターを使用した者は居なかったそうです。屋上への侵入経路は、外の非常階段に絞（しぼ）られるかと思われます」