第59話 現実:技術-自動消火装置の軍用化 高速爆発抑制剤散布装置(サーモバリック爆弾防御兵器)・「重炭酸ナトリウム」 防がれしモノたち

近年の紛争では塹壕や建築物に隠れた相手に対し、かつての焼夷兵器に替わってサーモバリック弾(燃料気化弾)が使用されるように ......




▼高速爆発(こうそくばくはつ)抑制剤(よくせいざい)散布装置(さんぷそうち)とは、自動消火装置の一種です。

粉塵・ガス爆発が起きる可能性が高い場所に設置する固定式の自動装置で、爆発を感知する圧力センサーと燃焼抑制剤を高速で散布する散布装置から構成されている。


 粉塵・ガス爆発が発生すると初期の圧力上昇が始まった瞬間に爆発による圧力変化を感知して粉塵爆発やガス爆発が完全に起こるまでの極わずかな時間で空気中に粉末やガスの燃焼抑制剤(燃焼抑制をする重炭酸ナトリウムなど)を高速で散布して、粉塵爆発を止めてしまうことで爆発事故を未然に防ぐ、あるいはこれによって燃焼が抑制、または減少することによって被害を減らすことが可能となっています。

*重炭酸ナトリウムは消防法施行規則第21条の規定による第一種粉末消火薬剤であり、B火災(油火災)とC火災(電気火災)に適応していることから「BC粉末消火剤」とも呼ばれる。(重炭酸ソーダ、略して重曹とも)熱分解によって生成されたナトリウムイオンと燃焼反応で生じる遊離基(OH•、H•)が結合することで燃焼の継続を抑制する(加熱によって二酸化炭素を発生する)のが粉末消火薬剤の消火原理である。

安価なことから、化学消防車や消防艇の粉末消火装置に用いられる。


 本来、鉱山などの粉塵が舞う粉塵爆発が予想される場所で粉塵爆発を防止するために設置されたり、ガス爆発が起こり得る工場などの場所での爆発を防ぐために作られた特殊な自動消火装置の一種であるが、これを軍用に転用したサーモバリック兵器を中和するアクティブ防御装置の研究がされている。

すはニュートロンジャマーか! 空中元素固定装置か!?



▼高速爆発抑制剤散布装置の軍用化:サーモバリック爆弾防御兵器

高速爆発抑制剤散布装置を軍用化することによって現在では防御不可能な燃料気化爆弾(サーモバリック爆弾)を無力化しようとする研究が進んでいます。


 高速爆発抑制剤散布装置は、粉塵・ガス爆発が発生すると50ミリ秒でセンサーが働き爆発を検出すると1ミリ秒以下で起爆する電気雷管で放出口を開き、70ミリ秒で燃焼抑制剤の散布を完了する。

これは粉塵・ガス爆発の圧力上昇曲線が固体爆薬などに比べてゆっくりであり、爆圧が最大になるまでに160ミリ秒~200ミリ秒の時間を要するからであり、圧力が10キロパスカルを越える80ミリ秒前後になる前に爆発を検出して爆燃を抑制してしまうことで被害を防止することができるのである。(なお燃焼抑制剤には重炭酸ナトリウムなどを使用する。)


 これと全く同じ原理で燃料気化爆弾やサーモバリック爆薬を不発化するための防御装置が研究されています。


 サーモバリック爆弾も簡単に言えば燃料の急速な燃焼です。

よって燃焼を止めてしまえば爆発を防ぐことができます。

サーモバリック爆弾に使われる爆薬は、BLEVE現象を起こすことが必須なので、爆薬の種類は限られています。

よって、この爆薬を中和する物質を爆発前に散布してしまえばよいのです。


 例えば今アメリカでは、戦車砲やミサイルを能動的に防衛するアクティブディエンター装置の開発を進めています。

コレは敵の弾丸の軌道を追跡し、撃ち落とす技術です。

このシステムに、先ほどのサーモバリック中和物質を搭載すれば、サーモバリック爆弾を無力化できるというわけです。


 現在、サーモバリック爆弾はテロリストの手に渡るなど、世界中に拡散し始めています。

すでに原理解明から30年以上がたち、小国など技術力が低い国でも開発・製造が可能になってきています。

故にサーモバリック爆弾から防衛するための技術開発が急ピッチで進められており、研究自体は進んでいますが元々鉱山などの固定された場所で使用される装置のため、解放された空間での安定した燃焼抑制剤の散布もまだまだ研究段階にあると言え

広い戦場での使用はまだまだ実現には遠いでしょう。


 しかし実現はされるのかと言うと、きっと戦場投入の時期はそう遠くないでしょう。

もしもこの装置が完成したならば、

燃料気化爆弾(サーモバリック爆弾)が投下されても爆発は軽減されて大きな被害を避けることができます。



 一部で日本の自衛隊は核を持てないために次に威力のある燃料気化爆弾(サーモバリック爆弾)を所持するべきだと意見が出ますが、それは非常に間違った意見です。

そもそも燃料気化爆弾(サーモバリック爆弾)は戦争に使われている非常に攻撃的な爆弾で、専守防衛が主な日本の自衛隊には目的が合いません。


 さらに燃料気化爆弾(サーモバリック爆弾)に使われている液体燃料は

殺虫や殺菌で使われているような有害物で、日本では労働基準法施行規則別表第一の中度の有害物質に指定されています。

これは土地にまかれるだけで汚染を引き起こすので、日本では核を連想することからよく思われていません。


 なので自衛隊が持つべきなのは燃料気化爆弾(サーモバリック爆弾)ではなく高速爆発抑制剤散布装置の方なのです。

攻めに出れない分、日本は燃料気化爆弾(サーモバリック爆弾)に対処できる高速爆発抑制剤散布装置の実用化をこそ急いでするべきだと考えられます!

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