第60話 現実:技術-建造物 ~ 決壊するその前に ~ 長江 -「三峡ダム」史上最大規模の洪水(予定)
今すぐ三峡ダムはたとえ決壊しなかったとしても、三峡ダムには治水能力が無いことを曝してしまったのだが、台湾のサイトにあった一般人であろう投稿に「人が中国共産党を罰しないので、その代わり天が中国共産党を罰しているのだ」とあった。
台湾メディアでは、「三面挟攻」(サンミエンジアコン)という表現を使っている。
空から降ってくる豪雨、長江の上流から流れてくる激流、それに三峡ダムの放水による「人工洪水」という「三面からの挟撃」に遭って、武漢や上海など、長江の中下流地域が甚大な被害に見舞われるというのだ。
そして「三面挟攻」の結果、「そもそも50年しかもたない三峡ダムが決壊するリスクができた」と報じている。
逆に中国メディアは、水利の専門家たちを登場させて、「三峡ダム決壊説」を必死になって強く否定している。
★三峡(さんきょう)ダム:
ダムは中国・長江中流域にある重慶市奉節県の白帝城から湖北省宜昌市の南津関までの193kmの間の三つの峡谷:上流から瞿塘峡(くとうきょう)(8km)・巫峡(ふきょう)(45km)・西陵峡(せいりょうきょう)(66km)が連続する景勝地_三峡のうち最も下流にある西陵峡の半ば、湖北省宜昌市夷陵区三斗坪鎮に建設された大型重力式コンクリートダムであり、1993年に着工ー2009年に完成した「洪水抑制」・「水運改善」・「電力供給」を主目的とし、その「三峡ダム水力発電所」は2,250万kWの発電が可能な世界最大の水力発電ダムでもある。
なお三峡は中国の歴史・文化の上でも重要で、古来より詩文にうたわれた風景や古建築が三峡周辺に散在し「瞿塘峡は雄大、巫峡は秀麗、西陵峡は奇絶で険しい(瞿塘雄、巫峽秀、西陵奇)」と評される。
▼建設によって求められる数々のその恩恵:
●「洪水抑制」:
三峡ダムのもっとも大きな目的は長江の洪水の抑制で、三峡ダムの巨大な貯水量は、本来水量調節を容易にして洪水を抑制することが期待されているのである。
そしてその貯水池は、宜昌市街の上流の「三斗坪鎮」に始まり重慶市街の下流にいたる約660kmに渡り、下流域の洪水を抑制するはずであった。
●「水運改善」:
それとともに、長江の水運に大きな利便性をもたらした。
ダム建設前の三峡は長江の水運の難所であり夏の増水時には水位が上がりその航行には危険が伴っていたが、それでも三峡を船で上り下りするクルーズは中国内外の多くの観光客を集めており重慶から宜昌・武漢・上海までの間を運航していたのだが、このダムの建設によってそれまで重慶市中心部には3,000t級の船しか遡上できなかったのが、10,000t級の大型船舶まで航行できるようになり、これまで航行できなかった10,000t級の船が重慶港に直接接岸できるようになった。
なお、船はダムを迂回する三峡ダムの5段閘門を経て航行する。
そう、水門の上流と下流の水位落差113メートルあるダムで堰き止められた長江で、どのように船舶は通り抜けるのだろうかと言うと、上流から見てダム左側の花崗岩の山を切り開き、長さ7キロ・幅56メートル・高さ170メートル程度の人工峡谷を作り出し、年運行能力5000万トンの二航路ある五段階式の航行用水門を建設したのだ。
この巨大工事は、「長江の第四峡」建設と称され「大型船は階段をのぼり、小型船はエレベーターを使う」と、船舶が三峡ダムを通過する二つの方法を生き生きと描写する。
「階段」とは五段階式の航行用水門のことで、船が水門に入るとまず水門の扉が閉まり、次の階の水門の水位と同様の高さまで水が注入され、完了すると門を開け次の階に移動する。
これを何度も繰り返すことで、1万トン級の船が階段を上がるようにダムを通り抜けることができるのだ。
一方「エレベーター」とは、船の垂直昇降機のことで、客船を迅速に通過させるための機械であり、一回の操作で3000トン級の貨客船一隻または1500トン級のはしけ一隻を通過させることが可能。
これで一気に113メートルを上昇させることができるのだ。
なおこれら航路を開削した後、山の内側から外部にかかる力と重力の作用で、航路両側の傾斜のある壁と二つの航路を分けている石壁が崩れやすい事や山全体が変形する可能性があることがわかり、水門に深刻な欠陥を残す恐れが指摘された。
そこで慌てた技術者たちは、このままでは共産党に処刑されると死に物狂いで数え切れないほどの試験を繰り返し、100~300トンの張力がある長さ30~60メートルのワイヤで2平方メートルごとに4~6本の密度で高さ68メートルの中央の石壁と高さ175メートルの両側の斜面を縫うように補強した。
さて、ダムによって長江の水位がかさ上げされ、ダム湖形成で三峡の川幅が広がったため、上記のようにより大きな10,000t級の大型船舶・貨物船が四川盆地の玄関口である重慶市中心部にまでさかのぼることができるようになる他、流れが緩やかになり川が深く・広くなることで、これまで三峡に多く存在していた航行の難所がすべて消失し、航行が容易になることによって、新たに航行可能となる船舶の数が増加する事によって河川の交通量が増加している。
なお、この貯水後のさらに重要な「変化航路条件の根本的な転換」では、これまでより航行の際の燃費がよくなり積載量も増加し、航路片道の年運行能力は今の1000万トンから5000万トンに増加することとなると見積もられた。
推計によれば貯水後、水上運輸のコストは36%程度削減でき輸送力も大幅にアップすることにより、長江の水上運輸事業は絶対的な価格優位を手に入れることができるとされる。
こうして長江自体の輸送可能量が増加することによって物流が円滑になり、西南部の拠点都市である重慶を拠点として、内陸部の資源や製品がより速く・より安価に沿海部に輸送できるようになることで、沿海部の企業がこれまで以上の低コストで内陸部に進出し、長江は中国の沿海部(東部)と内陸部(西部)をつなぐ経済の新しい大動脈として、中国政府の進める「西部大開発」の起爆剤としても期待されていたのだ。
観光に関してはダム自体が新しい観光名所となり、経済効果を生んでいる。
また、名勝である三峡の両側に聳えていた山の中腹まで水位が上昇したことにより、山が以前に比べ低く見えるようになるなど景観が大きく変わってしまったものの、しかしダム完成後も風景はまだ雄大さを残しており、完全に水没するわけではなく渓谷自体は残るため、長江クルーズは継続されている。
むしろ、交通の便の改善に伴い観光客の増加が見込まれている。
なお西陵峡下流の急流は、1970年から1988年にかけて建設された葛洲壩ダム(三峡ダムの38km下流)により流れが緩やかになり航行が楽になっている。
●「電力供給」:
加えて、水力発電所は中国の年間消費エネルギーの1割弱の発電能力を有し、電力不足の中国において重要な電力供給源となり、ダムの生み出すその豊富な電力は、いわゆる西電東送計画の根幹の一つとなっており、三峡ダムで発電された電力は同計画の中ルートとして中国経済の心臓部である上海市をはじめとする長江デルタ地域へと送られているのだ。
また、ダムによる水力発電は一度完成してしまいさえすれば火力発電と比べ発電時の二酸化炭素の発生・放出量を抑制することができ環境負荷が少ないとされる。
なお、最大の温暖化物質は水蒸気だと言う説もあるもよう。
●「三峡ダム水力発電所」:その発電能力
ここで発電された電力は、中国政府の「西電東送」(西で発電して東へ供給する)計画の一環として、上海市などの長江デルタ地帯へと送られる。
遠方の資源を取り上げ、他所に充てるのは古来からの伝統。
70万kW発電機32台を設置し2,250万kWの発電が可能であるが、これは最新の原子力発電所や大型火力発電所では16基分に相当し、世界最大の水力発電ダムとなる。
この電力を石油を燃やした火力で作るとすれば、1年間に石油1,750万トン、CO2排出5,450万トンという数値になる。
また、三峡ダム水力発電所の想定年間発生電力量は1,000億kWhであり、中国の年間電気エネルギー消費量が約5兆kWhであるから、三峡ダムだけで中国の電気の2.0%を賄えることとなる。
ちなみに、東京電力の一般家庭向け販売電力量だけでもおよそ860億kWhで、日本の年間電気エネルギー消費量は約1兆kWhである。
もっとも実際の発電量は、2013年には837億kWh、2014年には988億kWhであった。
なお、三峡ダムと匹敵するもう一つの巨大水力発電所であるブラジル・パラグアイ間にあるイタイプダムの発電量は、2013年には986億kWh、2014年には878億kWhだった。
●「用水」:
このほか、2015年時点では計画段階にとどまっているものの、2014年に完成した漢水の丹江口ダムから北へと延びる南水北調計画の中線ルートに接続して、北京や天津といった水不足に悩む華北平原の諸都市へ電力だけではなく水までをも送る計画も存在している。
▼その歴史:
1912年、
革命家の孫文を臨時大総統として、中国大陸を中心とする中国を代表する国家として「中華民国臨時政府」が成立した。
1919年、
『建国方策』の中で辛亥革命の父である孫中山(孫文)によるものとされる「三峡ダムの構想」について言及している。
以降、「国民党政府」により調査が進められたものの、戦争や内戦により実現することなく白紙となった。
1949年、
国共内戦を経て「中華人民共和国」が建国される。
1950年、
なんと「共産党政府」が長江水利委員会を設置し予備調査を開始。
1956年、
調査は完了。
1963年、
着工する方針が発表された。
しかし、その後は内ゲバとも言える「中ソ対立」や悪名高き「文化大革命」、さらには「建設反対論」などの利権争いの影響によりしばらく計画は進展しなかったが、文化大革命が終結すると再び三峡ダムの構想が浮上した。
1983年、
『三峡ダム事業化調査報告』が提出される。
だがやはりこれ以降、三峡ダムの建設を巡り賛否両論が噴出した。
1989年、
建設反対派の意見を掲載した『長江 長江-三峡工程論争』が出版されると、全人代の議論にも影響を与え着工が延期になると一時表明された。
同年、今度は「六四天安門事件」が起き、同書の著編者戴晴は逮捕され同書自体も発売禁止となり、これ以降建設反対論は抑制され、建設賛成論が勢いを増す。
お察しである。
なお、1988-1998年当時に首相をつとめた李鵬がその中心だったとされる。
1992年、
第7期全人代第5回会議は三峡ダムの建設を、出席者2,633名中、賛成1,767名・反対177名・棄権664名・無投票25名により採択したが、全会一致が基本である全人代において、これほどの反対・棄権が出るのは異例のことであった。
同年5月から、建設予定地の住民の移住が始まった。
1993年、
三峡ダム建設の事業主体となる「長江三峡工程開発総公司」や資金集めのための「三峡証券」が設立・準備工事が開始された。
1994年、
三峡ダムの建設工事の着工式が行われるとともに、本工事が始まった。
1997年11月8日、
長江の本流が堰止められ第二期工事を開始した。
2003年、
一部貯水(水位135m)と発電を開始し第三期工事を開始した。
2006年5月20日、三峡ダムの本体工事が完了した。
2009年、
発電所等を含めた全プロジェクトが完成した。
特にこれ以降、周辺各地で異常気象・地殻異変の類いが頻発するようになった。
そして、2020年……
▼三峡ダム建設前と建設後の変化:ダム建設に伴う数々の問題
三峡ダムの建設は数々のその恩恵の一方で、建設過程における住民110万人の「強制移住」・三峡各地に残る名所旧跡の「水没」・地質が脆い場所での「地すべり・がけ崩れ」の発生、更には「水質汚染」や生態系への悪影響の他、ダム自体の「土砂堆積の懸念」、そもそもの「ダム決壊の危機」やそれに伴う「洪水の危機」等、ダム建設に伴う問題も数々指摘されている。
……各地で騒いでいる自然保護団体達もCO2発生を抑制するために、自身もそれくらいの代償を支払って見せればいいのに。
●住民の強制移住:
三峡ダムの貯水池は全長660㎞にも及ぶため、ダム湖に水没する地域は広大なものであり、多数の村落や都市が水没することとなった。
そもそも三峡地域は険しい山岳が長江の両岸に迫っている地域であるが、湖北省では宜昌市の秭帰県・興山県・恩施トゥチャ族ミャオ族自治州の巴東県、重慶市では巫山県・奉節県・開県・豊都県などで中心市街地が水没した。
また人口数十万を数える中規模都市だった四川省万県市(現・重慶市万州区)や涪陵区などでは市街地の大部分が水没しているが、これらの水没した地区のうち都市区域においては、脆弱な隣接した斜面や山の上に新市街が建設され多くの住民が移住した。
着工前は、移住対象の住民は84万人であったが、最終的に2007年12月の時点で140万人が強制移住を余儀なくされた。
また2020年までに更に230万人が退去予定である。
中国ではよくアルよくアル。
こうした移住は、基本的には同一地域内での移住が原則であり、上記の都市のほか、農民も山間地を切り開いて作った新たな農地へと移住することとなっていた。
しかし、当然ながら三峡地域はもともと地形の険しい地域であるため農業適地は開墾しつくされており、農民は急斜面の農業開発を余儀なくされた。
故に土砂流出が激増し、がけ崩れなども多発するようになった。
これは四川盆地東部の褶曲山脈群は7000万年前の燕山運動により形成されたうえ、その後の地殻の上昇により峡谷もますます深くなり、その上三峡独特の景観である峡谷部分では石灰岩が多く、風化には極めて強いが水には溶食されやすく、水の流れる部分だけがさらに深く削られてゆき、また石灰岩には垂直の亀裂ができやすく水が亀裂の中に入りその底部を侵食し谷が深くなると、両岸の岩が平衡を失い垂直に発達した亀裂に沿って谷に落ちるため、両岸が切り立った崖になってゆく土地柄だからである。
なお、砂岩や頁岩の多い地域では浸食がより進むため、うってかわって広い谷が形成されている。
このため同一地域内ではなく遠く離れた地域への移住が推進されるようになったのだが、これら「三峡移民」の多くは充分な補償も受けられないまま貧困層へと転落しており社会問題となっていて、2002年には移住先からの帰郷を求めた元住民が逮捕される事件も発生している。
●文化財・名所旧跡の水没:
三峡は中国の10元紙幣にも描かれるほどの中国を代表する名勝であり、白帝城は孤島化、白鶴梁など貴重な歴史資料でもある史跡は水没の危機があった。
文化財は合わせて1,108点が水没の影響を受けると予想され、史跡としての価値に応じ移住または放棄の処置がとられた。
なお、白鶴梁は水没したが2009年5月に水中博物館(白鶴梁水下博物館)として一般公開された。
●地すべり・がけ崩れの発生:
地質が脆い場所に作られたダムに貯水を行うと、ダム湖斜面や周辺の地盤への水の浸透と強大な水圧により、耐えきれず地滑りやがけ崩れが発生することがある。
なので当然三峡ダムでは完成前の2008年末時点で132カ所で合計約2億立方メートルのがけ崩れが発生した。
そのため当局は水位を満水の175mにすることなく172.5mで打ち切り、約2,000人を緊急避難させている。
その後、三峡ダム区地質災害防止作業指導事務室チームが調査を行った結果、5,386カ所で地滑りやがけ崩れなどの問題が発生するおそれがあることが判明した。
何のための事前調査だったのか?
重慶市内の雲陽県涼水井地区では、完成直前の2009年3月以降、川岸の430m・400万㎥にわたる土砂が崩落し、長江の主要航路に土砂が流れこむ恐れがあるとして厳重監視対象地域になっている。
同地区に近い村では、地盤の変動で民家が徐々に引き裂かれながら移動するなどの被害も出ているが、その程度の事は中国では日常茶飯事なのである。
●水質汚染:
一応形の上では環境対策として、三峡ダム地区(湖北省 - 重慶市)の汚水処理施設およびゴミ処理場の設置計画が2001年に了承され(建設費だけは一応国が負担)建設・稼働している事になっている。
しかし、人口3,000万人を超える重慶など上流域での工業・生活排水対策が不十分であるので、ダムが中国ではよく見られる「巨大な汚水のため池」になっている。
これは、水の富栄養化に大きな影響を及ぼす窒素化合物やリンの除去処理を行っていない施設が多いからだ。
そもそも、その運営費は自治体負担のため完成後も稼働していない施設・処理場が多く、国家環境保護局が2005年に行った調査では呆れた事に「7割がまったく未稼働か、時々しか稼働していない」状態にあったというのだ。
なお、湖北省と重慶市は対応策として施設運営費を「国8割、地方2割」とするよう求めている。
●土砂堆積の懸念:
そもそも三峡ダムは、流入する土砂で埋没してしまうのではないかと懸念する意見がその当初からある。
だがこれに対して当局は、三峡ダムは「流域面積108.4万平方Kmに対し土砂流入は5.3億トン/年に過ぎず、年間平均総流入量4,500億トンに対し有効貯水量は220億トンで5%にも満たない」とし、また土砂吐きには、「ダム下流側に7m×9mのゲート23門を設け、6月~9月の洪水時に175m満水位から30m水位を下げて洪水と共に土砂を排出する計画になっており、問題が生じる事はけしてない、あるはずがない」としている。
●ダム決壊の危機:
記録的な豪雨が続き多数の河川の氾濫に見舞われている中国ですが、世界最大の水力発電ダムである「三峡ダム」の決壊という、さらなる危機の到来が人民たちの間で囁かれています。
中国と言う国家がその威信をかけて作り上げたダムが破れるようなことは、果たしてあり得るのでしょうか。
2019年、三峡ダムに決壊の危機が迫っているとする声が高まった。
堤防が歪んで見えるという写真がネットで話題になったからだ。
これは、中国国内のダム専門家がGoogle earthで2009年に撮影したダムの基礎部分の写真と2018年に撮影した写真を比較した際「2009年にはダムの基礎部分はまっすぐな直線になっているが、2018年には数ヶ所が湾曲している」と発表したからである。
2009年当時の写真と比較すると確かに、数カ所湾曲しており、当の中国当局はこの鋭い指摘に対して「間違っているのは中国じゃない……世界のほうだ! 現実が嘘をついている。」と毎度の如く現実を否定し、「この歪みはあくまで計算上予測されたものであり、堤防の強度に影響はない」とわざわざ発表して噂を打ち消そうとしたが、これまで中国当局が三峡ダムのリスクや問題について正しくアナウンスしたことはないので、多くの周辺住民は決して安心できていない。
なお現在、既にその画像は差し替えられている。
まあ例え事実がどうであれ、ダムの変形自体よりも問題なのがダムの船閘(ロックゲート)周辺から水漏れがあることだと言う意見もある。
また実際にダムが決壊した場合には、かつて日本軍が黄河を決壊させたと嘘を触れ回ったように、今度はアメリカ軍がやったとか言い出すのだろうか?
共産党のお得意の手口である。
実際に決壊した場合には上海市や武漢市などの下流域の大都市に大きな被害をもたらし、中国経済に大ダメージを与えるとともに、中国国内への電力供給が急激にストップすることで大規模な停電_全域停電(ブラックアウト)を引き起こす可能性が容易く予想されるが、この事に対し日本政府も経団連も一切反応は無い。
●洪水の危機:
2020年6月2日以降、中国南部で激しさ・持続さ共に最大かつ広範囲な降雨が継続し、歴史的記録を超える洪水となった川・土砂崩れ・その他の災害が頻発し、三峡ダムの洪水制御への圧力が急上昇、その後いくつかの中国国内メディアの報道により、三峡ダムの水位は上昇し続けていることが明らかになった。
その後の遅れに遅れた中国の公式発表により、ようやく日本のマスコミは思い腰を上げ、やがてボチボチと関連報道を散漫に発表し始めた。
なお、この時点で中国中央気象局のウェブサイトによる予測では21日から25日にかけて中国南部の広範囲で大雨が降る見込みとなっていた。
2020年6月11日、
今年の累積降水量は前年同期より6%増加し、回の激しい降水記録が更新され、148の河川が警戒線を超える洪水が発生していた。
三峡ダム上流の重慶市は非常に激しい雨に見舞われ、当局は大雨特別警報を発表した。
中国国務院は記者会見で、中国が全面的に雨期に入ったと述べた。
中国共産党水資源部の関係者は記者会見で、中国本土は現在洪水シーズンに入っていると述べた。
中国水利部(省)の葉建春次官は記者会見で、「中国国内にある9万8000基のダムのうち9万4000基は小型ダムだ。一部のダムに決壊のリスクがある」と警告した。
今年は江蘇省南部、中国南部・中国南西部東部で大量の降雨が発生しており、珠江流域の西河・北河、長江流域の香江・鄱陽湖水系、浙江省の銭塘江水系の一部の中小河川で警戒レベルを超える洪水が発生し、一部の河川では安全レベルや最大記録を更新した洪水もある。
2020年6月16日以降、
中国南部・中部と西南部で豪雨が24時間にわたって継続的に降り続いた。
2020年6月17日、四川省の丹巴県内の13カ所以上で土砂崩れや地すべりが確認された。
県内の発電量2,000キロワットを誇る梅龍発電所と、発電量3,200キロワットの阿娘溝発電所が土石流によって崩壊し、一部の村が飲み込まれ、梅龍発電所の地元である梅龍溝では大規模な堰止湖が発生した。
中国メディア『天気網』によると、堰止湖の容量は1,234万立法メートルだと言う。
午前3時40分、四川省甘孜丹巴県半扇門鎮の梅龍溝で天然ダムが形成し、この際洪水と泥石流が発生、これにより多数の村が流され2つの村が直接消滅し、2万人以上が避難・移住した。
梅龍溝村民は、地滑りは夜3時か4時に起こったと述べた。
その後、地すべりによって引き起こされた天然ダムにより村全体が氾濫に飲まれたのだ。
その激しい洪水によって村々が破壊されるライブビデオは衝撃的で、植山に覆われた場所で地滑りが起こったことを示し、峡谷のほとんどの家は泥水と流石によって洗い流され、睡眠中に亡くなった村人の数すら謎である。
四川省甘孜丹巴県党委員会宣伝部は、ダム・川が氾濫し村家や発電所が破壊されたと発表した。
四川省甘孜丹巴県半扇門鎮の梅龍溝は、小金川を遮る泥石流により天然ダムを形成したと発表。
梅龍溝に加えて、小金川河下游村落もダム湖の影響を受けました。
四川省丹巴県小金川は堰塞湖の泥石流によって遮られ、堰塞湖には数千万立方メートルの貯水容量があり、正午には氾濫し始め洪水は下流に激しく襲い始めた。
丹巴県党委員会宣伝部は、堰塞湖が道路を中断させ、爛水湾は阿娘寨村で地滑りが発生したと述べた。
河水が下流に影響を与え、被災地の住居・交通・電力・通信などの設備に被害を与え、阿娘寨村近くの川は村家や道路の浸食し約1.7kmを破壊したのだ。
こうして梅龍溝発電所は破壊され、阿娘溝発電所は威脅にさらされた。
この日の午後4時の時点で、丹巴郡を通過する泥石流が10本経過し約22千米の道路と約30kmの河流が破壊され、村人が植えた作物のほとんどが破壊された。
ライブビデオにはやはり衝撃的な数多く投稿されており、巨大急流が上流から急降下していくつかの村は姿を消しさり、山頂から突然の噴き出した土砂崩れが多くの村を飲み込んで埋めた。
また、三峡ダム下流にある四川省丹巴県唐家山堰塞湖でも、天然ダム崩壊により周辺の村が全部水没され、大きな被害を受けている。
ここは2008年5月12日の四川大地震で大きな被害を受け、この地震で唐家山堰塞湖という永続的な天然ダムである堰止湖が出現したのであるが、この際堰止湖が決壊する危険から北川県をはじめ四川省第2の都市である綿陽市など下流の広い範囲で避難命令が出て、軍が出動して1か月に渡り湖からの排水を行ったが、現在活断層上に位置する元の北川県の中心である曲山鎮は放棄され、崩壊した市街地はそのままの姿で展示する防災メモリアルパークと化し、元の位置から20キロほど離れた位置に新たな県政府所在地が建設されほぼ移動完了していた。
なお中国人ネットユーザーは海外ツイッターでは、「宜昌市より(長江の)下流にいる市民、早く逃げなさい」とのSNS微信のグループチャットで警告を書き込んだとされる国内専門家の警告文を相次いで転載していた。
『宜昌市より長江の下流にいる市民逃げてー! 超逃げて!!』
2020年6月18日午前3時26分、
南西省区の洪水は激しく四川省丹巴県で泥石流が発生した。
またこの頃、四川省丹巴県でも土砂崩れが発生し山谷里の村が埋められた。
午前7時49分、山谷里堰塞湖が倒壊した。
2020年6月20日、
中国中央テレビ局(CCTV)経済番組の報道によると、三峡ダムの水位は上昇し続けており20日の三峡ダムの流入量は26,500立方メートル/秒になり、これは前日の19日の20,500立方メートル/秒より6,000立方メートル/秒多いそうだ。
この為、貯水池エリアの水位は20日の段階で147メートルに接近し、危険水位を2メートル近く超えた。
2020年6月21日、
数日前まで中国共産党は「三峡ダムが危険な状態にあるというのは噂であり、悪意ある憶測だ」としてきたが、もはや隠しきれなくなった。
2020年6月22日午前11時50分、
中国四川省重慶市(直轄市)の水利当局は長江水系の河川・綦江(きこう)の上流側での急激な増水により80年以来最大の洪水が発生し、最高水位が10~20メートルに達しダムの水位が危険な状態となったことを知らせる最高級水位の「洪水紅色警報」を出した。
その「史上最大規模の洪水」に見舞われるとの警告により市民4万人が避難したとされる。
中国メディアによると、1940年に設置された重慶市水文監測総站が「洪水紅色予警」を発令したのは、開設以来初めてのことだ。
市内江津区にある綦江の五岔站の水位は、警戒線より5.7メートルから6.3メートル上回ると予測した。
また集中豪雨の影響で、重慶市の南万高速道路(南川区から万盛区)の一部が崩壊し、さらに中国水利部(省)の発表では全国各地の198本の河川の水位が警戒線を超え洪水が発生したとある。
貴州省では洪水により少なくとも6つの県が水没した。
中国国内ネット上では、四川省などの水害で各地の小型ダムが決壊すれば、湖北省宜昌市にある三峡ダムは崩壊する可能性があるとの心配の声が上がっていた。
なおツイッターに、あるネットユーザーが三峡ダムで密かに放水が行われている様子を撮影した動画が公開された。
2020年6月23日、
長江の三峡ダムは警告水位をとっくに超えており、長江(揚子江)の中流と下流にある980の貯水池が緊急放水を行った。
中国国営(CCTV)の報告によると、合計26の省・自治区・地方自治体が洪水で、1,374万人が影響を受けており、81人が死亡または行方不明となっていると伝えている。
現在までの直接的な経済的損失は 278億人民元(約 4000億円)だという。
この週に入って中国・重慶の水害がいよいよ酷い事になってきていて、中国当局は80年に一度規模の大洪水だと警告を発している。
また中国共産党の国家洪水制御および干ばつ対策本部は、最近中国は洪水期に入っており、すべての部局に対して川や湖の防御を強化するよう要請し、鉄砲水・地滑り・局地的な突然の強い降雨によって引き起こされる土石流などの災害の監視と早期警報に十分対応するよう求めた。
さてこうなると、いよいよ心配なのは重慶を流れる長江の下流にある世界最大の水力発電ダム「三峡(さんきょう)ダム」(湖北省宜昌市三斗坪)のその強度だ。
中国水利部当局も「ブラックスワン」(起こる可能性は確率的に非常に低いが、起これば極めて大きな衝撃を引き起こす事象)に例えて強い懸念を示すほどだ。
当局は「これはあくまで80年に一度の豪雨であり、万が一決壊するとしたらそれは自然災害なのである、そう全てはブラックスワンのせいなのである」という責任のがれの逃げ道を模索しはじめてきたので、かなり事態は切迫しているだろう。
2020年6月24日、
中国・四川省で大規模な山崩れが発生した。
中国メディアによれば、住宅62戸が土砂に埋まり、120人以上が生き埋めになったという。
山崩れの現場は四川大地震と同じ場所であり、ここ数日大雨が降りつづいて地盤が緩んでいたことが原因だとされるが、原因はそれほど単純なものなのだろうか。
そう、四川省で起きた大規模な山崩れは、本当に大雨だけが原因なのか。
一説には世界最大の三峡ダムが一帯で大地震を頻発させているという指摘があり、さらには砂礫によりダムそのものも機能不全に陥っているとも言われている。
すでに南部は折からの集中豪雨で水浸しになっていて、中国中央気象台が6月24日に発表したところでは、6月に入ってすでに連続23日、暴雨警報を出しているという。
24日も広い範囲にわたって「暴雨イエローアラート」が発令されていた。
暴雨は貴州・広西・湖南・江西などで大規模洪水を引き起こし、さらに数日は集中豪雨が続くと予報されていた。
2020年6月25日、
三峡ダム上流の重慶市からマンションの4階以下の住人の避難勧告が出た。
なお、重慶の街は三峡ダム上流の山の上、川に囲まれた丘陵地に発展した「山城」(山の街)として作られた街である。
2020年6月28日、
長江上流に流れ込む烏江(うこう)・岷江(みんこう)・沱江(だこう)の流域ではこのところ強い雨が降っていて、三峡ダムへの流入量は午後2時には毎秒4万立方メートルと、27日午後2時の2倍となっている。
ツイッターには中国水利省長江水利委員会が午後4時に発行したと明記された指令が投稿された。
同指令によると、北京当局は6月28日20時から31,000立方メートル/秒の流量で放水し、29日8時から毎秒35000立方メートル/秒の流量で放流するように中国長江三峡グループ有限会社に指示したとのこと。
これは長江防汛抗旱総指揮部(洪水・干ばつ対策本部)が、同ダムの放流量を1日平均で毎秒3万5千立方メートルに調整するよう要求したからだ。
三峡ダム下流域はどうか?
下流域にある人口400万人の宜昌市も、市内全域が既に冠水しているにもかかわらず、6月28日夜間より無慈悲な大放水により更に悪化し、三峡ダムが決壊しないよう放水せざるを得なくなっている。
最近は中国全体の天象異常が甚だしいが、強い嵐や洪水などが国内の多くの地域を襲っている中、この日湖北省荊門市で竜巻が発生した。
竜巻が通るところ空は真っ暗になり、数十本の木が根こそぎ倒され、道路で吹き飛ばされた電線から煙が出たという。
また、竜巻でシェルターや道路標識などが倒され、大量の瓦礫が宙を舞い、近隣の住宅施設や車両に被害を与えたと言うが、公式発表によればあくまで死傷者は出ていないそうだ。
2020年6月29日、
この日になると中国北西部の新彊ウイグル自治区にある伊犁草原など一部地域で大雪が降った。
夏シーズンに大雪という異常気象だが、近年の中国ではよく起こっていて、今回の大雪でも新彊ウイグル自治区の牧場業界にとって大きな打撃をもたらすことが予想される。
大雪による交通困難などで飼料の準備に苦労する牧場主に、牛・羊・馬などの家畜が凍死や餓死すると言う、見るも無残なことが起こりうると容易に想像できるのだ。
さて、中国南部は6月から豪雨が続き、三峡ダム(Three Gorges Dam)は中国の長江中・上流域で降った強い雨の影響を受け、その水量は引き続き増加しているため注目されているが、新華社通信によると、長江の中上流での大雨の影響で三峡ダムへの入水量が増え続け洪水に繋がる恐れがあるとし、ある程度の貯水能力を高めるために三峡ダムは6月29日午前に二つの排水口を開き排水量を増やしたと発表した。
あくまで今回が今年初めての放水だと報じたのだ。
またこれに際し三峡発電所では、29日午前8時に発電ユニット34基をフル稼働させた為、総出力は2千万キロワットを超え上限に近い状態となっている。
なお6月29日時点で、既に中国26の省と地域で洪水が発生しており数千万人が影響を受け、長江(揚子江)上流の洪水により下流の宜昌市などでも大規模な洪水が既に発生しているが、中国水資源部は「6月28日から30日まで黄淮・江淮・江南・南西などの地域で依然として大雨が発生すると予測しており、その影響を受けて一部河川において上流で超警報級の洪水が発生する可能性があり、暴風雨地域のいくつかの中小河川で大洪水が発生する可能性がある」と各地に暴風雨警報を発令した。
現在までに警報を超える洪水は四川省・重慶省・広西省・広東省・安徽省・浙江省の河川で発生している。
四川省では多くの道路が遮断され橋が崩壊し人々が閉じ込められ、それと共に洪水により作物が被害を受けた。
湖北省宜昌市も大雨に見舞われ、宜昌市の上流にある三峡ダムの緊急放水が下流の宜昌市の洪水を引き起こしており、悲惨な状態となっている。
香港メディア「東方日報」6月25日の報道によると、中国政府はその前にもすでに三峡ダムが決壊しないように放水を行っていたようなのだ。
その結果、6月27日に三峡ダムの下流に位置する湖北省宜昌市全体が浸水されたという。
これは宜昌市浸水の責任を逃れようとして、中国政府が6月29日に初めて三峡ダムの放水を公言したのではないかと疑問視されている。
現在、長江の下流に位置する全ての都市(武漢、南京、上海を含む)は浸水されるリスクが高い。
2020年7月1日、
長江の上流域東部と中・下流域では現在も、北西部から南東部にかけて強い雨が降り続いている。
三峡ダムには7月上旬から中旬に、再び大量の水が流入する可能性がある。
2020年7月2日夕方、
江蘇省水利庁は長江の2020年第1号となる洪水が2日に上流で発生し、現在のところ長江の大通水文ステーションの流量が毎秒5万立方メートル以上に達し、今後もさらに増え続け、1日あたりの増え幅が毎秒1000立方メートル以上に達する見通しであることを明らかにした。
また下流の江蘇省では、警戒態勢を整えていると中国新聞網が伝えた。
江蘇省水利庁は、5日から7日にかけて江蘇省長江沿岸の水位が警戒域を超える可能性があるとの見通しを示した。
今後10日間、江蘇省全域で引き続き大雨が降るとみられ、全省の累計降水量は平年の同期より明らかに多くなっている。
今後の大雨に対し、江蘇省水利庁は水利調整を強化し、洪水災害防止をしっかりと行うとしている。
だが実は7月2日午前4時7分に、震源地は三峡ダムの上流に位置する四川省アバ・チベット族チャン族自治州若爾蓋県で震源深さ8キロ、マグニチュード3.2の地震が発生していました。
最近四川省では地震が頻発していて、三峡ダム決壊の危険性が高まっています。
なお、この地震に加え中国地震観測局によると、四川省で以下の地震が観測されました。
6月28日午前5時37分、
宜賓市長寧県でマグニチュード3.1、深さ11キロ。
6月30日午後1時55分、宜賓市珙県でマグニチュード3.7、深さ9キロ。
2020年7月、
さてこの時期、海外のメディアでも注目を集めていた世界最大級のダムである「三峡ダム」だが、このダムの制限水位は145mに設定されているのだが、それを約20mも上回る状況が続いている為、水圧によってダムの中央部が歪んでいるとの報道もあった。
これは6月から断続的に続く大雨で、中国の長江中流にある世界最大級の三峡ダムの水位が上昇しているからだ。
また記録的な豪雨による水害が広がる中国の長江流域では大雨により400以上の河川で洪水が起き支流河川が土砂崩れでせき止められて、周辺地域に氾濫する恐れが強まったことから、当局は警戒を強めて既に住民200万人以上が避難するなど被害が拡大している。
水利省の担当者はこれまで中国メディアに対し「長江全域の3万カ所で水位を定点観測している。
ダムの放水量は常に状況に応じて適切に調節しており、(三峡ダムを含む)長江全てのダムは安全に管理されている」と強調してきた。
だが一部メディアでは「大雨が続けばダムが決壊するのでは」との見方も出ている。
その中国メディアによると、水利省は21日「21~23日にかけて中国南西部などで大雨が降る可能性がある。長江および下流域の河川や湖などで水位が上昇する」などと警告したそうだ。
三峡ダムの水位の上昇もまた予断を許さない状況が続く。
気象局は今週に入ってからも大雨が続いているとして、引き続き警戒を呼びかける。
実は三峡ダムがある湖北省内では日本の自動車メーカーの拠点が集積している。
ホンダは2019年度に中国で生産した137万台のうち同省武漢市の工場で69万台と5割を占める。
同社は「今はまだ販売店含め現時点で影響が出たという情報はない」と説明するが、被害が出た場合、中国事業全体に与えるインパクトは大きい。
ブリヂストンも武漢市に自動車用シートパッドの工場を構えるが、22日午後時点で「現時点に於ては設備への影響や部品の物流網の停滞などはまだ起こっていない」としている。
いすゞ自動車も長江流域にあたる重慶市にトラックやエンジンの製造拠点を持つが影響はまだ出ていない。
マツダも長江流域にあたる南京市に完成車工場をもつが、これまでの豪雨などでも生産設備などに未だ影響は出ていない。
だが三峡ダムが天災等で崩壊したとすれば、貯水湖に蓄えられた393億立方メートルもの膨大な水が湖底に堆積する汚泥を伴って38キロメートル下流にある葛洲壩ダムを破壊し、一気呵成に湖北省の宜昌市(常住人口:414万人)から武漢市(同1120万人)へ流れ下り、さらに江西省の九江市(同492万人)から南京市(同851万人)を経て上海市(同2428万人)へと流れ込むことになる。
国営新華社通信が地元の治水当局の情報として報じたところによると、土砂崩れは21日に湖北省恩施の近くを流れる支流河川で起きた。
中国の気象局は22日、今週に入ってからも豪雨が起きており、全国的に河川氾濫のリスクが高まったとした。長江が流れる安徽省と江西省では警報が出され、水利省は21日、長江および流域にある湖の水位は今後も上昇すると警告した。
長江中流にある三峡ダムは下流域での河川氾濫のリスクを抑えるために貯水量を増やしたため、警戒水位を16メートル上回っており、同省の当局者らはダムの水位を注意深く見守る必要があると述べた。
6月から続く大雨の影響で、三峡ダムでは下流域で河川の氾濫などを避けるために貯水量を増やしていたのだ。
だが実は、同ダムの制限水位(145メートル)を上回る状況が6月中旬ごろから続いたため、6月末には今年初めて放水を実施していた。
その後も断続的に1秒あたり3万立方メートル程度の放水を続けてきたが、7月中旬には同2万立方メートル弱まで減らした。
大雨は続き、武漢市などの下流域では浸水や土砂崩れなどの水害が拡大し、三峡ダムの貯水量も再び上昇している。
国営新華社によると、18日の午前8時(日本時間同9時)の三峡ダムの入水量は1秒あたり6万1000立方メートルに達し、制限水位を15メートル超上回り貯水量は6月以降で最大を更新したが、22日午後4時時点でダムの水位は162.22メートルとなっている。
また、韓国メディアのなかには長江の下流にある原子力発電所での事故を危惧する報道も出てきている。
水位が過去最高に達している三峡ダムが崩壊すれば、想像を絶する大洪水が起き、原発事故を引き起こすのではないかというのだ。
それでも、中国の水利省は「ダムは安全に管理されている」と強調し、中国共産党系のメディア「環球時報」も「中国以外の国のダムがこれほど注目されることはない。
三峡ダムの形が歪んでいるなどの西側メディアの報道は「アンチ中国な考え方からくるものだ」「物理学の知識の欠如を露呈している」「フェイクニュースだ」と切り捨てている。
そして、専門家の「人々の良心はダムよりも簡単に歪むものだ。ダムはそんな噂よりはるかに強い(ただし「中国人の良心」などと言うものより僅かに強い程度に過ぎない)」というコメントで記事を結んでいる。
2020年7月21日、
湖北省の西部・恩施トゥチャ族ミャオ族自治州で大規模な山崩れが発生。土砂が長江の支流の清江になだれ込み、川をせき止めた“せき止め湖”が出来た。
清江はこれまで水位が上昇し、17日には自治州の中心部・恩施市に水が流れ込み街が冠水する大きな被害が出ていた。
山崩れ現場では川がせき止められて水位が上昇し、決壊の恐れもある。
決壊すればさらに大きな被害になるのは目に見えている。地元当局は、死傷者はいないとし、周辺の住民約8400人を緊急避難させた。
たまった水を流す措置をとってある程度、水を排出し、徹底監視を続けており、水位は下がり決壊の恐れは低くなっているとしている。
しかしSNSには、一帯では道路に大きなひびが入り、家屋が傾き、住民の目の前でがけ下に崩れて落ちる様子などが投稿されている。
さらなる土砂崩れが起きないとは限らない。水道も一時供給が出来なくなるなど住民の苦境は続いている
世界最大級の三峡ダムは、依然として高い水位が続く。
最高水位175mに対し、7月20日に164mまで迫った水位はいったん下がり始めた。
7月24日には159m台となり水の排出量が流入量を上回っている。
ただ、中国メディアによると、当局は、長江流域でさらに雨が降ると予想されるため、27日ごろにかけてダムへの水の流入量が再び増加し、第3の洪水ピークが来ると想定。
三峡ダムの水の排出量が引き続き増えるため、長江下流域の各地でさらに水位が上昇することになると警戒を呼び掛ける。
すでに被害が出ている地域でまた水位上昇が懸念されている。
ダムの水位上昇が伝えられ始めて以降、決壊しないか、など不安の声が絶えない。
ダムの運営当局は中国メディアに対し、「ダムの運営状況は安全で、変形するなどの問題は起きていないし脆弱ではない」と安全性を強調した。
中国のネット上でも、「三峡ダムがなかったら被害はもっと広がっていた。感謝しないといけない」「ダムは十分頑張ったから(責任者の共産党幹部達を)責めないで欲しい」という声がある。
ただ一方で、そもそも長江流域の洪水対策が大きな目的で建設された三峡ダムの治水効果に疑問の声があがる。
ネット上には「結局、洪水の時期にはダムを守るために大規模に放水し、下流域の被害を拡大させる」「あってもなくても同じだ。
作らないほうが良かった」などの批判が根強い。
中国共産党機関紙・人民日報は「これまでダムは107億立方メートルもの水をせき止めた」と効果を強調するが、長江やその支流、多くの巨大な湖などで警戒水位を超え、記録的な貯水量になっている現状がある。
ダムや水門を開き放水せざるを得ない状況で、家が冠水し避難する人が多数にのぼっている。
ある中国人は「そもそも洪水を防ぐために金をかけて多くの人に影響を与えて巨大ダムを造ったはずだが、これだけの被害が出ているのを見れば、三峡ダムは役立たずではないか?」と怒る。
2020年7月22日、
中国メディアは政府発表として6月からの被害状況を伝えた。
被災者が27の省や市などでのべ4552万3000人、死者行方不明者142人、倒壊家屋が約3万5000棟、経済損害は1160億5000万元(約1兆8000億円)にのぼるとしている。
記録的な被害は一層拡大しているが、同時に「直近5年の同期の平均値と比べると、被災が原因の死者・行方不明者の数は56.5%減、倒壊した家屋は72.4%減、経済損害は5%減」と、今回の被害がことさら大きいわけではないと強調するような言及をしている。
なお、ならば常からの共産党の対策自体が無策であったと言う事なのか、と言う疑問は持ってはいけないもよう。
話は変わるが、実は中国には現在10万基近いダムが建設されている。
つまり世界でもっとも多くのダムを保有しているわけで、「世界最大のダム王国」といっても過言ではない。
とはいえ、三峡ダムのような巨大なものは例外で、97%のダムは貯水容量が1000万立方メートル以下の小型ダムである。
揚子江に限らず、黄河や淮河などの支流にも数多くのダムが建造されている。
しかも、これらの小型ダムの大半は1950年代から70年代にかけて、人口増加に伴う農業生産を支える水利目的で建造されたもの、「大躍進」時代の産物にほかならない。
さらにいえば、当時のダム建造技術は低レベルであり、財政的な制約もあり、大部分のダムは土や石を積み上げただけの小規模なもので「寿命は50年」といわれており、すでにほとんどすべてが耐用年数をはるかに超えている。
要は5000基ほどのダムも、いつ決壊してもおかしくない状況にあるわけだ。
毛沢東主席による「自力更生」の掛け声で建造されたものだが、やはりすでに3500基のダムはこれまでの大雨で決壊してしまった。
旧ソ連の支援で1952年に完成した黄河上流のダムも1975年の洪水で決壊し、「人類史上最も悲惨なダム決壊事故」として記録されている。
数十万人の死者が出たが、当時はその事故は隠蔽され、その事実が明らかになったのは20年以上の月日がたってからのことだった。
こうした事態を受け、当然のことながら、中央政府はダム補修工事を進めているが、地方自治体レベルでは資金や人材不足もあり、危険除去や補強作業は後回しにされてきた。
実際、1998年には4000人以上が命を落とし、数百万人が住む家を失うという大洪水が発生した。
その原因は「森林の伐採」と「土壌の浸食」といわれたものだ。
そのため中国政府は、今更ながらも急遽揚子江上流での森林伐採を禁止し、再植林計画を発動することになった。
ダムが決壊すれば、農地は水没し、農作物の収穫はゼロになってしまう。
中国にとっては水との戦いは食料確保の戦いでもある。
そんな「水と食の戦い」の経験を活かし、中国はアフリカの国々にダム建造というインフラ整備を推進している。
しかし、自国内で発生する豪雨やダムの決壊という危機的状況に対して、十分な対応ができていないこともあり、アフリカ諸国からは中国によるダム援助プロジェクトに対して懸念する声が上がり始めた。
アメリカとの貿易戦争やコロナウイルスの発生源をめぐっての非難の応酬合戦が続く中国であるが、世界最大の水力発電ダムである三峡ダムが決壊の危機に瀕していることは看過できないだろう。
何しろ6月半ばの梅雨入り以降、中国の南部と西南部では、今日まで大雨と集中豪雨が続き、多くの河川が氾濫。
その結果、31ある省の内、26もの省で洪水が発生。被災者は3800万人を突破し、224万人近くが緊急避難を余儀なくされている。
経済的な損失は5000億円近いといわれ、中国最大の淡水湖である八陽湖(江西省)では水位が23メートルに上昇し、警戒水位の20メートルを軽く突破してしまった。
中国政府は人民解放軍の部隊10万人を投入し、人命救助や堤防増強工事に当たらせているが、焼け石に水といった状況のようだ。
そうしたなか、「揚子江中流に位置する三峡ダムが大量の雨水の圧力で決壊するのでは」との危惧が出てきたのである。
建設中から「汚職の巣窟」とまで揶揄されたダムであり、使用されたコンクリートや鉄骨なども不良品が多く、完成直後であるにもかかわらず随所に亀裂が確認されたほどだった。
ワイロが横行し、環境保全や下流域の安全対策はないがしろにされたのではないかとの批判が当時から渦巻いていた。
万が一、ダムが決壊すれば、約30億立方メートルの濁流が下流域を飲み込むことになる。
4億人から6億人もの被災者が出るとの予測もあるほどだ。安徽省、江西省、浙江省などの穀倉地帯は水没の危機に瀕する。
また河口には上海が位置するが、その都市機能は壊滅的な被害を受けることになるだろう。
上海に限らず、流域に位置する重慶や武漢などの経済、工業地帯には日本企業も多数進出しており、コロナ禍以上にサプライチェーンが寸断されることにもなりかねない。
と同時に、中国国内で問題視されるようになったのが、「ダムによる地震の誘発現象」である。
これまでもダム建設による環境破壊が懸念されてきたが、しかし、2008年に発生した四川大地震によって10万人近い犠牲者が出たことをきっかけに、中国の科学者たちが調査を進めた結果、「大地震の原因は四川省内の活断層の近くに新設されたダム」との結論に至ったからである。
大型ダムの貯水による重みが地殻に深刻な圧力をかけたことが原因と見なされ、専門家の間では「ダム誘発地震」と呼ばれるようになった。
さらに深刻な懸念は、揚子江流域に存在する原子力発電所への影響であろう。
放射能汚染の恐れは福島原発事故の比ではない。
こうしたリスクを抱えた三峡ダムを決壊させないで済むにはどうすればいいのか。
現在、ダムの上流でも下流でも洪水が発生しているため、ダムを放水すれば下流域の洪水は拡大してしまうが、かといって、放水しなければダムの決壊は秒読み段階に入る。
中国は究極ともいえる苦渋の選択を迫られているといっても過言ではない。
2020年7月28日、
中国国家水害干ばつ対策総指揮部は17日間連続して水位が上昇している長江と淮河の水害警戒レベルを、それまでの「3」から「2」に引き上げた。
中流と下流で長江に流れ込む支流と、2つの湖の水位が警戒レベルを超えたため、対応レベルの引き上げとなった。
また、長江と黄河に次ぐ中国第3の大河である淮河の王家ハ水門から下流全域で洪水が発生したことも、対応レベル引き上げの要因となっているとみられる。
江蘇省南部と浙江省北部に広がる太湖では、28日になって水位が下がり始めたが、湖南省を流れる82の河川の水位は依然として警戒水位を超えている。
このため、総指揮部は長江と淮河、太湖の堤防と水門の24時間警戒態勢を指示した。
中国のネットでこんなジョークが流行した。
「日本のNHKは九州の豪雨被害をずっと報じていたけど、わがCCTVの方がもっと九州の豪雨被害をずっと報じていたよ!」
九州の豪雨被害は中国中央電視台(CCTV)で確かに大きく報じられた。
もちろん、ほぼ同時期に発生した中国南部の洪水被害も報じられたが、九州豪雨を心配する中国人ネットユーザーのほうが多かったが、それはなぜか、中国人は自分たちには無関心なのか、いやそうではない……原因は中国の災害報道方法にある。
日本メディアは災害を報道するとき、被災状況の深刻さや被災者の大変さを詳しく報じる。
だが、中国メディアはそうではない。
奴らはまず、指導者が被害をどれほど重視し、何の指示を出したか、ということを報じる。
次に中国は優れた技術と必勝の自信を持っているから心配不要という専門家の発言、最後は被災者の「政府に感謝する」という声──中国語で言う「正能量満満」(ポジティブエネルギーがいっぱい)なのだ。
例えば今回の長江流域の洪水被害に関連して、台湾をはじめとした世界のメディアは三峡ダムに決壊の恐れがあるという悲観的な報道を続けているが、これに対してCCTVは専門家の話を引用しつつあくまで「安全だという」と言う楽観報道のみを繰り返している。
また、江西省にある湖と周辺水域の警戒レベルが「赤色」に上がると、政府は都市部を守ろうと湖の堤防を決壊させ、洪水を水田へ放流する指令を出したが、中国メディアはこれに対し「湖の堤防を主動的に決壊! 都市の安全を守るため、数十万の農地は犠牲になるよりほかはない」という記事を出したが、犠牲を強いられた農民はどうなるのか、記事では一言も触れられてない。
日本のある中国研究者によれば、「中国は主流しかない歪な社会だ、都市を守るため農村を犠牲にする、首都を守るため他都市を犠牲にする、指導者を守るため人民を犠牲にする......。」と語る。
なので今回の洪水で都市の住宅地が水浸しになった写真がネットでシェアされ、「美しい風景だ!」「海だ!」という心ないコメントが付いた。
正能量ばかりの主流社会で、人々の同情心が「ポジティブエネルギー」で水浸しになっているからだろう。
【ポイント】
『正能量』英心理学者が著書に書いた「Positive Energy」という言葉を中国政府が採用し、政府の不正などマイナス情報でなく、政府の功績やいい話を強調するキャンペーンが2013年に始まった。
▼学者らによる見解:
●王維洛博士は「三峡ダムに問題が発生した場合、その結果は悲惨なものになる」と述べた。
また彼は「以前三峡ダムの模擬分析に関するビデオによると、真っ先に影響を受けるのが宜昌市で、次が岳陽市と武漢市、最後が上海市で、これらすべて中国経済の中で最も発展しているところだ」という。
「北京? あれは悪の巣窟・伏魔殿だろ。」
●中国の教育家である聶聖哲教授と北京大学の賀衛方教授がウィーチャットで現在の三峡ダム問題がすでにかなり深刻であることを話した。
賀衛方教授は「聶教授、今は本当にもっと多くの人々が発言すべきだ。おそらく政府の人々もそう思うだろう」と言った。
聶聖哲教授は「四川大学の水力発電学科のほとんどの卒業生が三峡ダムに勤めているが、彼らはもう何をすべきかわからないと言っていた。爆発させるにしても、取り壊すにしても手のつけようがなく、メンテナンスもどうしたらいいか途方に暮れている。非常に緊急な事態だ。毎日パニック状態にある。」と返信した。
まるで中国そのものを体現しているようだ。
●中国の有名な専門家である黄小坤によると言われている警告を2020年6月17日多くのネットユーザーがツイートした。「宜昌市の下流に住む人々は早く逃げろ、これは最後の警告だ!」と。
ツイートの先頭に「【拡散希望】」が追加されていたのであろうか?
●ドイツに住む三峡ダムに詳しい有名な専門家王維洛博士が、2020年6月18日に大紀元時報のインタビューを受けた際「黄小坤が三峡ダムの下流に住む人は逃げるように提案したが、どこへ逃げるのだ。長江の下流は中国の人口密集地域であり、逃げ場がないのだ」と話した。
「中国人民は電子レンジに入れられたダイナマイトだ!! 共産党と言う閉鎖空間の中で分解されるがいい!!」
●三峡ダムに詳しい中国人の水利専門家、王維洛氏は「峡谷(三峡)が形成されたのは、この地域の地盤が弱いからだ」と述べ、同地域の住民も土砂災害に見舞われるリスクが大きいとの見方を示した。
王氏が得た情報では、中国国内9万8000基のダムの4割が「安全ではない」という。
……うん、知ってた。
●中国の水利専門家で清華大学の水利教授であった故・黄万里氏は、1992年から1993年にかけて3回にわたって江澤民に手紙を出し、三峡プロジェクトの建設に反対した。
そして「ダムは10年もたない」と遺言した黄氏は三峡ダムがもたらす12種類の壊滅的な結果を予測した。
○三峡ダムの12種類の危険要素:
一、より低い長江の主な堤防の崩壊。
二、航海の妨害。
三、移住問題。
四、土壌汚染問題。
五、水質悪化。
六、発電不足。
七、気象異常。
八、頻発する地震。
九、住血吸虫症の蔓延。
十、生態系の悪化。
十一、上流の深刻な洪水。
十二、最終的には三峡ダムを爆発させざるをえない。
なお中国ではあらゆるものが爆発する、ありえないものまで爆発する、いやむしろ「中国で爆発しないのは爆弾だけ」とも云われていた。
そう、中国における物体の爆発性は予測不可能であり、これぞ人呼んで「チャイナボカン」なのである。
▼中国公式メディアの今までの報道:
中国のネットユーザーは三峡ダムの品質と洪水防御能力に関する中国公式メディアの今までの報道を掘り出し、三峡ダムの洪水防御に対する自信が「この上なく堅固である 」から「期待できない」に変わったと感慨した。
一部の中国ネットユーザーは、中国公式メディアの2003年から2010年の間に、三峡ダムの洪水防止能力についての報道を掘り出して「中国共産党よりもっと恥知らずな政権はあるのか?」「三峡ダムはますますあてにならない」「これは時代と共に発展するという中国の特色か」とあざけた。
他の多くのネットユーザーが「ファイアウォールを作れた時点で、すでに自棄したのだ」「低知能ジョークだ」「武漢肺炎の死亡者数などのように、中国の公式の話ではいつも100倍をかけるか100倍で割るかのどっちかで偽りばかりだ」と書き込んだ。
「ダムは中国政府が作ったものだが、国民にいつでも避難できるようにしておくことを求めている。問題は人工洪水の場合、避けられるか?大勢の命のために、もうこれ以上悪事をしないでほしい」と言う人もいた。
2003年、
新華通信は三峡ダムを報道したとき「三峡ダムはこの上もなく堅固で、万年に一度の洪水を防げる」という見出しで、ダムの品質が完璧だと強く宣伝し、さらに三峡ダムの工事合格率は100%であると強調した。
2007年、
新華通信は「三峡ダムは今年から千年に一度の洪水を防げる」いう見出しで、三峡ダムは千年に一度の洪水を防げると強調した。
2008年、
新華通信は「三峡ダムは百年に一度の大洪水を防げる」という見出しの文を出した。
三峡ダムの建設は非常に重要なマイルストーンであり、百年に一度の大洪水を防げると口調を改めた。
2010年、
「CCTV」は長江水利委員の蔡其華主任の言葉を引用して「すべての希望を三峡ダムに託すことはできない」と強調した。
だが、三峡ダムの洪水防止基準の変更について「人民日報」は、三峡ダムの水利中枢梯級管理通信センター副主任の趙雲発の言葉を引用して「三峡ダムの洪水防止基準は変わっていない。
ダムの『設計基準』は千年に一度の洪水を防ぐことができる」と言い訳したが、後に実際には三峡ダムの工事は設計の基準に達していないと認めた。
▼総括:
三峡ダムは、中国政府が「百年の大計」として鳴り物入りで建設した世界最大規模を誇るダムである。
四川省重慶市から湖北省宜昌市まで長江の中流域においても、とくに水流が激しい「三峡」と呼ばれる場所にわずか16年の歳月をかけて建設され、竣工したのは2009年だ。
だが最近、中国では豪雨が多発しており、中国南部では大規模な洪水が多発しており、148の河川が警戒レベルを超えた。
こうした中、長江中流にある三峡ダムは変形という深刻な問題を抱えていると言う。
三峡ダムの水位が上昇し続けているのだ。
洪水防止の制限を超え、危険水位を2メートル近く超えたことがダム崩壊の可能性を高めた。
既に中国24の省と地域が連日のように洪水に見舞われ、約850万人が被災している。
また三峡ダムに詳しい専門家である王維洛博士は、以前三峡ダムは金城鉄壁(きんじょうてっぺき)ではなく動いていることを明らかにした。
もし崩壊した場合、その下にある宜昌(イーチャン)市の70万人の命が奪われるだろうと。
さらに黄万里研究基金会の司会者である黄小路氏は、三峡ダムが破滅的な特大災難を招く恐れがあると警告している。
2008年5月に発生した四川大地震はマグニチュード7.9を記録し、甚大な被害をもたらした。
震源地近くでは地表に7メートルの段差が現れ、破壊力は阪神・淡路大震災の約30倍であった。
これに対し専門家は、四川盆地の北西の端にかかる約300キロにわたる龍門山断層帯の一部がずれたために起きたと分析し、これによって地質変動が起こり、龍門山断層帯は新たな活動期に入ったと指摘している。
今後、さらに大規模な地震が発生する可能性が高いのである。
四川盆地はもともと標高5000メートル級の山々がつらなるチベット高原から急勾配で下った場所に位置する標高500メートル程度の盆地で、ユーラシア・プレートと揚子江プレートの境界線の上にあり、大小さまざまな断層帯が複雑に入り組む地震の多発地帯である。
それに加えて、最近の中国の研究では、地震発生の原因のひとつは「三峡ダム」の巨大な水圧ではないかとの指摘がある。
ダムの貯水池にためた水の重圧と、地面から地下に沁みこんだ水が断層に達することで潤滑剤となり、断層がずれやすくなったという分析である。
そもそも、建設中から数々の難題が生じていた。
まず「汚職の温床」と化し総工費2000億元のうち34億元が汚職や賄賂に消え、さらに国民の多大な犠牲も強いた。
はじめに地域住民約110万人が立ち退きを迫られ、強制的に荒地へ移住させられて貧困化し、10万人が流民になったのだ。
また李白・杜甫・白楽天などの詩に歌われた1000カ所以上もの文化財と美しい景観が水没し、魚類の生態系が破壊され、希少動物の河イルカ(ヨウコウイルカ)が絶滅したことは、中国内外で議論の的になった。
そればかりではなく四川大地震が発生した同じ2008年、竣工を目前に控えた三峡ダムで試験的に貯水が開始されると、下流域でがけ崩れと地滑りが頻発しだした。
この年の9月までに発生したがけ崩れと地滑りは、合計32カ所・総距離33キロに達し、崩れた土砂の量は約2億立方メートルにのぼった。
その後の調査で、地盤の変形などが合計5286カ所見つかり、大きなひずみが生じていることが判明し、ダムの構造物や防水壁にも約1万カ所の亀裂が見つかり、補修に奔走した。
そして2009年三峡ダムが完成すると、今度はナイル川に出現したダム湖_ナセル湖のように局地的な気象の変化も発生し、周辺で気候不順が起き始めた。
これは貯水池に貯めた膨大な量の水が蒸発・大気中にとどまった為に、濃霧・長雨・豪雨などが発生するようになったのだ。
気候不順は年々激しくなり、2013年までに南雪災害・西南干ばつなどの災害が相次いで2016年にも豪雨による洪水が発生。
これはエルニーニョ現象が原因だとされたが、死者・行方不明者は128人にのぼり、中下流域で130万人が避難を余儀なくされた。
さらに大地震が次々に起き2008年の四川大地震以外にも、汶川大地震・青海省大地震など、毎年のように大小の地震が発生した。
2014年には、三峡ダムから約30キロ上流にある湖北省でマグニチュード4.7の地震が連続して2度起きている。
総じてみれば、人工物である三峡ダムが天気や地震にまで影響を及ぼすとは、一見まるで信じられないような話ではある。
水が流れず・貯水できず・その解決策も見いだせない。
だが、三峡ダム本体にとってさらに深刻な事態ももちあがっている。
長江上流から怒涛のように押し寄せる大量の砂礫で貯水池が埋まりダムがほぼ機能不全に陥り、危機的状況にあることだが、さらにアオコが発生してヘドロ状態になって雑草や発泡スチロールなどのゴミと一体になり、ダムの水門を詰まらせてもいるのだ。
ゴミの堆積物は5万平方メートル、高さ60センチに達し、水面にたまったゴミの上を歩ける場所があるほどだという。地元では環境団体などが毎日3000トンのゴミを掻き出しているが、お手上げ状態だとされる。
重慶市でも、押し寄せる砂礫で長江の水深が浅くなった。
水底から取り除いた砂礫は50メートルも積みあがり、重慶大橋付近の川幅はもともと420メートルあったのだが橋脚が砂礫に埋もれて砂州となり、今では川幅が約半分の240メートルに狭まって大型船舶の航行にも著しい支障をきたしている。
水が流れず、貯水できないダムなど何の役にも立たないが、三峡ダムが周囲に及ぼす悪影響はこの先増えることはあっても減ることはないだろう。
中国政府も技術者も根本的な解決策を見いだせず、すでに匙を投げてしまっているからだ。
こうして誰も責任を取ろうとする者がいないまま、今も三峡ダムは放置されている。
もし本当に三峡ダムが地震の原因のひとつであるなら、今後さらに四川大地震のような大規模な地震が起きる可能性があるだろう。
そして大地震が発生したとき、原因を作った今の「瀕死」の三峡ダムで果たして持ち堪えられるのだろうか?
万一ダムが決壊するようなことがあれば、長江流域の広大な土地が洪水に見舞われ、穀倉地帯も壊滅し数千万人の犠牲者も出るだろう。
さらに長江の河口部にある上海では都市機能が完全に麻痺どころか工業地帯は壊滅し、またその周囲は水だらけだと言うのに生き残った市民の飲料可能な飲み水すら枯渇してしまう。
三峡ダムが建設された当初、中国政府は「千年はもつ」と豪語したが、数々の難題が発覚してわずか数年で「百年もつ」とトーンダウンし、今日巷では「10年もつのか」と危ぶむ声すらある。
なお、この「10年」と区切っているのはかつて三峡ダムの建設に反対した著名な水利学者で清華大学の故・黄万里教授の言葉に由来しているからである。
戦前アメリカのイリノイ大学で博士号を取得した黄教授は、建国間もない中国で黄河ダム建設の計画が進められたときに強く反対し、毛沢東から「右派」の烙印を押されて22年間の強制労働に追われたと言う。
1980年代に名誉回復した後も、長江の三峡ダム建設が国家の議題にのぼると中国政府に6度も上申書を提出して反対したが、鄧小平と李鵬首相(当時)に無視された。
黄教授が反対した理由は21世紀の今日、私たちが直面している危機的状況を言い当てたからにほかならない。
この時「もしダムを強硬に建設したら、10年もたないだろう」と警告したのだ。
2001年8月、黄教授は病床で家族に向かって三峡ダムを見守りつづけるようにと告げ「どうにも立ち行かなくなったら、破壊するより方法はない」と遺言を残した。
享年90。中国の「水利事業の良心」と称えられる伝説的な人物である。
もし「10年もたない」とすればその期限は2019年だが、それ故三峡ダムは何時決壊するかもしれないのだ。
破滅のタイムリミットは刻一刻と近づきつつある。
唯一の解決策は黄教授の遺言通り、人間の手であんぜんに破壊することだけなのだろう。
- 中国の政治思想 -
「易姓革命」
易姓とは、ある姓の天子が別の姓の天子にとって代わられることで、革命とは、天命があらたまり代わって、王朝が交替すること。
つまり、中国には、天が命を下して徳のある者を天子となし人民を治めさせ、徳が衰えたりなくなって人民の信頼がなくなれば、天変地異などをおこしその天子や王朝を去らせ、新しい有徳者に王朝を開かせ人民を支配させるという政治思想がある。
「天人相関説」
これは簡単に言うと、その時の中国の為政者=皇帝が悪政を行うと数々の天変地異・・・火災・水害・日照り・冷害などが起き、逆に善政を行えばさまざまな良い事が起きるという思想です。
西洋で生まれた自然科学的根拠はありませんが、この思想は東アジアの地域に今でも根ざしています。
つまり現在の状況は……
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