第47話 現実:技術-設備-古代の天然クーラー 「採風塔(バードギール)」
古代エジプトでは「マルカフ」、ペルシャでは「バードギール」と呼ばれ、現在では中東各地に見られる。
▼バードギール:採風塔
(ペルシア語、バードは「風」、ギールは「捕まえるもの」の意、日本では採風塔とも呼ばれる)は、天然の風を利用したクーラーであり、自然換気の為に伝統的にペルシャ建築で建築されている風を採り入れる塔である。
パッシブクーリング技術:
風採り塔(バードギール、マルカフとも言う)は、風の流れを使って空気を取り込んだり気温勾配を利用して室内の温度を下げる、クーラーの機能を持つ冷却塔。
乾燥した地域では非常に効果的で、日中と夜間の気温差が激しいイラン中央部では、貯めている水の温度が零度近くなることもある。
小さいタイプのものはおもに屋内の風通しを良くする換気装置として使われる。
・地域:
バードギールが普及しているイランの中心部地域は、砂漠であり空気中に水分がないため、乾燥した気候で昼と夜の間に大きな温度差が生じます。
したがって、空気は新鮮なものから夏には非常に暑いものまで、相対湿度は非常に低いものです。
・都市:
都市は、水の供給を確保するために、砂漠のオアシスの近くまたはその周辺に位置しています。
また、太陽熱の吸収を最小限に抑えるために狭い通り、高い壁、石灰で白っぽくなっています。
建物や家屋には、夏の暑い夜に住む人々が寝る深いパティオやテラスがある。
日中、人々は内装の色合いにグループ分けされています。
日光の熱は、日焼け防止の役割を果たす厚い木製の格子で保護された小さな窓を使用することで、最小限に抑えられます。
・建築物:
ほとんどの建物は断熱材と熱量を提供する非常に厚いアーチ状または断熱性の高い厚いレンガ(セラミック)の壁でできています。
直射日光の熱、遮る物が無い砂漠からの砂や強風を避ける為、窓は太陽から遠い場所に小さくしか作られない。
パキスタンの風窓などは板とセメントで作られた簡単な構造である。
ほこりの多い日や寒い日には風を受ける面を閉じることができる。
この受動的な設計戦略では、日中と夜間の大きな変動を吸収して、湿気の多い快適さに近い平均気温を探して知覚できなくすることができます。
一方、壁の厚さが厚いため、日中の熱を蓄積して、外気温度が快適レベルを下回る夜に向かって熱波を移動させることができます。
・採風塔(バードギール):
煙突のようなデザインの風取りの塔は、土地土地の特性に合わせ、風の取り入れ口が一方向にのみ向いているものから、複数方向に向いているものまで様々である。
これは上空の涼風を取り込んで、貯水槽や家屋を冷やす仕組みであり、この仕組みは古代エジプト建築にも用いられたほか、多くの国に存在し続けており、ペルシャ湾岸のアラブ諸国(主にイランのヤズド地方、バーレーンとドバイ)、パキスタン、アフガニスタンを含む中東の伝統的なペルシア人の影響を受けた建築に見られる。
・イワーン:夏期の半屋外居住空間
イランのバードギールは細長い通気孔が並んだ塔状の設備で、ダクトを通じて上空の涼しい風を家の中に取り込むために外部風を導く構造となっている。
典型的なイラン住宅では、直射日光が当たらず暑さをしのげるため夏期に居住空間として利用されるイワーンと呼ばれる半屋外空間の上部に設置される。
・単一風向型と多風向型:
バードギールは1つ、4つ、または8つの開口部を持つ傾向があります。
バードギールは単一風向型と多風向型の2種類に分類され、海風などで一方からのみ風が吹く傾向がある場所では、単一風向型のバードギールが建てられる。
これに対し多風向型は4方向に開口部があり、あらゆる方向からの風に対応でき、単一風向型と異なる点に、吸気と同時に排気が行える特徴がある。
・シシュカン:小さな採風塔
小さなバードギールは、伝統的なペルシアの建築ではシシュカンと呼ばれている。
シシュカンは、今でもガズヴィーン等のイランの北部の都市で、アーブ・アンバールの上に見ることができる。
これらは、イランの中央砂漠で見られような空調設備というより換気装置として設置されている。
・アーブ・アンバール:伝統的な貯水施設
水需要が下がる夜間などにカナートを流れる水を無駄にしないよう屋内に貯水槽が設けられ、夏季の間も凍結温度近くで水を貯めることができる。
バードギールはこのアーブ・アンバールと呼ばれる伝統的な貯水施設と共に設置され、貯水施設内の気圧の圧力勾配と蒸発冷却効果で水の温度を下げ、水が清潔な状態で保存されるようにしている。
アーブ・ アンバールは水の蒸発を防ぐため地上あるいは地下に造られ、
日干し煉瓦の丸いドーム状の天井を貯水槽の上に架けたものが多い。
アーブ・アンバールの中には、貯水槽全体が地下に埋設されたものもある。
・バードギールとカナート(地下水路)による冷却:
バードギールとカナートの組み合わせは、煙突のような風取りの塔で上空の涼風を取り込んで、貯水槽や家屋を冷やす仕組みである。
バードギールで取り込まれた涼風をカナートに流し込みカナートから直接流れ込む水が貯えられた貯水施設やカナート内部で更に冷却させた冷たい空気が建物に入り、代わりに乾いた暑い外気を置き換えて空気流を発生させるのだ。
このような水の引き込みや上空の風の採り込みは、灼熱し乾燥した砂漠の厳しい気候の中で、たくみに環境に適応したペルシア建築の環境共生技術に他ならない。
・古代エジプトでの利用
バードギールは伝統的な古代エジプトの建築に使われていました。
紀元前 約1300年のエジプト第19王朝ファラオ家NebAmunの墓の絵画にも
バードギールと古代エジプト住居が描かれています(英国博物館)。(なお現代のエジプトでは、malqafや複数形でmalaaqefと呼ばれている。)
・近年の活用
2005年に村上周三らによって行われたヤズド地方での実測とコンピュータによるシミュレーションによれば、バードギールの採涼効果によって標準新有効温度(SET*)で約2℃の低下が見られた。
実際にアルミニウムの採用など新技術が盛り込まれ、ユタ州ザイオン国立公園のビジターセンターなど建築への活用がなされている。
近代建築のベンチレーターは負圧によって外気を誘引し外部に排気する仕組みだが、バードギールは正圧によって風を屋内に取り込む仕組みとなっており、両者の力学的メカニズムは異なるものである。
・日本家屋の自然冷房システム:
では、日本古来の家屋様式にも目を向けてみましょう。
木造建築の居間は、障子戸で仕切られた廊下を挟んで、南向きに縁側があります。
庭には大きな落葉樹が植えられ、その先庭全体が生垣で覆われています。
夏の熱い日差しは落葉樹でさえぎられ、生垣の外から入る熱風はその葉っぱで行われる光合成で葉内では糖(グルコース)を作るほかに、葉の表面で酸素と水を放出します。
その水分が葉から気化する際に熱風の熱が奪われ、そよ風となって縁側にそよぎます。
これが日本家屋の自然冷房システムです。
★現代の「採風塔(バードギール)」、「ウインドタワー」
・砂漠のなかに生まれた近未来都市「マスダールシティ」
アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビへの玄関口であるアブダビ国際空港からすぐの、砂漠のど真ん中で建設が進むスマートシティ。
マスダールとはアラビア語で「源泉」を意味する言葉。
アブダビといえば最高気温が50℃、通常でも40℃を超える都市ですが、
この砂漠の地で、資源をフル活用してサステナブルな社会をつくるという計画があるのです。
2010年9月にはマスダールシティの第1期プロジェクトであるマスダール科学技術研究所(以下、MIST)
の6棟が完成。
ここには学生向けの居住ビルや、本部となるナレッジセンター(図書館)と研究所があり、各ビルの屋根には太陽光発電パネルと太陽熱温水器が設置され、施設内で使用するほとんどの温水と30~35%の電力を供給しています。
そして、MISTの中庭にそびえる「ウインドタワー」。
このタワーの上から風を取り込むことによって、MIST内の温度を平均で6℃も下げることができます。
このタワーのもう一つ重要な役目は、居住ビルの消費電力量を見える化するシンボルとなっていることです。
四隅にはLED照明が設置されており、省エネ目標(アブダビの一般家庭の平均より50%以上省エネ)を達成した場合は緑色、未達成の場合には赤色に点灯して居住者の省エネ活動を推進する仕掛けも施されています。
とんだデストピアもあったものです。
また、MISTのビルにはウインドタワーと同じ原理で、風が通りやすい流線形を中心とした建築を組み込んだり、太陽光を遮断しながら光が取り入れられるように外壁や開口部を設計するなど、単に再生可能エネルギーを生み出してそれを使うだけでなく、
より自然の力を活用する工夫もされているのです。
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