第48話 現実:技術-設備-古代の冷蔵庫 ペルシャの氷室「氷穴:ヤフチャール」
イランの中央部にあるヤズド州の北にあるメイボドという町には、大きなヤフチャールがある。
円錐形の建物の内部は地面にすり鉢状の穴が穿たれており、ここに冬の間に屋外で作った氷を蓄える。
カナート発祥の地イランは自然の水や風を生かし、気候や風土の特性を生かした社会を形成している。
かつてカナートを建造することが出来る人間は一代だけではなく以後五代に渡って税金が免除されたと言う。
そしてカナートに加え、地表や地下の貯水槽、風採りの塔や氷室など、
自然の力を生かした一連の地域固有の環境共生技術を持ち、 現代風に言えば、さながら「エコシティ」を実践している。
古代イランの環境共生技術は、冷房・暖房と多大なエネルギ ーを消費しながら環境を制御しようとしている現代の技術文明のあり方を顧みる良いチャンスを与えてくれる。
食品を冷却して長く保存するために氷を用いることは先史時代にまでさかのぼる。
中国、古代ギリシア、古代ローマなど、多くの文化で寒い季節に雪や氷を調達して洞窟などにわらかそのほかの断熱材を使って保存しておく習慣があった。
氷を使用することにより暑い季節でも食品を保存することができるようになり、この慣習は長く続けられた。
★冷凍・冷却の歴史:
冷凍・冷却技術は食品の保存・暑さ対策など、人の生活に不可欠であり、加熱技術とともに文明の基幹をなす技術である。
人為的な製氷技術がなかった古代では、天然氷(雪)の利用、あるいは、現在の冷凍技術の原型とも言える素焼きの壺に水を入れる気化熱での冷却は古代からエジプト・インドで使用されていたことが知られている。
エジプト人も上流階級のために水を冷やして氷を作る技術持っていたが東部ユーラシアの古代人達も、2000年以上前の戦国時代には冷蔵庫を使い始めたと言われている。(冷蔵庫(紀元前475年)や、エアコン(西暦618年))青銅製や黄色のカリンの木で作られた製品、また室内用から外出用まで何でも揃っていた。
一部の精巧な製造技術は、現代人でも模倣できないという。
1978年には、湖北省随県で戦国時期の曽侯乙の墓から2つの箱が出土した。
天然氷の利用は中国では周(AC1046年頃 – AC256年)のこの遺跡から凌陰(氷室)や冷蔵用の容器である氷鑑が多数発見されており、周代には広く普及していたことがうかがえる。
夏には氷、冬には湯を入れ、飲みものやお酒を飲みやすい温度に保つ。
中国最古の詩集「詩経」には、「奴隷たちが冬に採氷して貯蔵し、貴族らが夏に飲むよう取り計らっていた」との記載がある。
また、古代の経書「周礼」には、
「祭祀には氷箱を共にする」との記録もある。
明らかに、周の時代にはすでに原始的な冷蔵庫があったことが分かる。
氷は一年中あるものではなく、特に暑い夏場は貴重品だった。
▼ヤフチャール:ペルシア(イラン)の伝統的な氷室(Yakhchal:氷穴)
ペルシア(イラン)ではカナートや採風塔に加え、紀元前400年頃まで、ペルシャ人の技術者達は冬場に水を凍らせ氷を造り、そしてこれを保管して夏の暑い季節に利用する為に、砂漠に氷を貯蔵するヤフチャールと呼ばれる氷室を使用する技術を習得しました。
冬に屋外に水を張って作った氷や積もった雪を集めて保存しておくための施設で古代の蒸発冷却器です。
信じられないかもしれませんが、実際に電力を使用した冷蔵庫が生まれる以前の時代、聖書にも「砂漠で一度に氷を作ることができた」と述べられています。
この建造物はヤフチャールと呼ばれているが、現代のイラン、アフガニスタン、タジキスタンでは、ヤフチャールという用語はペルシャ語で現代の現代の家庭用(および商業用)冷蔵庫を指すのに使われています。
なお、もともとの意味はヤフ・氷、チャール・穴または窪みを組み合わせた言葉で、即ち地中深く穴を掘って氷を保存する場所を指します。
外から全体の構造を見ると、日干し煉瓦を円錐形のドームのように積み上げ、その頂点に穴が空けられていて、外側には藁の混じった土が塗られています。
中に入ってみると壁の内側にはモルタルが塗られています。
モルタルが塗られていることで、夏の間は外の熱風を遮断し、また全体の形状が円錐形になっていることから、内部の冷たい空気が動かないよう滞留させたままにしておくことができる。
実際に氷を入れる大きな窪みは、深さ7、8メートルほど。
砂漠地帯では、夏と冬の寒暖の差が大きいことから、冬のうちに貯水槽に水を張って氷を作り、これを氷室に運び込んで保管し、夏の暑い時期にその氷を利用していたのです。
これも、砂漠ならではの生活の知恵といえるでしょう。
古代の冷蔵庫は暑く乾燥したイランの気候の中、ヤフチャールで作られ貯蔵された氷は、特に暑い夏の日の間に氷を貯蔵するために用いられた他、食べ物の保存・おやつを冷やすなど、食材の保管庫としても利用されていました。
また氷は夏の間特権階級が食べる伝統的なペルシャの氷菓子である「ファールーデ」を作るなどの様々な目的のために一年中使われます。
▼冷蔵庫兼、冷凍庫:
冬の間に近くの山から自然に形成された氷が持ち込まれる可能性がありますが、ほとんどのヤフチャールでは、氷はその年の冬の寒い季節にそれ自身によって作られます。
これらの構造物で砂漠でも水を凍らせることができる程、冬の砂漠の夜の放射冷却は氷を作るには十分だった。
砂漠地方では夏と冬、また昼夜の寒暖差が大変大きく、この寒暖差を上手く利用して、冬の間に冷えた水をカナート(イランの水道橋)からヤフチャールの中に運び入れその貯水槽に水を張ると、水が貯まっている地下の底まで中央の穴から吹き込む冷たい空気が入り込むので、そのため水が中に貯蔵されると、構造物が作る極度に低い温度により凍結することができます。
こうして建造物の中で凍らせて氷を作ったり、あるいはヤフチャールに運びこんだ氷を貯蔵し、酷暑の夏にここから取り出して使用しました。
砂漠では昼はすごい猛暑になるが、夜は冷え込む。
極端な例では、アメリカのデスバレーで昼夜の温度差が41℃という記録もある。
砂漠で昼夜の温度差が大きい原因のひとつに、太陽の光を遮るものが何もないことが挙げられる。
いつも地面が露出していて、昼は太陽が地面を強く熱し暑くなる。
夜は地表から逃げていく熱を遮るものが何もなく、地面の熱はどんどん奪われて気温が下がってしまう。
原因のもうひとつは水分がないこと。
砂漠は乾燥していて地表にも空気にも水分がほとんどない。
水は空気に比べて熱しにくく、冷めにくい性質を持ち、水分があれば、昼に太陽熱をゆっくり吸収し、夜にその熱をゆっくり放出する。
豊富な水があれば、寒暖の差は小さくなる。
砂漠のように水分がないと、熱しやすく冷めやすい性質になり、温度差も大きくなるのである。
氷は中の深さ7〜8mはあろうか大きなすり鉢状のプールに氷を貯蔵するのですが、上を見上げると円錐状のドームの先っぽは穴が空いています。
壁面を円錐状にする事により空気を滞留させ、冷気を逃さないようにしているのだ。
また、氷を貯蔵するプールも円錐状のドームの壁面も砂、粘土、卵白、石灰、山羊の毛、灰分を特定の割合で含むsaroojと呼ばれる特殊な耐水性モルタルで仕上げられおり、それは熱伝達に強く、夏場の熱の遮断効果や防水効果があり、完全に水を通さないと考えられています。
この材料は一年中効果的な断熱材として機能し、その壁は基部で少なくとも2メートルの厚さがあります。
またドームの南側には直射日光を防ぐために影を作るべく、東西に長く高い壁が築かれています。
冬になるとカナートの水は壁の影が水をより速く凍らせるために水を冷たく保つよう水は壁の北側に流され、その日陰によって水が凍結され冬の日に形成された氷が増えます。
そう、いくつかのヤクジャールでは着氷プロセスに種をまくために機能しているのです。
その後、氷はヤフチャールに貯蔵された。
厚い断熱壁を持つ大規模な地下空間がカナートに接続され、夏の間も宇宙空間の温度を低レベルに維持するために、ウインドキャッチャーや風力タワーのシステムを使用して涼しい地下空気をカナートから引き上げ、
その結果一年中利用可能でした。
建物は冷たい空気が構造の基礎の入り口から注ぎ、容積が最大5000 m3(180,000立方フィート)までの、ヤクシャルの最も低い地下空間へと下降することを可能にします。
同時に、建物の背の高い円錐形の形状は、建物の最上部の開口部を通って上方および外側に残りの熱を導きます。
そしてこのアクティブなプロセスを通して、ヤクシャルの内側の空気は外側より冷たいままです。
日中の外気温を内側に伝えないよう地上部の構造は、泥や日干し煉瓦の分厚い耐熱構造材料で造られた正方形または丸い形の大きなドーム形で天井を造り、その高さは60フィート(約18m)まで達する事も珍しくありません。
円錐形の構造物はその中央に深い穴を有し、開口部は小さくして保温性を高め、地下には5000㎥にも及ぶ大きな収納スペースが存在して、結合した地下空間はなるべく長く氷を持たせるように工夫して貯蔵スペースを一年中熱絶縁していた。
また、このスペースは夏でも内部を寒冷な温度まで下げるためにカラートや風の取り込み口と繋がっています。
大規模な断熱材とその側面に沿って螺旋状になる連続的な冷却水は、夏を通して氷を凍らせ続けるのだ。
通気孔のそばのわずかな風を受けて、内部の垂直に配置された樹木が茂ったスラットを通って下の水または構造に冷気を吹き込みます。
あるいは煙突として機能し、暖かい空気を開口部・または接続されたカナートから地下の流れによって冷却された空気を吸い込むために、上方に排出します。
このためにも砂漠の町の多くの家には採風塔(バードギール)が装備されています。
その姿は傍目には巨大な蟻塚か、あるいは小さな聖塔(ジッグラト)
(有り体に言えば、その色も相まって「まるで、 そびえ立つクソの山だ」)もしくは、ある種の墳墓のようにも見えるが、決して墳丘墓(クルガン)などではない模様。
そういえばピラミッドの内部もまた涼しい(摂氏20度と一定)と言うが、ピラミッドパワーの正体とはじつは冷房の効果の事なのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます