第9話 ファンタジー:種族-妖精-トロール(ノルマン人 - ヴァイキング由来)

★トロール:

 トロールまたはトロル(Troll)とは、ヨーロッパは北欧の国、特にノルウェーの伝承に登場する妖精の一種、またはファンタジー物の小説やゲームなどに登場する架空の種族のこと。


 多くの作品場合そのキャラクターは“邪悪の手先”として設定されており、魔王や強大な魔力を持った悪の魔法使いの悪の軍団の兵士として、主人公たちの前に立ちふさがり敵対する。


 本来「トロル」という語は北欧神話において一般的に巨人族の名称の一つとして用いられていた。

しかし、現在のトロル像は、巨人、小人、妖精など様々な姿かたち・属性を有しており必ずしも一つのイメージに還元されず、北欧諸国間でもトロル像の差異がみられ、その統一的な全体像を捉えることは容易ではない。


 実際の北欧ではトロルド、トロールド、トラウ、トゥローと呼ばれスカンディナヴィア半島、バルト海沿岸に住んでいた人々であり、ノルマン人とも呼ばれる北方系ゲルマン人であるヴァイキングの伝承でヴァイキングが入植地とするとともに「トロル」 が伝えられていった。


 なおヴァイキングと言う言葉だが、『サーガ』や『エッダ』などに

まるで気軽に「ハイキングに行く」とでも言わんばかりに「ヴァイキングに行く」という表現がみられるところから「探検」「航海」「略奪」などを意味するのではないかという解釈がある。


 アイスランドの人々が信じている「Hidden people =見えざる人々」

の中にはエルフやオバケなどが含まれますが、トロールも一般的には人間の目には見えませんので、これらを全てをまとめて「見えざる人々」と言われることもあります。


 エルフは主に岩の中に住んでいて、

トロールは人間から遠く離れた山の中に住んでいるも、日光にあたると固まって岩になってしまうという性質を抱えながら様々な目的で人間に近づいてくると言われており、今でもアイスランドではエルフが住んでいると言われる大きな石を避けて工事が計画され、トロールが石になったと言われる奇岩には知らず知らずのうちに畏怖の念を抱くようです。


 当初は悪意に満ちた毛むくじゃらの巨人として描かれていたが、それがやがて零落し小さい身長に矮小化され描かれていく。


 この「毛むくじゃらの巨人」であったり、「小柄な老人」であったり、

時には「赤毛の美人」であったりもする故か、どんな姿でも容姿を自由に変えられる変身能力の魔法が使えるとされ 、故にどのような存在であるかについては様々な描写があり、一定しない。


 ただし、鼻や耳が大きく醜いものとして描かれることが多く別格のトロールたちには2、或いは3の頭がある。


 しかし、毛むくじゃらの巨人、小柄な老人、赤毛の美人……つまりはヴァイキング自身の事なのか?



 一般的なトロールについてのイメージは、巨大な体躯かつ怪力で、深い傷を負っても体組織が再生出来、切られた腕を繋ぎ治せ、醜悪な容姿を持ち、あまり知能は高くなく、凶暴、もしくは粗暴で大雑把、というものである。


 一方ノルウェーの諺で「トロールのいたずら」と言われる急に物が無くなる人々の生活の身近に潜んで時折いたずらをする妖精としてのトロールもあり、人間を襲って食べてしまう怪物としてのトロールとの2つのイメージが混在しているとも言える。


 これは日本の秋田地方の民間伝承である「なまはげ」と通じるものがある。


 ファンタジー物の小説やゲームなどでは“定番のキャラクター”ではあるが、同じく架空の種族でありファンタジー物でも頻出のオークやコボルドに比べると、特にこれと言った“固有の共通イメージ”を持っていないが ほとんどの場合、

・大きな体(身長2m~5m)

・とてつもなく怪力

・動きは鈍重で頭の回転も鈍い


…という描写される事が多い。


 作品や描き手の解釈によって様々なのは言うまでも無いが。

映画の『ハリーポッター(Harry Potter)』では怪力だが極めて愚鈍であり“ウドの大木”で、昔の漫画などで描かれる様な原始人をそのまま巨大化させた様な外見だった。


 ファンタジー小説の古典である『指輪物語』でもほぼ同様の解釈で描かれているが、さらに巨大であり性格も凶暴であった(ハリーポッターでは身長5mほどなのに対して、指輪物語では10mを有に超える)。


 絵本『さんびきのやぎのがらがらどん』でも土気色の肌の巨人(顔だけで子ヤギほどもある)として登場する(まあ、長男山羊に瞬殺されるが…)。


 またジョージ・ルーカス原案の映画『ウィロー(Willow)』では、全身が赤毛の毛むくじゃらで、垂直の壁を自由に登ったり出来る大きさもオランウータンと同じくらい(身長2m程度)の動物のオランウータンにそっくりな外見で表現されていた……それぜったいオランウータンでしょ?


 ほとんど人間と同じ様な外見を持っている物から、毛むくじゃらだったり、頭に角が生えていたり、時には“一つ目”の巨人として描かれる事もある。


 また体型もでっぷりと太って腹が突き出たものや、逆に筋骨隆々で引き締まった肉体を持つもの、時にはガリガリに痩せて骨と血管が浮き出たミイラの様な描かれ方をする場合もある。


▶地域別の伝承:

●スカンジナビア半島:

 小人の妖精とされる。


●フィンランド:

 池にすむ邪悪なシェートロール。霧や嵐の日に池から出てきて人を溺れさせる。


●スウェーデン:

 丘陵地、長塚、土墳などの下に共同体を作り暮らすためベルグフォルク(丘の人々)と呼ばれた。

 彼らは騒音を嫌い鐘や教会からは離れて暮らした。

日の光に当たると石に変わるため、夕暮れ時から明け方までしか姿を見せない。


 気に入った人間には富と幸運を、気に入らないものには不運と破壊をもたらした。

また女子供をさらい財宝を盗むため、人も動物も魔除けにヤドリギの枝を身に着けた。


 金属工芸、薬草や魔法を使った治療に秀でていると言う。

 彼等の住処は財宝でいっぱいで夜になると光り輝く。


●ノルウェー:

 女のトロルは美しく長い赤毛。

 日常生活でふっと物が無くなった際には「トロールのいたずら」と言われる。


 御土産物屋でトロールの人形が高い人気をはくしている。


●デンマーク:

 白く長いあごひげの老人で革エプロン姿。

背中にこぶがあり大きな鉤鼻・灰色ジャケット・とがった赤い帽子で、背が高く黒く長い服を着ている。


●フェロー諸島:

 フォッデン・スケマエンドと呼ばれ「うつろな人々」「地下の人々」人をさらって何年も捕らる。


●アイスランド:

 一つ目の邪悪な巨人であり、3人で一つの目玉を共有し、順番に使っている。


●シェットランド諸島・オークニー諸島:

 ランド・トロー、ピーリー・トロー、シー・トローの三種に別れる。


●グリーンランド・カナダのイヌイット、イハルシュミット族:

 邪悪な巨人、毛の生えてない腹を引きずり鉤爪が生え物陰に潜み人を襲い肉を引き裂く。



▼ファンタジー内でのトロール:

 作品や描き手の解釈によって様々なのは言うまでも無いが。


 ほとんどの場合はオークやゴブリンも同時に登場し、それらと比べて圧倒的に大きな体格を有して腕力に優れたパワーファイターとして描かれる事が多い。


 その反面、あまり知的活動は得意とせず。「大男、総身に知恵が回りかね」を体現している場合が多い。


 ただしTRPGの『トンネルズ&トロールズ(Tunnels & Trolls)』では

人間同様の知的レベルを有しており、通常はモンスター側としてプレイヤーが触れる事が出来ないトロールを、明確にプレイヤーが使用可能な1個の種族として定義している。

このため非常に強力なキャラクターを作る事が可能となる。


 また近年になって、新しく発表されるゲームなどではトロールの扱いは急速に向上している。


 今まではただの敵役でしかなったトロールが、最近になって発表されるTRPGやMMORPGでは、多くの場合プレイヤーが使用可能な種族に入っている事が多い。


 その際、今まで固定化されていた“人食い巨人”のイメージから変化して邪悪な種族ではなく、エルフやドワーフなどと同様に様々な設定が施される事が多い。


 しかしながら外見的なイメージ設定は、むしろ単純に大柄な人間の姿に若干のアクセント、例えば「浅黒い肌」や「筋骨隆々した肉体」などが付加されるのみで、既存の小説やゲームなどで描かれてきた“モンスター的な側面は完全に消失”している場合も多い。


 特に「筋骨隆々した肉体」と言う特徴は、一種の「筋肉女萌え」の派生とも考えられる……それはオーガとどこが違うのであろうか?



◎フィクション作品のトロール:

◯『ホビットの冒険』(J・R・R・トールキン):

 初代冥王の被造物として登場する。エントを模したもの。

通常の武器が通じないほど堅い皮膚を持つが、太陽光を浴びると石化するとされた。


 続編の『指輪物語』では、冥王サウロンによって生み出された凶暴な上位種「オログ=ハイ(Olog-hai)」が登場。


 その身を巨大な剣や鎧で武装しており、知能・戦闘能力も向上している。

また太陽光を浴びても石化しない。


 サウロン配下の中でも単純な近接戦闘においては無類の強さをみせ、

兵士というより洗脳された生物兵器として運用され、前線突破や城壁破壊などに投入されたが、「一つの指輪」が破壊され力の源泉たるサウロンが滅びると、共に滅んだ。


◯『ハリー・ポッターシリーズ』(J・K・ローリング):

 巨漢の一種族として登場し、悪臭を放つとされる。

ヘンリック・イプセンの劇詩『ペール・ギュント』に登場するトロールは不死で、自分たちの国を愛する者として描かれている。


◯『ルーンクエスト』(テーブルトークRPG):

 「トロウル」と呼ばれ、多数の亜種・架空の学名・骨格標本・進化樹形図・宗教・食や生活文化などが詳細に設定され、その背景世界「グローランサ」最強の種族と表現されることもある。


 コンピュータRPGの『ドラゴンクエストシリーズ』でも「トロル」「ボストロール」「トロルキング」「トロルボンバー」「ダークトロル」など、非常に大柄で棍棒を嘗め回すような獰猛なモンスターとして現れる。


◯『となりのトトロ』(アニメーション映画):

 森の主の妖精である「トトロ」を、登場人物の少女、草壁サツキはトロルであると判断した。


◯『きょうだいトロルのぼうけん』(ガンヒルド・セーリン:児童文学):

 石橋に住む善良な小人としてのトロルと、毛むくじゃらで赤い肌の悪いトロルの双方が描かれる。


◯『ムーミン』(トーベ・ヤンソン:挿絵付き小説):

 作品に登場するムーミントロールは、名前にトロールと付いてはいるものの、妖精のトロールとは違う生き物としている。

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