第3話 ファンタジー:種族-妖精-エルフ 古典的西欧北欧エルフ

▼エルフ(英語: Elves、 単数形はElf):

 エルフは人間と似ているが、人間ではない種族で超自然的な精霊せいれい、あるいは妖精ようせいであり古北欧語から派生し,グリムが記録したドイツ(チュートン族)の神話に登場する魔力をもった小人/小妖精(ようせい)である。

すべてのゲルマン種族の間にその存在を知られるが、そのイメージは一様でない。


 また英国の民間伝説では、森や丘,野に住むいたずら好きな精霊、あるいは洞窟に群れをなして住む妖精のたぐいを指す。



▼光と闇やみの2種の妖精エルフ:醜美2種類の北欧系原始エルフ

 エルフに関する最も古い記述は北欧神話にある。

それ故エルフという言葉そのものの起源は古代北欧語であり、水を表すエルフあるいはラテン語で山を表すアルペスあたりと言われる。


 最初期のエルフは、古ノルド語でアールヴ(a'lfr、複a'lfar)と呼ばれた。

同時期の記述は存在しないが、後の民間伝承に登場するアールヴと語源的に結びついた多くの単語の存在は、エルフへの信仰が古代スカンディナヴィア人だけのものではなく、ゲルマン民族全体で一般的であったことを強く示唆している。


 やがて5世紀頃の409年にローマ帝国がブリタニアを放棄した後、現在のデンマーク-北部ドイツ周辺にいたゲルマン人(アングル人、ジュート人、サクソン人のゲルマン系の3つの部族である)が北海経由でグレートブリテン島南部に侵入してきたアングロ・サクソン時代になると、先住のケルト系ブリトン人を支配しケルト文化を駆逐したのだが、エルフはspirit(精霊)を意味するようになり魔法使いから妖精まですべて包括した。


 更に時代が下るにつれ、エルフの意味はその意味が狭まり、花々の間を動き回るスカンジナビアの明るい妖精に類似したものだけに限られてゆくようになるのだった。


 キリスト教化前よりも更に前の北欧系原始エルフは絶世の美人かとっても醜いバケモノかという2種類にわかれており、(つまりはこの世のものではないという暗喩)さらにエルフの形態は時期的に3つに分かれるとも言われれる。(北欧系原始エルフ・ケルト的ロバ耳エルフ・反キリスト悪魔風尖り耳エルフ)。


 シェークスピアやドイツの詩人ビーランドが描くエルフは風の精のイメージが強いが、そもそもの北欧の民間信仰(北欧系原始エルフ)では祖先の霊とされていて、アイスランドの学者スノッリ・スツルソンなどは、これを光と闇やみの2種の妖精に区別している。


 - エルフは柄がらは小さいが、知力、狡猾こうかつさ、器用さでは人間に勝る。人間界には属さずに森や山、空気中に住むが、人間に脅威を与える巨人と違ってしばしば人助けをし、また意地悪もする。そして起源に応じてさまざまな外観をとるが、光や空気中に住むものは美しく輝き、地中に住むものは黒くて醜い。また山や家の敷居の下、梁はりの中などに住むものは非常に小さいとされる。 -



▼ゲルマン的エルフに吸収されたケルト的妖精:妖精に零落されたエルフ或いは北欧神話とキリスト教神話が混合したエルフ感:悪魔に零落されたエルフ


 ゲルマン民族の文化風習と、ケルト民族の文化風習はとても似通っているが(ケルトとゲルマンは、もともとは黒海周辺〜中央アジアの遊牧民で印欧語族に属する為)現在ローマやゲルマンの圧迫を受け同化され姿を消していった(かつて戦士階級が戦車に乗り鉄製武器をもっていた)ケルト(部族社会)が残っていると言われている地方は3つある。


 一つはドイツ(チュートン系)、もう一つはイギリス(厳密にはアイルランドを含めたブリテン諸島)、最後はフランス(ブリターニュ)です。(どこもゲルマン人に乗っ取られた土地)


 まず、一番北欧神話の影響を受けた-北欧神話で上書きされてしまった-ドイツにおけるエルフは明らかに北欧系原始エルフである。


 しかしドイツほど北欧神話の影響を受けなかったイギリスでは、妖精たちの総称としてのエルフという言葉と共に固有名も残りました(例えばスコットランド民謡にエルフはインプと一緒に出てきます)。


 そして、北欧神話の影響を受けなかったフランスのブリターニュにはそもそも妖精の総称を表すエルフという言葉自体がないのです。


 つまり、エルフは北欧神話を発祥として、ケルト神話の妖精たちを取り込んでいったことで、その妖精たちを表す言葉となっていき、時代が過ぎるうちに今のエルフのイメージに近づいてきたのです。


 すなわち、北欧神話に様々な形で登場するエルフを当時の人々は、美しく強力で人間ほどの大きさの超常的な存在として理解し、一般的に先祖崇拝と同様に、豊かさと結びついた半ば神聖な集団として言及していたのだった。


 また古代の北欧社会では「妖精の王」と呼ばれてた鍛冶師ヴェルンドなど、名声ある男性は死後エルフの列に加えられることがあった。

更に古代の北欧の人々は、エルフと人間との混血も可能だとも信じていた。


 この様にエルフの存在は、自然の精霊や死者の魂に対するアニミズム的な信仰と類似していて、ほとんど全て人間の信仰と通じるものがある。


 更に北欧神話に出てくるドヴェルグ(ドワーフ、単 dvergr, 複 dvergar)について、「デックアールヴ(闇のエルフ、単dökkálfr, 複dökkálfar)」または「スヴァルトアールヴ(黒いエルフ、単 svartálfr, 複 svartálfar)」として言及しているが、ただ、このような使用法が中世のスカンジナビアにおいて一般的であったかは分からない。


 この「闇の妖精〔デックアールヴ〕」(ダークエルフ)ではないエルフを、リョースアールヴ(光のエルフ、単 Ljósálfr, 複 ljósálfar)」と言及しているが、この使用法は「エルフ」とalbhの語源的な関係と関連している。


 エルフは、「全ての神々」を意味する「アース神族とエルフ」という慣用句によって、アース神族と結び付けられるも、アース神族ともヴァン神族とも異なる風習を持つ種族として描かれている。(ヴァン神族のフレイは光のエルフの故郷である「アルフヘイム」の王であるとされたり、 巨人族の宴にアース神族とエルフの大集団が招ばれている。)


 後のスカンジナビアの民間伝承も、エルフにもてなしを捧げる伝統を保っている。

エルフへの捧げものがひどい戦傷を癒すことができると信じられていた。

アース神族とは、北欧神話における最高神オーディンを長とする神々の系統のこと。


 ヴァン神族とは、北欧神話に登場する一群の豊穣と平和を司る神々で「光り輝く者」を意味する、ニョルズ、フレイ、フレイヤが所属していた神族である。

一部の研究者はヴァン神族とエルフは国津神的にスカンジナビアの青銅器時代の宗教の神であったが、後に主神の座を天津神的なアース神族に取って代わられたと推測している。

また、ヴァン神族とエルフは一般人のもので、アース神族は僧侶や戦士階級の神であったと主張している者もいる。


 北欧神話型のエルフは主に女性として、また丘や石の塚に住むものとして、民間伝承にその姿を残している。


 スウェーデンのälvor(単、älva)は森の中にエルフ王と住む驚くほど美しい少女であった。

彼らは長命で、この上なく気楽に暮らしていたのだ。


 このエルフは例によって金髪で白い装いをしているが、スカンジナビアの民間伝承に登場する存在のほとんどがそうであるように、気分を損ねると手に負えなくなる。まあ女は概ねそうだと言う意見もあるが……


 物語においては、彼らはしばしば病気の精霊の役割を演じる。

最も一般的でほとんど無害な例では、älvablåst(エルフのひと吹き)と呼ばれるひりひりする吹き出物がある。

これはふいごを使った強力なお返しのひと吹きで治すことができる。


 スカンジナビアに特有の岩石線画であるSkålgroparは、そう信じられていた用途から、älvkvarnar(エルフの粉引き場)として知られていた。

誰であれエルフの粉引き場に供物できればバターを捧げれば、エルフをなだめることができた。

これはおそらく古代スカンジナビアの「エルフの供儀」(álfablót)に起源を持つ習慣だろう。


 また霧深い朝か夜の草原では、エルフたちが踊るのを見ることができた。

彼らが踊ったあとには円状の何かができた。

これはälvdanser(エルフの踊り)またはälvringar(エルフの輪)と呼ばれ、この輪の中で小便をすると、性病にかかると信じられていた。(意味深)

いわゆるフェアリーリングである。


 エルフの輪フェアリーリングは一般的に小さいキノコの輪(菌輪)でできていたが、別種のものもあった(地衣類や他の植物や、そのように見えて広がった鉱床など。


 また、森に自生するキノコは当時のスカンジナビア半島やロシアなど北方の貧しい農民にとっては、食肉に代わる食感とアミノ酸源である旨味を持った貴重な食材であった)。


 北欧神話とキリスト教神話が混合したスカンジナビアの民間伝承のエルフは、

●ノルウェーではalv、

●デンマークではelver、

●スウェーデンでは男性がalv、

         女性がälvaと呼ばれている。


またサンタクロースと同一視されているエルフを、

ノルウェーではニッセ(nisse)、

スウェーデンではトムテ(tomte)と呼んでいる。


*クリスマスのエルフ

 現代の米国、カナダ、英国における民間伝承では、サンタクロースの助手としてエルフが登場する。

このエルフは緑色の服を着て、尖った耳と長い鼻を持つ。

想像上の彼らはサンタクロースの工場でクリスマスのプレゼントになるおもちゃを作り包装しているのだ。


◯ノルウェーでの呼び名alvは、本当の民間伝承ではあまり使われず、 使われるときはフルドフォルク(huldrefolk)やヴェッテル(vetter)の同義語として使われる。

フルドフォルクとヴェッテルは大地に住む、エルフというよりはドワーフに近い存在であり、アイスランドのhuldufólkに相当する。


◯デンマークとスウェーデンでは、エルフとヴェッテルとは別の存在として登場する。


 デンマークの童話作家アンデルセンの、『バラの花の精』(The Elf of the Rose)に登場するalfは花の中に住めるほど小さく、“肩から足に届くほどの翼”を持っている。


 アンデルセンはまた、『妖精の丘』(The Elfin Hill)でelvereについて書いている。

この物語のエルフは、デンマークの伝統的な民間伝承に似て、丘や岩場に住む美しい女性であり、男たちを死ぬまで躍らせることができる。


 かの女たちはノルウェーとスウェーデンのフルドラ(huldra)のように、前から見ると美しいが、背中から見ると木の洞のような姿をしている。


 また、英国の民間伝承には小さく翼のないエルフも登場する。

民間伝承に登場する昆虫翼を持つ妖精フェアリー(fairy)であるが


●イギリスのfairyは、

●デンマークではalfer,

●スウェーデンではälvor

 と呼ばれているが、正しい訳語はfeerである。


◯ドイツの民間伝承では、

エルフは人々や家畜に病気を引き起こしたり、悪夢を見せたりする、ひと癖あるいたずら者だとされる。


 ドイツ語での「悪夢(Albtraum)」には「エルフの夢」という意味がある。

より古風な言い方、Albdruckには「エルフの重圧」という意味がある。

これは、エルフが夢を見ている人の頭の上に座ることが、悪夢の原因だと考えられていたためである。


 ドイツのエルフ信仰のこの面は、スカンジナビアのマーラに対する信仰に一致するものである。

それはまたインキュビとサキュビに関する信仰とも似ている。


 ドイツの叙事詩『ニーベルンゲンの歌』では、ドワーフのアルベリッヒ(Alberich)が重要な役割を演じる。

アルベリッヒを字義通りに訳せば、「エルフ-王」となる。


 このようなエルフとドワーフの混同は、『新エッダ』ですでに見られる。

アルベリッヒの名はフランスの武勲詩に登場する妖精王Alberonを通じて英語名オベロン (Oberon) となった。

オベロンはシェイクスピアの『夏の夜の夢』に登場するエルフとフェアリーの王である。


 ゲーテの詩で有名な『魔王』 (Der Erlkönig = 「エルフ王」) の伝説は比較的最近にデンマークで始まった。

彼の詩は、ヨハン・ゴトフリート・ヘルダーが翻訳したデンマークの民間物語、魔王の娘』をもとにしている。


 ドイツとデンマークの民間伝承に登場する魔王は、アイルランド神話のバンシーのように死の前兆として現れるが、バンシーとは異なり、死にそうな人物の前にだけ現れる。


 魔王の姿と表情から、どのような死が訪れるのかが分かる。

魔王が苦しげな表情をしていれば、それを見た人は苦痛に満ちた死を迎え、魔王が安らかな表情をしていれば、穏やかな死を迎える。


 グリム兄弟の童話『こびとのくつや』には、靴屋の仕事を手伝う、身長1フィートほどで裸の、Heinzelmännchenと呼ばれる種族が登場する。

彼らの仕事に小さな服で報いなければかれらは姿を消し、報いればとても喜ぶ。

Heinzelmännchenはむしろコボルトやドワーフに近い存在なのだが、この作品は「靴屋とエルフ」(The Shoemaker & the Elves)と英訳された。


◯アイスランドのエルフ

 目撃したという人々によると人間に似ているがやや小型の外観で素朴で普段は穏やかな生き物であるとされる。


 アイスランドでは、エルフたちは日々の生活の一部と考えられており、エルフに配慮するために工事が変更になったり、エルフによる警告を信じる漁師が出漁を見合わせるようなことがある。


 レイキャビク近くの道路工事では、「エルフの岩」とされている岩石を誤って土壌に埋めてしまったところ、道路は冠水したり、負傷する人が出たり、周囲で重機の故障が相次いだ。

そのためアイスランド道路管理局はこの岩の原状復帰を決め、掘り出し作業と洗浄作業が行われた。


 また1971年にはエルフの家される巨大な岩を道路工事に伴って移動させたところ多くの技術的困難に直面することになった。

2012年には妖精遺産保護法が成立しており、エルフに関係すると言われている岩などが保護指定されている。


◯英国のエルフ

 エルフという単語は、古英語の単語ælf(複: ælfe, 地域や年代による変形として、ylfeやælfenがある)として英語に入り、アングロ・サクソン人とともに英国に上陸し、アングロ・サクソン人の学者は、ギリシア神話、ローマ神話に登場するニンフをælfやその変形の単語に翻訳した。


 初期の英語に関する証拠はわずかではあるが、アングロ・サクソン人のエルフ(ælf)が北欧神話の初期のエルフの同類であると考えられる理由がある。


 ælfは人間ほどの大きさであり、超自然的な力を持っていて、男性だけの種族というわけではなく、出会った人間を助けることも傷つけることもできた。


 特にエッダ詩におけるアース神族とエルフ(álfar)の組合せは、古英語の呪文『ウィズ・ファースティス』(Wið færstice)や、アングロサクソンの人名にあるosやælfのような同語族の言葉の特徴的な発生に反映している。(例えばオズワルド(Oswald)や、アルフリック(Ælfric))


 さらに、北欧神話のエルフの美しさに関するさらなる証拠は、ælfsciene(エルフの美)のような古英単語の中に見つけることができる。

この語は、古英語詩の『ユディト記』と『創世記A』に登場する、魅力的で美しい女性に使われている。


 エルフは美しく潜在的に親切な存在であると、歴史を通して英語を話す社会のある階層には考えられてきたが、例えば『ベーオウルフ』の第112行にあるように、アングロサクソンの資料はエルフと悪霊の同盟についても証言している。


 一方では古英単語のælfの変形であるoafは、最初は「取替え子」またはエルフの魔法によって茫然としている人物について述べるのに使われていた。


 また病気や傷害が妖精によって引き起こされるという信仰に由来する「エルフの一撃(またはエルフの太矢、エルフの矢、エルフの矢傷)」 (elf-shot) という言葉は、スコットランドや北イングランドで見られる慣用句であるが、これは16世紀の最後の四半世紀の頃の原稿に「エルフが起こす激痛」という意味で初めてあらわれた。


 後の17世紀のスコットランドでは、新石器時代の燧石の矢じりを意味するものとされたが、この矢じりは古代人が癒しの儀式の際に使ったものであるが、17世紀の人々は、魔女やエルフが人や家畜を傷つけるために使ったと信じたのだ。


 更にエルフの茶目っ気がもたらす髪のもつれは「エルフロック」(elflock)と呼ばれ、突然の麻痺まひは「エルフの一突き」(elf stroke)などと呼ばれた。


 エルフはイングランドやスコットランド起源のバラッドに多く登場する。

民話と同様に、その多くは「エルフェイム」(Elphame)や「エルフランド」(Elfland)(いずれも北欧神話でいうアルフヘイムのこと)への旅についての内容を含んでいる。


 エルフェイムやエルフランドは薄気味悪く不快な場所として描かれている。

バラッド『詩人トマス』(Thomas the Rhymer)に登場する、エルフェイムの女王のように、エルフは時おり好ましい描かれる。


 しかし『チャイルド・ローランドの物語』(Tale of Childe Rowland)や、『イザベルと妖精の騎士』(Lady Isabel and the Elf-Knight)のエルフのように、エルフはしばしば強姦や殺人を好む腹黒い性格だとされる。


 『イザベルと妖精の騎士』のエルフは、イザベルを殺すためにさらう。

ほとんどの場合バラッドに登場するエルフは男性である。


 一般的に知られているエルフの女性は、『詩人トマス』や『エルフランドの女王の乳母』(The Queen of Elfland's Nourice)に登場する、エルフランドの女王ただ一人である。


 『エルフランドの女王の乳母』では、女王の赤子に授乳させるために女性がさらわれるが、赤子が乳離れをすれば家に帰れるだろう、との約束を得る。


どの事例においても英国のエルフはスプライトやピクシーのような特徴を持っていない。


 近世のイングランドの民話では、エルフは小さく悪戯好きで、見つけにくい存在として描かれている。

かれらは邪悪ではないが、人をいらだたせたり、邪魔したりする。

透明であるとされることもある。


 このような伝承によって、エルフは事実上イングランド先住民の神話に起源を持つ、フェアリーの同義語となった。

引き続き、「エルフ」の名は「フェアリー」と同様に、プーカやホブゴブリン、ロビン・グッドフェロウやスコットランドのブラウニーなどの、自然の精霊を表す総称になったのだ。

現在の一般的な民話では、これらの妖精やそのヨーロッパの親戚たちがはっきりと区別されることはない。


 文学からの影響は、エルフの概念をその神話的起源からさらに遠ざけるのに重要な役割を果たした。


エリザベス朝の劇作家ウィリアム・シェイクスピアは、エルフを小柄であると想像しかれは明らかにエルフとフェアリーを同族として考えていた。


 『ヘンリー四世』の第1部、第2幕、第4場で、老兵フォールスタッフはハル王子に、“痩せこけた、エルフのやから”、と呼びかけている。

『夏の夜の夢』では、エルフたちは昆虫ほどの大きさとされている。


 一方エドマンド・スペンサーは『妖精の女王』(The Faerie Queene)で人間型のエルフを採用している。


 シェイクスピアとマイケル・ドレイトンの影響は、とても小さな存在に対して、「エルフ」と「フェアリー」を使用するという基準を作った。


 ビクトリア朝期の文学では、エルフはとがった耳を持ち、ストッキングキャップをかぶった小さな男女として挿絵に描かれている。


 1884年にアンドリュー・ラングが書き、リチャード・ドイルが挿絵を描いた、妖精物語『いないいない王女』(Princess Nobody)では、エルフが赤いストッキングキャップをかぶった小人である一方で、フェアリーは蝶の翅を持った小人として描かれている。


 ロード・ダンセイニの『エルフランドの王女』はこの時代の例外で、人間型のエルフが登場する。

「バックソーンの誓い」(the Buckthorn vows)という伝説では、バックソーン(クロウメモドキ属の植物)を円形に撒いて満月の夜に環の中で踊るとエルフが現れるとされる。


 踊り手はエルフが逃げ出す前に挨拶して「とまれ、願いをかなえよ!」と言わなければならない。するとエルフが一つ望みをかなえてくれるという。



▼エルフの耳はとがっていなければならない:だってキリスト教にとってエルフは悪魔だから


 エルフは近代ではケルト民族の妖精群が発祥で、役割によって異なる呼び名を持つものだったがそれがケルトの衰退によってエルフとひとまとめにされた。


 それがキリスト教によって悪魔とみなされ、結果としてエルフが悪魔的に描かれるようになり尖り耳を持つようになった。

つまり実は、尖ってなくて長いだけのエルフ耳はキリスト教前のエルフなのだ。


 海外では《悪魔の耳》 と忌まれている尖り耳エルフはキリスト教が生んだといえる。

キリスト教などの文化圏の国では、尖った耳は悪魔を彷彿とさせるのかもしれません。


 だが今やエルフは長く尖ったエルフ耳を持つのが当たり前であるとされている……

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