ジェスの使命

「おい!ミカ、もうすぐ学園に着くぞ。手紙、読み終えたか?なんて書いてあったんだ?何かこの状況を打開できる、強力な魔法とか、書いてあったか?」


ジェスが待ちきれないように、ミカに聞いた。


「いや。·····そういった事は何も·····ただ、ソフィアの言うことに従うようにって·····」


「なんじゃそら!?·····お!噂をすればソフィアが学園の門のところに立ってるぜ!おーい!ソフィア、どうしたんだ?」


「ジェス!ミカエル様!お待ちしてました!急ぎ伝えたい事があります!」


ソフィアがいつになく、真剣な表情で言った。


「使獣ルルの力で、未来予知ができました!·····ジェスだけでクロード様を助けに行ってはいけません!殺されてしまいます!·····お二人で行っても、ダメです!どちらかが殺されます!·····クロード様を助ける最善の策は、ミカエル様お1人で、海の民の城へ助けに行くことです!」


「いやいや!クロは俺が助けに行くよ!ミカには無理だって!·····ソフィアは知らねぇかもしれないけど、ミカは女なんだ!戦うのは無理だって!」


呆れ顔のジェスに、ソフィアは毅然と言い返した。


「いいえ!女にも戦わねばならぬ時があるのです!今がそうです!それに、ジェスには他のことをやって頂かなくてはなりません!」


ソフィアの気迫に押されながら、ジェスが答えた。


「他のことって、なんだよ。」


「ジェスのお父上のゲオルギ様を止めていただく必要があります。ゲオルギ様は今、学園と海の民の城との間に兵を送り、クロード様の救出に来たものを食い止めようとされてます。その兵たちを引き返させる事が出来るのは、ジェスしかいません!すぐに王宮に引き返して、お父上にクロード様の救出に行くのは諦めたとお伝えください!」


「あのクソ親父の顔なんて見たくねぇよ!それに、俺は嘘つくの苦手だから、すぐバレると思うぜ!」


ソフィアが神妙な顔して、ジェスに答えた。


「ジェスの正直な所は、私も好きですが·····」


「え!ソフィア今、俺の事好きって言ったか?」


「大人になるには、嘘も方便を使えるようにならねばなりません!ミカエル様クロード様の為に頑張ってください!」


「ソフィア今、俺の事好きって言ったか?」


粘るジェスを、無視してソフィアが伝えた。


「それから、ジェスはお父上のゲオルギ様に会ったら、まず遠くから使獣の力を使って、お父上の真意を知ってください。『北の大国がサムグレース王国を狙ってるという話がある今、海の民と同盟を組む必要がある。北の大国とは海上戦になるだろう。海の民の同盟の条件は王族の引渡しだ。私だって本当はクロード王子を助けたいが、同盟が必須である今は戦をおこす訳にはいかないんだ。ジェームズの件も、本当は少し脅す程度の予定だったが、海の民の怨みが予想以上で、暴走して殺してしまった。あの件は本当に後悔している』とゲオルギ様が思ってらっしゃるのが分かるはずです。」


「そうだったのか、親父。·····でも、俺が今から行って親父に伝えても、兵はもう王宮を出てるだろうから意味なくないか?」


「大丈夫です。派兵された方の中に、遠方からでもゲオルギ様の指示を把握出来る、使獣の能力者がいますから!とにかく、時間が無いです!急いでジェスは戻ってください!」


「お、おお。分かった。とにかく行ってくるぜ!」


「ゲオルギ様が寝ついたら、ジェスは学園にお戻りくださいね!やって頂かなくてはならない事があるのです!さぁ、急いで王宮にお戻りください!」


「よくわからんが、王宮に行って、クロの救出諦めたと嘘ついて、親父が寝たら、学園に帰ってくりゃいいんだな?!分かったよ!じゃあ、あとは頼んだ!ソフィア!ミカ!」


ジェスは王宮へと引き返して行った。

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