リカルドの手紙
シルバーの孫へ
私リカルド・キティは、未来予知の力の詳細と、今までの経緯をここに記す。
未来予知の力は、その力の持ち主が愛する者に、危険が迫った時にのみ発動する力であり、愛の力である。
未来予知は具体的には、危機を避けると言うより、愛する者にとっての最善の策を知ることが出来る力である。
シルバーを深く愛した私には、シルバーの孫である君の危機まで未来予知することが出来た。それゆえ·····
あー!やめたやめた。
手記を書いた時の調子で、真面目ぶって書こうかと思ったけど、めんどくさい!
もうここから先は、素で書くわ。
アナタがこれ読んでるって事は、ワタシの子孫(正確にはワタシの愛しの妹の子孫ね)ソフィアがアナタに惚れたって事よね。
分かるわぁ!キティ家の人間は、シルバーの血筋に惚れる運命なのよ。
ワタシが、シルバーに惚れたようにね。
だって、シルバーったら、めっちゃイイ男なんだもん!
無骨で口下手なのも、男らしくて素敵だし!
頭良くて、博識なのも魅力だわ!
シルバーったら、この国の言語をすぐ覚えて使いこなしてたのよ。
え?アナタも言葉には困らなかったって?
そりゃそうよ。アナタは魂だけで来たから、憑依している人間の言語中枢の働きで、この国の言葉は自動的にアナタの母国語に変換されて理解できるのよ。
でもシルバーは憑依という形ではなく、この国に体ごと来たから、1からこの国の言葉を覚えなくてはならなかったのよ。
あ!ちなみに、この国の数学と理科の教科書の内容は、シルバーが伝えた内容を専門家が書き取ったりして作られたものよ。アナタの国の学校の勉強内容とほぼ変わらないのは、そのせいよ。
あと、シルバーのカッコイイ所といえば、一途な所もキュンとくるわよねー!
ワタシには勿論、どんな女性に言い寄られても一切なびかないのよ!
「私が愛する女性は生涯であの人、1人だけだ」って、名言よね!
和恵さんが羨ましいわー!
聞いてよ!この国の統一したあと、新しくこの国の名前つけるときにシルバーが「良い名前がある」って言うから何だろうって思ったら、「和(サム)恵(グレース)」って提案してきたのよ!あれには、さすがに呆れたわよ!
どんだけ好きなのよって感じよね!
まぁ、「恵みを足していく」って意味は国の繁栄につながりそうな縁起の良い名前だったから、採用しちゃったけど、ホント「どんだけーーっ!」って感じよね!
あ、話がそれたわね。
もう気づいてると思うけど、この国の初代国王シルバー・トラケナーはアナタの祖父よ。和恵さんがアナタの祖母ね。
アナタの世界とこちらでは時間軸が違うから変に感じるかもしれないけど、異世界ってそうゆうものよ。こちらの1年が、アナタの世界の1日だったりするのよ。
で、ここからが本題よ!
何を隠そう、アナタが友人から借りたゲームを作ったのがこのワタシ、リカルド・キティよ。
え?理解が追いつかないって?
順番に説明するからまぁ、待ってよ。
むかし昔あるところに、未来予知の偉大な力を持ったオカマがいました。
オカマはある日森で、気を失っているイケメンと馬を拾いました。
実はイケメンは、別世界からやってきた人間でした。あちらの世界で事故で死にかけて、気づいたらコチラの世界にいたそうです。
イケメンはとても有能な男で、混乱した国で疲弊する民を憂い、あっという間にオカマと共に国を統一してしまいました。
ただ、そんなイケメンを疎ましく思う輩もいたのです。
オカマはある時、イケメンが食事に毒を盛られて殺される未来を予知をします。
そしてそれを避ける最善の策は、イケメンが元の世界に帰ることだと分かりました。
オカマは予知の力で、元の世界に帰るために必要な、古い大きな鏡が森の奥にある事も見えたので、オカマはすぐに取りに行って建設途中の高等学園に隠し部屋を作り、そこに鏡を設置しました。
オカマの指示に従いイケメンは毒を飲み死んだフリをしたあと、鏡を通って元の世界に帰っていきました。
その後日、オカマもイケメンの世界へ後を追って行くことになります。
なぜなら、オカマの未来予知の力は非常に強かったので、イケメンの孫の危機まで見えたからです。
イケメンの孫を救うための最善の策は、オカマが乙女ゲームを作ることでした。
その乙女ゲームを通じてイケメンの孫は、この国で危機を乗りこえ生き残るためのヒントを知ることができたのです。
あー、こんな風に書くと、アナタは「自分を救うために申し訳ない」って気持ちになってしまうかもしれないから、念の為に書いておくけど。
ワタシは行きたくて、アナタの世界に行ったからね。
未来予知でアナタの世界の様子が見えた時、全身が震えたわ!
「なにその、乙女ゲームってやつ!最高じゃない!?え!ワタシめっちゃ作りたいんですけど!イケメンに、モテまくるゲームとか、最高すぎるでしょ!」
もうね、天職に巡り会った瞬間って言うのかしらね。アナタに感謝したいくらいよ。
国政とか陰謀とか、もうウンザリしてたからね!シルバーとアナタの世界に行って、乙女ゲームを作りまくろうと決意したって訳よ。
ワタシはこれからアナタの世界へ行き、数々の名作乙女ゲームを作り、ある時期に未来予知で見たこのサムグレース王国の話を乙女ゲームに仕立て上げるわ。
未来予知で、アナタが友人に攻略本を見せてもらってる様子が見えたわ。
攻略本の事前情報があれば、きっと男装して上手く学園生活を送れるわよね。
え?そんな、ゲームで伝えるとか、まどろっこしい事しないで、直接会いに来ればいいのにって?
あのねぇ。シルバーは体ごとこの国に現れたの。その場合、元の国に戻ったら、記憶は失われるのよ。
で、ワタシはアナタの世界に行ったら記憶は残るけど、体は別の人間になるの。
ワタシが行く瞬間に死にかけてる性別が同じ人間で、「見た目か・心か・生まれ育ち」が似てる人に、魂が乗り移るのよ。年齢は変わるらしいわ。
ある日突然、アナタの家にオカマがやって来て「アナタは異世界に転生します。女性のままだと、どうあがいても殺されるから、転生したら男装しなさい!」なんて言ったら、間違えなくシルバーに叩き出されるでしょ?アナタだって信じなかったでしょ?
この方法が最善の策だったのよ。未来予知で見えたのだから間違えないわ。
あー楽しみ!どこの国の何歳の人に、魂が乗り移るかは分からないけど、死ぬまで乙女ゲームを作り続けてみせるわ!
そうそう。ソフィアの未来予知がなかなか発動しないのはね、愛する者の数が少ないからよ。
ワタシみたいに色んな人を愛せるようになれば、たくさん未来予知が出来るようになるわ。
アナタが困った時にはソフィアの未来予知が発動するはずだわ。あとは、ソフィアの言う通りに従えば大丈夫よ。
愛の力を信じるのよ。
じゃあね。健闘を祈るわ。
愛の伝道師 リカルド・キティより
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