バルコニーでの秘め事

ジュリアとキースが立ち去り、バルコニーにはクロードとミカが残された。

クロードの顔色はすっかり、いつも通りに回復している。


すっかり日は沈み、空に赤さだけが残る黄昏時である。

バルコニーからホールへと通じる扉から、管弦楽団の情緒的なワルツが静かに漏れ聞こえてくる。


クロードが少しふざけた調子で、ミカに言った。


「せっかくだから、私達も踊るか?」


「ええ!?私は男装してるし、男同士に見えてしまうからマズイよ!クロードは有名人だから、誰かに見られたらマズイって!」


「大丈夫だ。ふざけてると思われるだけだ·····お手をどうぞ。」


ミカはクロードに足元に跪かれ、手を差し出されたのを拒めず、手を取りバルコニーでワルツを踊り出した。


(うぅ。顔が近いから、昨日のキスを思い出しちゃって、なんだか変な気持ちになってきた·····。)


「ク、クロード·····そろそろ辞めよう。人が来ちゃうよ。」


曲の途切れ目をきっかけに、ミカがパッと離れると、クロードは追いかけて壁際に迫って手をついた。


(こ·····これが、世にきく壁ドンって奴か!?)


ミカがドギマギしていると、クロードが顔を近づけてきた。


「ミカ·····顔が赤いよ·····昨日のキスのことでも、思い出してたんでしょ?」


「え!?·····いや、別に、あの·····」


図星を言われ、慌てるミカの首にクロードの手がまわされた。

クロードがミカの耳元で囁いた。


「昨日、気持ちイイって言ってたもんね·····もう1回してあげるよ。」


ミカは全身にゾクゾクと快感の鳥肌がたつのを感じたが、本能に逆らって理性的に言った。


「まずいって誰かに見られる可能性があるから··········んっ·····」


クロードにキスで口を塞がれ、ミカの理性がとんだ、その時·····



「お、おめーら、何やってんだぁ!?」


ジェスの大声が、バルコニーに響いたのだった。

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