男の本能・女の嫉妬

「おいミカ!俺はソフィアを、ダンスの相手に誘うからな!」


「へっ!?ダンスなんのこと?」


「おいおい!聞いてなかったのかよ!大丈夫か?病み上がりだからか?オリバー先生が明後日のダンスパーティまでに、相手を決めておくようってさ!」


「ダンスパーティ!?」


(海外の大学だったから、ダンス自体は経験あるけど、男性パートはやった事ないよ!?かなり女性パートと動きが違うからなぁ·····まずいな·····。)


ミカが困惑していると、遠くの席にいるクロードの声が響いた。


「ジュリア・フォックス!明後日、私のダンスのパートナーをしてもらえないか?」


クロードの言葉にミカは耳を疑った。


ジュリア・フォックスは、金髪ロングヘアの少女でクラスで1番スタイルが良い。

ジュリアはそのグラマラスな胸を誇張するかのように、いつも胸元が開いたドレスを着ている。


クロードの言葉に、クラス中が静まり返った。

ジュリアがキースの方をチラチラ見ながら言った。


「どうしよっかなぁ。いちおう、私はキースの婚約者だしぃ·····キース次第かなぁ。」


キースはいつもの固い表情のまま、返答した。


「別に、婚約者がダンスのパートナーにならなくてはいけないという決まりはない。好きにしたらいい。」


その言葉に、ジュリアは何故か怒り気味で言った。


「あら、そう?なら、いいわ!クロード様!よろしくお願いします!」


ジェスは驚きを隠せない顔をしていたが、しばらくしてポツリと言った。


「まぁ·····ご令嬢恐怖症と言っても、クロも男だしなぁ。本能には抗えず、あのナイスバディに悩殺されて恐怖症を克服したって事なのか·····?」


ジェスの言葉を聞き、ミカはふつふつと腹の底から怒りと哀しみが混ざった感情が湧き上がるのを感じた。

ミカは生まれて初めて味わうその感情に、戸惑いを覚えた。


(なんでこんなにイライラするし、哀しいんだ!?·····クロードにもジュリアにもイライラしてしまうのを止められない!!·····クロードには昨日の『見た目は関係ない!』って言葉は嘘だったのか!って問い詰めてやりたいし、ジュリアの胸元が開いた格好も指摘したい!今までは『あんなに露出してて風邪ひかないのかな?』位にしか思わなかったのに、なんで··········あ!これが嫉妬って奴か!!うわぁー·····なんと醜い感情!そう言えば私、クロードに朝、そっけない態度とってしまったから、それで心変わりされちゃったのかな·····。いやいや、そもそもダンスはクロードも女性と、踊らなきゃだし!男装してる私とは踊れないんだから!)


混乱し動きが止まったミカに、ジェスが声をかけた。


「おい!ミカ!何フリーズしてるんだ?次は馬術の授業だから、早く乗馬服に着替えに男子寮へ行くぞ!」


「あ!そうか。うん。今行く!」


ジェスの声に封印が解けたかのように、ミカは慌てて動き出したのだった。

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