衝撃の真実

(他人の空似にしては、似すぎてる·····ホクロの位置までそっくりだ·····)


ミカは教科書の挿絵にある、初代国王シルバー・トラケナーの肖像画を穴があくほど見つめた。

その肖像画が、前世のミカの祖父にそっくりだったからだ。


(そう言えば名前もシルバーだし·····銀じいちゃんはこの世界の人間だったの!?確かにホリが深くて西洋的な顔立ちだったけど·····そう言えば、リカルド・キティの手記にシルバーは『無骨で不器用、志は崇高だが無口なので誤解されやすい人柄』って書いてあったけど、まさに銀じいちゃんの人柄だわ·····)


ソフィアの所の図書館にあった、歴史の本にはシルバーの肖像画が描かれた本は1冊もなかった。

他にも、教科書にしか描かれていない情報があるかもしれないと、ミカは教科書を速読したが新しく得られる情報は特になかった。


(いやいや!だってシルバー・トラケナーって、百年以上前の人って書いてあるし、銀じいちゃんは昨年86歳で死んだから計算が合わない·····そもそも、これは乙女ゲームの世界なんでしょ?銀じいちゃんと乙女ゲームって対極に位置するような存在で全然結びつかない·····)


動揺するミカの耳に、オリバー先生の声が届いた。


「儂が知る話では、シルバー・トラケナーは20代の時に彗星のごとく現れ数年で国を統一し、30代で若くして亡くなったとの話だ·····側近のリカルド・キティも、あとを追うように図書館を建設したあと姿を消したと言われている。シルバー・トラケナーは『私が愛する女性は生涯であの人、1人だけだ』と言い、娶らなかった。それに倣い、今でもこの国には結婚したら生涯添い遂げる。片方が死んだとしても再婚が認められないこの国の風習は、シルバーの発言が端を発してると言われている。」


(愛する女性は生涯あの人1人だけだ·····って和恵ばあちゃんの事なのかな?そう言えば·····銀じいちゃんは、留学中に出場した馬術競技で事故に遭い、死にかけたことがあるって聞いたことがあるな。数日間、昏睡していて和恵ばあちゃんは酷く心配したとか·····その間に、この国にタイムスリップしたとか?·····ってことは、私も元の世界に戻れるの!?·····いやいや、だとするとヒロコの貸してくれたゲームとの関連性の説明がつかない·····)


ミカが必死に考え込んでいるうちに、あっという間に時間が過ぎ、授業終了のチャイムが鳴ってしまった。


「今日の授業はここまでにしよう。·····そうだ。言い忘れていたが、皆も知っての通り、明後日はイーサン王の結婚記念日だからダンスパーティがある。·····王妃が亡くなってからも、結婚記念日にパーティをするのはどうかと思うがな。まぁ、風習だから仕方がない。当日までに相手を決めておくように。·····また、そのパーティの翌日は王妃の葬式だから、授業は休みだ。クロード君はイーサン王と共に、葬式のため船上だな。」


オリバー先生が授業は最後にこう言い残したのも、ミカは他のことを考えていて全く聞いていなかった。

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