男装がバレる10分前

ジェスとクロードは一礼して、剣を合わせた。

クロードが素早く打ち込み、ジェスが受けて鍔迫り合いしながら2人は話した。


「クロと試合で戦うのは、久しぶりだなぁ!」


「そうだな。たまにはジェスも本気を出したらどうだ?」


「やだよ!良い成績出すと、早めにイーサン王に召し上げられる可能性があるんだろ?俺はクロの側近でいたいんだよ。·····そういや、このことミカエル知らなそうだよな。馬術も1位だし、勉強もいつの間にか出来るようになってたし。·····このまま剣術も1位になるとマズイんじゃねぇか?」


「·····大丈夫だ。剣術では、1位にさせない·····」


そう言って、クロードは素早くしゃがみ込んでクルリと回転して自分の剣の柄で、ジェスの剣の柄を打ち上げて飛ばした。飛んだジェスの剣が壁際の甲冑とあたり、ガランガランと派手な音を立てた。


「ヒュー!クロまた腕上げたな!早すぎて追えなかったぜ!負けました負けました!」


ジェスが明るく手をひらひらさせながら言った。

次はいよいよ、ミカの出番だ。


(うー、緊張してきた!大丈夫。相手をよく見て、隙を見て打つ!それは日本の剣道と一緒だ!ティラノ号に噛まれた痕は少し痛むけど、試合をするのには問題ないだろう·····。)


ミカは兜を被り、準備をした。

ウェイド先生が声を闘技場に響く。


「次は第4試合、クロード様とミカエル君だ。その後に第5試合でキース君とフィン君の試合をして、今日の授業は終了予定だ。では、第4試合、はじめ!」


ミカは一礼をして、剣を構えた。

クロードがいきなり上段に打ち込んできたので、ミカは剣で受けようと腕を上げた瞬間、バリっという音がして胸元が急に軽くなった。


(え!?·····しまった!胸を抑えていた包帯が切れたぁ!?あれか!·····巻き付ける時にダルが口で咥えて手伝ってくれたから、切れこみが入ってしまってたのか!?まずい!こんなシャツ1枚では、皆にバレる!)


慌てて前屈みになったミカ。

クロードは、ミカが上段に受けてくる想定で打ち込んでいたので、急に止めることも出来ず剣を振り下ろした。

クロードの剣が、かがみこんだミカの兜にあたりカーンと甲高い音が響いた。

ミカは軽い脳震盪を起こしつつ、急ぎ兜を脱ぎ前屈みにヨロヨロしながらウェイド先生に言った。


「す、すみません!急に腹痛が!ちょっと医務室に行ってきます!·····私の負けです!どうぞ授業を続けててください!」


ウェイド先生が、心配そうに言った。


「1人で大丈夫か?」


「あー!大丈夫です!大丈夫です!·····朝食にあたったかなぁ?では私はこれにて、失礼します!」


ミカは前屈みになりながら、早足で闘技場を離れた。


クロードがその後ウェイド先生に「頭を打ってますし、倒れる可能性があるので、私が後を追います」と許可をもらって追ってきていることに、ミカは気づきもしなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る