第3話 見知らぬ敵
早朝の下駄箱寒し
いきなり一句詠んでしまった。俺の趣味は俳句である。これでも俳句クラブの副部長だ。俳句は難しい。いま詠んだ句も
「なんじゃ、こりゃ」
驚き過ぎて心の声が出てしまった。不覚だった。
上書きは、
「ああ! いまなんか隠したべ!」
このバカ陽気な声は四年の
「先輩、いまの何?」
「君には関係のないものだ」
「知~り~た~い~」
「体をくねらすな。気色の悪い」
「ちょっとだけ! 誰にも言わないから、ね? ね?」
「お前のその好奇心を勉学に回すべきだぞ」
「回しても余っちゃうんですよウ」
根負けした俺は猿渡に封筒を見せた。
「ええーっっっ!!!」
猿渡は上半身をのけぞらせた。体の柔らかい男だ。
「先輩。これって
「うむ。俺もそんな気がしている」
「大丈夫っすか? 警察呼びます?」
「その前に先生方に連絡が先だろう」
「いやいや、先生達の中に犯人がいる可能性もありますからね」
「そうか、なるほどって。お前、ミステリ好きだろ?」
「将来の夢は私立探偵ッス」
始業時間にはまだ余裕があったので、俺たちは二階の渡り廊下に行った。ここは吹きさらしで寒いので、冬場はあまり人が来ないのである。
さて封筒を開けると(べったり
「先輩、これは!」
猿渡は文面を読むなり目をむいた。リアクションがバリエーションに富んでいて素晴らしい。俳句よりお笑い向きだと思う。後でアドバイスしてやろう。
文面は簡単なものだった。切り貼りで長文を作る苦労をさけようとしたのがにじみ出ている。
―― 今日の放課後、体育館裏の芋畑に来い。必ず一人で来い。誰にも言うな。
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