第2話 じいちゃんのノート

じいちゃんが死んでから、どれだけ時間が経っただろうか、明日からは新学期が始まる。


周りの人達も俺を気遣ってくれて、優しくしてもらっていて、ありがたさを感じてはいたが、どこかぽっかり心に穴が空いたみたいにただ時間だけが過ぎていた。


[いつまでもこうしてはいられないな]

俺は1人で呟いた。


静かな家に自分の声だけしか聞こえない。


[よし、じいちゃんの部屋の掃除でもするか]


俺はじいちゃんの部屋の整理を始めた。

使い古された机の引き出しを開けると、そこには一冊のノートが入っていた。


ノートを開くとそこにはじいちゃんの字で幸広へと書いてあった。


何だろうと思いページをめくった。


[幸広へ

お前がこのノートを見ているということはじいちゃんは、この世にいないのかもしれないね、いつかはこうなる日が来ることは仕方のないことだけど、1人にさせてしまって、すまないね。


寂しい思いをしていることだろう。

お前が両親を無くしてから、ずっと育ててきたが、お前がいてくれて毎日が本当に幸せだだったよ。


幸広はじいちゃんの宝物だ!]


涙で目の前が滲む。


まだ続きのページがある。


[愛する幸広には幸せになってもらいたい。

お前は自分が不幸だと思っていると思う。


不幸だと思っている内は幸運はやってこないよ。


幸運なことに出会えたととしても、その幸運に気付けないから、悪いことばかりに気を取られて、自分は不幸で良いことがないって考えに支配されてしまう。


そのサイクルから抜け出さないといけない。

常に前向きで自分は運が良いと思っていれば本当に良くなっていくよ。


人生はね、良いことも悪いこと起こるし、乗り越えなければいけない壁もあるし、それは当たり前のことなんだ。


必ず誰もが経験するように出来ているんだよ。


必ず起きることに前向きに取り組むのと嫌々取り組むのでは結果も変わるからね。


何も臆病になることもないし、自分を苦しめる必要もない。


お前はお前だからね。

世界で1人しかいない愛すべき自分なんだからね。


人生どう転ぶかは心構え次第なんだよ。


お前がこれからの人生生きていく上で、大切な教訓をいくつか教えておくから、忘れずに日々実践するんだよ。

必ずお前の人生は良い方向に向かうからね。

]


俺は次のページを開いた。

そこには箇条書きでいくつか書いてあった。


1、どんな時でも前向きに考えること

2、人の悪口は言わず、人に優しくすること

3、自分の心に正直になること

4、恨んだり妬んだりしないこと

5、自己否定せず自分を愛すること

6、良い行いも悪い行いも必ず返ってくるから出来るだけ良い行いをすること

7、負の感情を感じても我慢せずに味わいつくすこと、その代わり引きずらないで気持ちを切り替えること

8、出来ない自分を責めずに許すこと

9、向上心を持つこと

10、生きていて今の環境があることに感謝すること

11、やりたいと思ったことは迷わずやること


[すぐに全て出来なくても良い。

少しずつでもいいから、忘れずに実践するんだよ。


じいちゃんはいつもお前を見守っているよ。

幸せになるんだよ。


じいちゃんより]


その後のページも見てみたが、以降は何も書いていないようだった。


ありがたかった。

何故だろ、あんなに寂しかった心の穴が少し埋まったような気がした。


じいちゃんが側にいてくれているような気がしたからだった。


[ありがとう!じいちゃん!

俺、頑張るよ!じいちゃんが残してくれた教えを実践して幸せになるよ!]


俺は変わるんだと誓いながら春休み最後の日を過ごした......。

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