49話 デビルメイデンBランクへと降格する

 バレッド達はAランクに降格した後、焦りから身の丈に合わない高難易度クエストばかりを受注して失敗していた。


 そして現在――



 「ねえデビルメイデンって最近やばすぎるでしょ!!」

 「おい聞こえたら不味いだろ。まあ確かにクエスト失敗続きは擁護できないよな」

 「昔は違ったよね。何か急に転落したというか」

 「まあな。原因は何だろうな」



 バレッド達の近くの冒険者がひそひそと陰口を言っていた。


 バレッド達には全て聞こえていた。


 バレッド達は屈辱の表情で歯軋りをした。



 「くそがあああああああああ。何故だ、何故上手くいかねえええええええ!!」

 


 バレッドが飲んでいた、酒が入っていたジョッキを地面に叩きつけた。


 周囲が一斉に注目する。


 そして憐みの目で見る。



 「何だお前ら文句あるのか!! ああっ!!」



 バレッドの言葉に周囲は誰も反応しない。


 最早それぐらい落ちぶれたパーティーだった。



 「次のクエストに向かった方がいいんじゃないですか?」

 「ああそうだな。一回のクエストクリアでSランクに昇格できるクエストがいい」

 「そうですね。私達はSランクに相応しいパーティーですから」

 「当たり前だ!!」



 バレッド達は焦りに焦っていた。


 理由は二つ。


 一つはバレッド達のプライドが降格を許さなかった。


 その為どんどん落ちぶれていく自分たちに焦りを感じていた。


 もう一つは資金だ。


 皆湯水のようにお金を使っていた為Sランク時代の貯蓄は消えていく。


 どんな装備も基本は消耗品なので買い換えないといけない。


 だが買い換えるお金すら無くなっていたのだ。


 最早【デビルメイデン】は窮地に立たされていた。



 バレッド達はクエストボードを見る。


 そしてSランク昇格できる一発逆転のクエストはないかと探す。


 そして一つのクエストを見つけた。


 それが以下だ。



 ==========================


 ダークドラゴン討伐 金貨80枚


 

 危険度★★★★★★★★★★★★



 待遇 強回復薬×5、豪華馬車



 依頼主 謎の武器職人


 ==========================



 「これだ!! これを受注するぞ!!」

 「ええ。これなら一発逆転できるわ!!」

 「そうだね。こんなクエストがあるなんて僕たちは運がいい!!」

 「金貨80枚。欲しいです!!」

 「私に相応しいクエストだ。ダークドラゴンを研究したいねえ!!」

 「よしこのクエスト受注するぞ!!」

 『おお』



 バレッド達はダークドラゴン討伐という超高難易度のクエストを受注しようとする。


 ダークオーガすら討伐出来なかったのに。


 焦りからか最早自分たちの実力を測れていない哀れなパーティーへと成り下がっている。



 「これを受注する!!」

 「しかしこれはSランクパーティーの中でも難しいとされていまして、今のデビルメイデン様ではとても……」

 「ああっ!! 俺達には相応しくねえとでも言いてえのか!!」



 バレッドが怒りの余り受付嬢の襟元を掴む。


 受付嬢は冷静な顔で口にする。



 「冒険者ギルド側に暴力を振られた場合冒険者としての資格を剥奪致しますが宜しいでしょうか?」

 「なっ!!」

 「今回は一度目なのでお見逃ししますが以降はお気を付けを」

 「ちっ」



 バレッドは手を離す。


 流石の傲慢なバレッドでも冒険者ギルド側には逆らえない。


 資格剥奪されれば貴族の地位を得る夢を失う。



 「それではこのダークドラゴン討伐のクエスト受注を承りました。ご健闘を祈っています」

 「はははっ。これでSランク昇格だ。再びSランク昇格へ戻れる!!」



 バレッドの笑いと言葉を聞いて受付嬢は内心憐れんだ。


 惨めとはこういう輩の事を言うんだなと内心思った。



 豪華な馬車で揺られてダークドラゴンが生息すると言われている闇の洞窟へと向かった。


 

 「ははっこれで俺達は再びSランクだ。天下を取る日が来たな!!」

 「そうね。私達がAランクなんてありえないもの」

 「全くだ。どいつもこいつも俺達の実力を分かっていねえ」



 バレッド達は馬車の中で豪語する。


 最早プライドの塊の【デビルメイデン】には冷静さなど微塵もなかった。



 「そういやラークの野郎今頃何やってるのかな!! 死んでたりしてな!!」

 「死んでるに決まってるじゃない。あんな無能」

 「そりゃそうだ。はははっ!!」



 バレッドはついラークを口にした。


 自分でもよく分からなかったが何故かラークが脳裏に浮かんだ。


 まあどうでもいい。


 そう思ったバレッドは首を横に振った。



 「ご到着致しました」

 「おせえな」

 「失礼しました。魔笛を」

 「ああ!!」



 バレッド達は闇の洞窟前へと降りる。


 そして闇の洞窟へと入っていく。



 「何だモンスターの一匹もいやがらねえ!! 再奥地までは楽勝だな!!」

 「そうですね。意外と簡単にダークドラゴン討伐も出来そうですね」



 バレッド達は再奥地へと進んでいく。


 だがバレッド達は気づいていない。


 ダークドラゴンの強さを。


 自分たちの装備品の耐久力を。


 ラークがいれば闇の洞窟前でセーブも出来た。


 もっと言えばダークドラゴンのクエスト受注前でセーブも出来た。


 つまり冷静になってやり直すことができたのだ。


 だがそのラークを追放してしまった。


 最早取り返しのつかない所まで【デビルメイデン】は来ていた。



 再奥地に進むと一匹の黒い禍々しいドラゴンが眠っていた。


 眠っていたドラゴンはダークドラゴンだ。



 「よしいたぞ。さっさと殺るぞ!!」

 「ええ!!」

 「そうだね!!」

 「はい!!」

 「じゃあ私がバフを掛けよう」



 そう言うとローマルがバフを撒く。



 「攻撃力アップ」

 「スピードアップ」



 ローマルは直ぐにへばる。


 ラフレアよりバフの数も少なく、魔力量も少ない。



 「おらああああああっ!!」

 「うらああああああっ!!」

 「はあああああああっ!!」



 アタッカーの三人が眠っているダークドラゴンに攻撃する。


 だがその攻撃は全て跳ね返された。


 その後何度も攻撃を行うがびくともしない。


 そして遂にアタッカー三人の武器が壊れた。


 それと同時にダークドラゴンが目を覚ます。



 「何だ貴様らは? 雑魚はさっさと失せろ」

 「な!? 人間の言葉を離せるのか?」

 「俺の眠りを邪魔するな!!」



 ダークドラゴンは黒い炎のブレスを吐く。


 バレッド達は攻撃を食らい火傷をする。



 「うわああああああああああああああああああ」

 「きゃああああああああああああああああああ」

 「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ」

 「きゃああああああああああああああああああ」

 「うわああああああああああああああああああ」



 そして怖くなり一目散に逃げだした。


 

 「二度と来るな雑魚共が!!」



 ダークドラゴン討伐失敗。


 そして受付嬢から屈辱的な言葉を言われる。



 「デビルメイデン様のBランク降格が決まりました。これからのご活躍にご期待しています」

 「なっ!? 何かの間違いだろうが!!」

 「間違いではありません。最近のデビルメイデン様のクエスト失敗率を見ると妥当かと」

 「俺達がBランククラスだとでも言いてえのか!! 俺達はあのデビルメイデンだぞ」

 「過去の栄光に縋りつくのは情けないですよ。それともし暴力を振るわれるのでしたら冒険者資格剥奪となりますので」

 「くそがあああああああああああああああああああ!!」



 バレッド達はこの日人生で最大の屈辱を味わった。


 最早Sランクなど夢のまた夢。


 無能と言い追放したラークが所属する【ホワイトアリス】と同じランクまで転落した。


 一方【ホワイトアリス】は順調な歩みを見せていた。


 両者は反比例する。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る