47話 リーシテン卿が屑すぎました

 馬車に揺られてリーシテン卿がいるダンデル国へと向かう。


 馬車の中でリンリン卿が口を開く。



 「なるべく残虐に殺してほしいの。お願いできる?」

 「それは屈辱を味わわせたいと言う事ですか?」

 「まあそうなるわね。泣きじゃくる顔が見たいわ」

 「まあ冒険者なので依頼通りの事をこなすまでですが」

 「お願いね」



 余程恨みを持っているようだな。


 話に聞く限り滅茶苦茶屑なのは分かるが一体どれくらいの屑なんだ?


 まあデレンのような屑なのか? 或いはそれ以上か。



 「ねえこのダイヤモンドの剣って本当に貰っていいんですか?」

 「いいわよ。それは妹が気に入って使ってた剣でね」

 「妹さんは冒険者だったんですか?」

 「ええ。ルールーって言って貴族なのに冒険者をやりたがる珍しい子だったのよ」

 「そうなんですね」



 ネールとリンリン卿が馬車の中で揺られて話をしている。


 殺された妹は冒険者だったのか。


 だから貴族なのにダイヤモンドの剣を持っていたのか。



 「ネール、鉄の剣は俺が預かるよ。慣れない二刀流はやめた方がいい」

 「分かったわ。お願いね」

 「ああ、任せろ」



 俺は銀の剣を手にする。


 剣は普段あまり使わないが別に全く使えない訳ではない。


 ただ役職柄使う機会がないだけだ。



 「そろそろダンデル国へご到着なさいます。降りる準備をお願いします」

 「分かったわ。ありがとう」

 「いえいえリンリン卿の頼みですから」



 馬車が止まる。


 窓からダンデル国が見える。


 そんなに大きい国には見えないな。


 だが治安が悪い風に思える。



 「では魔笛を」

 「ああ」

 「リンリン卿を頼みます」

 「任せておけ」



 俺は御者から魔笛を受け取り、馬車から降りる。


 一応セーブしておくか。



 「セーブ」



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 スロット1 リンリン卿の家


 スロット2 ダンデル国前


 スロット3 空き


 =========================



 俺はスロット2に上書きセーブをした。


 よしこれでいいだろう。



 検問所でチェックを受けて俺達は冒険者として入国する。


 一応冒険者ギルド側からの依頼でもあるので正式に入国できる。



 入国すると木材で出来た建築物がずらりと並んでいる。


 中にはレンガや鉄で出来た建築物もある。



 「それでリーシテン卿はどこに?」

 「恐らく酒場で女と遊んでいるわ。その後は自宅のベッドで」

 


 成程。酒癖が悪く、女癖が悪いのは本当のようだ。


 しかし昼間から酒と女か。


 いいご身分だ事。


 これだから貴族は好きになれない。


 まあリンリン卿は時折冷たく怖いが悪い奴には見えない。



 「あの酒場はどうだ?」

 「どこの酒場かまでは分からないわ」

 「いつ頃からお知り合いに?」

 「親の取り決めで婚約したのは一年前。半年前に妹が殺され婚約破棄」

 「成程。半年ぶりの再開という訳か」

 「そうね。でも嫌でも脳裏にあの顔が憎たらしい表情が焼き付いているわ」



 凄くピリピリとした空気になる。


 うーんこれは出会ってしまったら冷静さを失いそうだな。


 先ずは拘束してリーシテン卿に屈辱を与えてリンリン卿に満足させてから殺すか。


 はあ~。冒険者だから仕方ないがあまり関わりたくない依頼だな。



 酒場に入ると大声で昼間っから酒を飲んで、両脇に美女を抱えている貴族を発見する。


 豪華なスーツに、豪華な首飾り。


 派手な金髪姿の如何にもな貴族だ。



 「あれですか?」

 「ええ。あれよ!!」

 「落ち着いてくださいね。取り敢えず俺が話しかけてみますので」

 「ええ分かったわ」



 俺はリア達にここで待つように言ってリーシテン卿へと近づく。


 するとこちらを見て睨み付ける。



 「何だ小僧。何か俺に用か?」

 「リーシテン卿で間違いないか?」

 「そうだが、何か?」

 


 テーブルの上に両足を乗っけてイラついた様子で俺に返答する。


 何だこいつ?


 態度悪いな。



 「少し話があるんだが」

 「ああっ。今は女と遊んでるんだよ。それに見たところお前冒険者だろ。下民と話す気はねえ。帰れ」

 


 俺にグラスの中に入っていたワインをテーブルから取ってぶっかける。


 俺はワインでベトベトになる。


 それを見たリア達が怒りこちらに来てしまった。



 「ちょっと私の仲間に何してるのよ!!」

 「おおっ、何だ女連れか。そんな冴えない男より俺と遊ぼうぜお前たち」

 「遊ぶわけないでしょ。ふざけないで」

 「いいから遊ぼうぜ。たっぷり楽しませてやるよ!!」



 そう言ってリアの腕を掴もうとする。


 その腕を俺は掴んで睨んだ。



 「人の仲間に手を出すな」

 「ああっ誰に物言ってやがる」

 「お前だ。だがそれより話がある。付いてこい」

 「ちっ、ここでいいだろ。話せよ」



 そう言って俺の腕を取り払う。


 そして睨んでテーブルに両足を再び乗っけてソファーにもたれかかる。



 「で? 話って何だ?」

 「リンリン卿を知っているか?」

 「ああ。あの女か。知ってるが何か?」

 「その妹のルールーを犯し殺したのは本当か?」

 「はっ。何だ急に。まあいいや教えてやる。本当だ。つい可愛くて生意気だから俺が犯してやったぜ。あいつの泣き顔は最高だったな」

 「やはり事実か」

 「だったら何だ? あいつの知り合いか?」

 「リンリン卿に暗殺を依頼されてる」

 


 俺の言葉を聞いてリーシテン卿は顔を青ざめる。



 「ちっ、冒険者に依頼しやがったか。あの屑が。おい金貨何枚出せば見逃してくれる?」

 「は!?」

 「聞こえなかったのか。金貨何枚出せばいいと聞いたんだ。どうせあいつに金で雇われたんだろ」

 「悪いが金の量ではない。冒険者として依頼はきっちり果たす」

 「ああっ。貴族を殺す気かお前たち。冒険者風情が調子に乗るなよ」

 


 次の瞬間、酒場の奥から二人のごつい体型の男が出てきた。


 そしてリーシテン卿の前に守護する形で立ちはだかる。



 「おいゴミ共を消せ」

 「はっ」

 「はっ」



 俺達に襲い掛かって来る。


 俺達はその攻撃を回避して、狭い酒場の中を動き回る。


 どうするロードするか?


 だがその心配は杞憂に終わる。


 ラフレアがバフを撒く。



 「超攻撃力アップ」



 ネールがダイヤモンドの剣で一人の男の首を刎ねる。


 スパっと首は切断された。


 切れ味が鉄の剣とは違いすぎる。


 アリスが呪術カースアビスを使用する。



 「カースアビス」



 アリスによって敵意の対象は三十秒間苦しみ動けなくなる呪いを掛けられる。


 そしてその隙に俺は鉄の剣でもう一人の男の両目を鉄の剣で突き刺した。


 そしてヴィクトリカが首を刎ねる。



 苦しんでいるリーシテン卿を見た両脇に居た美女たちは一目散に恐怖からか逃げていく。


 俺は苦しんでいるリーシテン卿を気絶させる。



 「リンリン卿もう出てきても大丈夫だ。リーシテン卿を拘束する」

 「拘束したら裏路地で屈辱を与えたいわ」

 「了解した」

 「ありがとうね」

 「いえ別に」



 俺も苛立っていたしな。


 リーシテン卿は屑すぎる。


 この様子じゃあルールー卿以外も犯したり殺したりしたに違いないな。


 ああワインでべとべとする。


 アリスがタオルで拭いてくれた。



 「悪いなアリス」

 「いえ。それよりも災難でしたね」

 「まあな。こんな屑な貴族が多くて参るな」

 「全くです。いい人もいるんですけどね」

 「母数の割に少なすぎる」

 「全くです」



 俺はこの日リーシテン卿を拘束した。


 リンリン卿の依頼はまだ終わっていない。


 全て吐き出させて屈辱を味わわせてやる。


 俺は拘束したリーシテン卿を裏路地へと運ぶ。


 そして俺は知る事となる。


 リーシテン卿が今日までに犯した罪の重さを。


 クズすぎる行いを。

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