46話 貴族から直々に頼まれました
一日休息を終えた俺達は冒険者ギルドへと赴く。
すると受付嬢から声を掛けられた。
「ホワイトアリス様ですね。少しお話が」
「うん?」
「どうぞこちらに」
そう言って裏にあるソファに座らされる。
もう次の目的地移動か?
早すぎないか?
まさかAランクに昇格はあり得ないだろうし。
一体何の要件だ?
「ホワイトアリス様にデイル国に住まわれる貴族リンリン卿から直々の依頼が来ております」
「貴族から直々の依頼!?」
「はい。ですのでリンリン卿の所へとお向かいください。地図はお渡しいたしますので」
「了解した」
「ではご健闘を祈っています」
まさか貴族からとはな。
Bランクに依頼するなんて珍しいな。
「貴族から直々の依頼って凄いんじゃないの?」
「ああ凄いよ。Bランクでは滅多に来ない。それだけこのリンリン卿からホワイトアリスが評価されているわけだ」
「何か嬉しいわね!!」
「そうだな」
俺達は喜びは後に、取り敢えずは地図に描かれたリンリン卿の場所まで向かう。
整備された道を歩いて行く。
山頂付近にある町なだけあって街並みも綺麗だ。
紅葉が宙を舞って地面に落ちる。
「ここがリンリン卿の住居か」
「綺麗ね!!」
瀟洒な中規模な家だ。
紅葉が家にくっついている。
俺はドアをノックする。
「ごめんください」
「はいはーい」
軽いノリの声がドアの奥から聞こえる。
どうやら声から察するに馴染みやすい貴族なようだ。
「貴方達がホワイトアリスね。さあさあ上がって」
「お邪魔します」
俺達はリンリン卿の自宅の中にお邪魔する。
あまり貴族らしくない家だな。
貴族の家には何度かお邪魔したことがあるが、皆自己顕示欲が強いのか自画像や豪華な絵画や時計などを家に置いていた。
正直貴族はあまり好きではない。
嫌なイメージが圧倒的だからだ。
「さあさあ座って」
「あ、はい」
「そんな畏まらなくてもいいのよ」
「お気遣い感謝します」
リンリン卿は大人びた女性だ。
俺達より一回り以上は多く人生を歩んで生きた女性だ。
黒い長髪に細長い切れ目の美人な女性だ。
貴族の割に質素な布の服を着ている。
「それで依頼とは?」
「貴方達にある貴族を暗殺してほしいの」
俺達はその言葉に驚きを隠せずつい驚きを顔にまで出してしまった。
貴族を暗殺だと!?
何を言っている!?
「それはこちらとしましてもリスクが高く」
「ええ知ってるわ。だからホワイトアリスに頼んだの。貴族を殺した経験おありでしょう!!」
リンリン卿は急に穏やかな表情から冷たい表情に変わる。
声色も大きく変化した。
まるで熱帯の火山地帯から氷河地帯に移動した気分だ。
「確かに貴族は殺した経験がおありですが」
「他にも王族に屈辱をかかせたらしいわね。私の依頼者に適任だと思うの」
「よくご存じですね」
「まあ腐っても貴族だからね。情報網はそれなりに持ってるのよ」
さてどうするか。
貴族暗殺はリスクが高すぎる。
暗殺された貴族のご家族などが報復を他の冒険者に依頼する可能性も高い。
殺すなら身を隠して行う必要があるな。
先ずは理由を聞くか。
「先ずは何ていう貴族ですか? 場所は?」
「リーシテン卿を殺してほしいの。場所はフィーフィーマウンテンから東に数十キロ先の国に住んでいる貴族よ」
「では何故殺したいのですか?」
「それは私の妹を殺したからよ。私の元婚約者だったの。でねリーシテン卿は女癖、酒癖が悪くて私の妹を無理やり犯したのよ」
「それで自殺した或いは抵抗して殺された」
「ご想像にお任せするわ。兎に角お願いしたいの。まさか断らないわよね!!」
冷たい笑顔で俺達に笑いかける。
ああ精神状態がまともじゃない。
全く面倒な依頼を寄越したものだ。
「少し仲間と相談しても宜しいですか?」
「構わないわ」
俺達は席を一旦外して相談する。
「どうする? リスクは高い」
「でも断れる雰囲気じゃ?」
「そうじゃそうじゃ。怖かったぞあの冷たい笑顔は」
「やるしかないんじゃないの」
「私は依頼を引き受けても良いかと。冒険者として割り切れます」
「私もいいよ。殺された妹さんが可哀そうだし」
「分かった依頼を引き受けよう」
俺達は依頼を引き受けることにした。
その前にセーブをしておこう。
「セーブ」
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スロット1 リンリン卿の家
スロット2 デイルの宿
スロット3 空き
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俺はスロット1に上書きセーブをした。
スロット3は空けておこう。何故かそんな予感がした。
「分かりました。引き受けます。その代わりそれに見合う報酬を頂きます」
「ええ金貨三十枚とこの剣を差し上げるわ。そこの赤いフードを被った少女の剣は見たところ鉄の剣。これはダイヤモンドの剣。全然価値が違うわ」
「前払いですか?」
「取り敢えずはね。殺害を私が確認でき次第追加で報酬を渡すわ」
「分かりました。証明はどうすれば?」
「私も付き合うわ」
「分かりました。監視も兼ねてですか」
「まあ一応ね。疑ってはないけど」
「分かりました。では準備が出来次第リーシテン卿の下へと向かいましょう」
「ええ感謝するわ」
どうやら相当リーシテン卿に恨みを持っているな。
まあ話を聞いた限りでは相当の屑に思えるが。
自分の妹を犯されて殺されたんだ当然か。
何故か関係ない俺もリーシテン卿に凄く苛立ちを覚えた。
まあリーシテン卿に地獄を見せてやるか。
俺達はその後、旅支度の準備を済ませて馬車でリーシテン卿がいるダンデル国へと向かった。
俺達【ホワイトアリス】の初めての貴族からの依頼は想像を絶する者だった。
さあリーシテン卿を殺そう。
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