40話 サレンが泣きつき縋りついてきますが知らん

 警報が鳴り、何事かと俺達は急ぎ食堂を出て警備部隊へ事情を聞く。


 

 「何かあったのか?」

 「この国に魔獣ダークドッグが出ました。急いで非難してください」

 「魔獣ダークドッグ!? どうやって? 魔法結界は?」

 「魔法結界は突き破られました。それ程危険なモンスターなのです」

 


 魔獣ダークドッグ。


 A+ランクモンスターである。


 四本足で荒野を駆けまわるモンスター。


 無尽蔵のスタミナを持つと言われる魔獣。


 皮膚は比較的柔らかく鋼の剣レベルでも十二分に攻撃が届く。



 「俺達が討伐する」

 「し、しかし。いくら英雄のホワイトアリス様と言えども」

 「大丈夫だ。それより国民の避難を頼む」

 「り、了解しました」



 俺はリア達に独断で決断してしまったことを詫びる。



 「ごめん。勝手に討伐するなんて言って」

 「全然オッケー。見過ごせないわよ」

 「謝る必要などないのじゃ。妾達で討伐じゃ」

 「国民に被害が出る前に対処は当然の事」

 「ラークは正しい判断をしました。討伐しましょう」

 「ありがとう。行くか」



 俺達は急ぎ魔獣ダークドッグの下へ向かう。


 その前にセーブしよう。



 「セーブ」



 =========================


 スロット1 ランシード王国宿屋


 スロット2 ランシード王国冒険者ギルド


 スロット3 空き


 =========================



 俺はスロット2に上書きセーブをした。



 俺達が魔獣ダークドッグの気配がする方角へ急いで向かうと反対方向から多くの国民や冒険者達が逃げ出してきていた。


 俺達は反対方向から来る逃げてくる人々の間を搔い潜り移動する。



 入口付近から魔獣ダークドッグと思われる魔力を感知する。


 感知魔法が使えなくても流石にこの異質な魔力は判別できる。


 それに人々が逃げてきた方角から逆算すると入り口付近にいるのは間違いない。



 「ラフレア今のうちにバフを頼む」

 「分かったわ。どのバフを撒けばいい?」

 「スピードアップだ。ダークドッグは防御力はない。無尽蔵のスタミナと素早さだけだからな」

 「分かった」



 ラフレアは俺の指示を受けてバフを撒く。



 「超スピードアップ」



 リアとヴィクトリカの二人はバフの恩恵を受ける。


 さあバフの効果があるうちにダークドッグを討伐しよう。



    ♦


 サレンはいち早く英雄になる為にダークドッグの下へと向かった。


 サレンは今でこそソロ冒険者だが前はパーティーに所属していた。


 そこのパーティーでAランクまで何もせずぼーっと突っ立ってるだけでいた。


 パーティーを利用したのだ。


 サレンは実力がない。


 だが自分自身はプライドが高く実力があると思い込んでいる。


 いつもパーティーメンバーに自分のお陰だと言っていたし周囲にも自分のお陰だと自慢していた。



 「見つけた。俺が英雄になるんだ」



 サレンは腰に帯同した鋼の剣で魔獣ダークドッグに挑む。


 だが余裕で回避され噛みつかれる。



 「いてええええええええええええええええええ」



 サレンの首を魔獣ダークドッグが噛む。


 それと同時にラーク達が来た。


    ♦


 俺はサレンが噛まれているのを見た。


 もう助からないと悟った俺は放っておくことにした。


 どの道ろくでもない奴だしな。



 「た、助けてくれえええええ」

 「知らん」

 「ふざけるなああああああああああ。俺を誰だと思っていやがるこのゴミくずがあああああああ」

 「悪いが知らん。実力ないのに挑むからだろ」



 俺は突き放した。


 こいつの為にやり直す気にはならなかった。


 善人ならやり直していたが俺の仲間を奴隷にしてやるなどを言った奴を俺は許せなかった。


 水掛けられたぐらいなら許したんだがな。



 「ぐわあああああああああああああああああああ」



 サレンは泣きじゃくりながら首を噛まれ死亡した。



 「リア、ヴィクトリカ。足を一本でもいい切りおとしてくれ」

 「オッケー」

 「うむ、了解じゃ」



 俺は視線誘導の為持っていた短剣を魔獣ダークドッグへ投げつけた。


 ダークドッグは俺が投げた短剣を余裕で回避したが、視線誘導には十分だった。



 「はああああああっ!!」

 「とりゃああああっ!!」



 リアとヴィクトリカが全力で切りかかり足を二本切り落とす。


 よしナイスだ。



 「止めの一撃を頼む」

 「ええ」

 「分かったのじゃ」



 魔獣ダークドッグが二本足を切り落とされた事でバランスを崩し地面に寝転がる。


 その一瞬の隙にラフレアのバフの恩恵を受けたリアとヴィクトリカが止めを刺す。


 魔獣ダークドッグは背中をグサリと深く刺されて呻き声を上げて絶命した。



 「ナイスだ。凄かったぞ」

 「ラークのセーブ&ロードの能力があるから心に余裕が生まれて実力が上がったのよ」

 「そうじゃ。お主のお陰で心に余裕が生まれているのじゃ」

 「そうなのか?」

 「そうよ。自信もって」

 「そうじゃ妾達の要じゃぞ」

 「ありがとう」



 俺はリアとヴィクトリカの言葉に嬉しくなって少しだけ照れた。


 ああこのパーティー本当に居心地がいいな。


 俺今凄く楽しいな。



 「セーブ」



 =========================


 スロット1 ランシード王国宿屋


 スロット2 ランシード王国入り口付近


 スロット3 空き


 =========================



 俺はスロット2に上書きセーブをした。


 俺達は見事魔獣ダークドッグを討伐した。



 そして冒険者ギルド側から通達を受ける。


 

 「ホワイトアリス様はランシード王国冒険者ギルド支部で実力を証明しましたので次の目的地に移動してください」

 「次は何処だ?」

 「山頂付近にあるデイルと呼ばれる小国で御座います。ここから東に数十キロの地点にそこそこの大きさの山がありますのでその山頂付近に行ってください」

 「了解した」

 「ではご健闘を祈っています。それとここを救ってくださりありがとうございます」

 「こちらこそ色々ありがとう」



 俺達【ホワイトアリス】はこうしてランシード王国での冒険を終える。


 次の行先は山頂付近の小国デイル。


 俺も行ったことないから楽しみだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る