33話 ランシード国の国王陛下に罵倒されました

 昨日武器屋でカースケインを貰い、鋼の剣を購入。


 防具屋で鉄の鎧を二つ購入した。


 女性用に重さも軽く、デザインもアレンジされている。


 鉄なのだが魔法により軽く、特殊な形に変形されていて戦闘でもスムーズに動ける。


 それでいて防御力も高い。



 「特殊な魔法を使う人もいるんですね」

 「鍛冶師とかに多いよ。そのままの素材だと重くて動きづらいとかあるから調整する魔法を使用できるんだ」

 「憧れます」



 鍛冶師は鍛錬を積んで武器や防具を魔法で作る。


 その際男性用や女性用、またはオーダーメイドで分別して調整する。


 その際に重さを軽くしたりデザイン作りの為特殊な魔法を使用する。


 まあ俺は詳しくは知らないが。



 「冒険者ギルドに行くか」

 「はい」



 昨日一日はアリスの呪いの事もあってか一応心配で休息日にした。


 露天商の食料市場でヴィクトリカに食べ物を買ってあげたり、俺達の食事代や宿代を支払ったため、殆ど手持ちが残っていない。


 だからクエストで稼がなければ行けないのだ。



 「何か騒がしいな」

 「何かしらね」



 俺達が冒険者ギルドに足を運ぶと何やら冒険者ギルド内が騒がしい。


 市民街の通りは騒がしくなかったのだが何故だ?



 「皆クエストボードを見ておるぞ。何なのじゃ?」

 「見てみるか」



 俺達は冒険者の人だかりの中に割って入ってクエストボードを見る。


 するとクエストボードの中心に大きな貼り紙でクエストが貼りだされていた。


 その内容は驚きの内容だった。



 ==========================


 ランシード国王陛下守護 金貨20枚


 危険度★★★★★★★★


 待遇 豪華な食事に寝床


 依頼主 宰相ルーティア


 ==========================



 ランシード国王陛下守護って一体どういう事だ。


 あの傲慢な国王に何かあったのか?



 「それ何か裏があるぜきっと」

 


 俺にそう話しかけたのはソロ冒険者のエーディン。


 ショートヘアーで安物の装備を身に着けている男だ。



 「裏がある?」

 「普通依頼主の名前もセットで分かるんだが、この依頼主誰だか分かるか?」

 「えーと。宰相ルーティア」

 「そうだ。宰相と言えばこの国でかなりの偉い役職。それが直々に依頼を出しているんだぜ。怪しすぎだろ」

 「国王陛下に何かあったのか……」

 「多分何かあったんだろうな。だけど内容が分からねえ。だからここにいる冒険者は手を出さないのさ」

 


 そしてエーディンは「お前たちもやめておけ」と言って去っていった。


 まあ俺はあの傲慢な王に関わる気はないのでスルーだが。


 と思っていたらヴィクトリカがそれに食いついた。



 「妾はやるぞ。豪華な食事つきじゃ。それに金貨二十枚じゃぞ」

 「いや待て。冷静に考えろ、怪しすぎるだろ」

 「大丈夫じゃ。お主がおる」

 「ううっ」



 俺はヴィクトリカの上目遣いでの頼みに断れずにいた。


 ヴィクトリカを後押しするように、リア達が肯定の意を示す。



 「いいんじゃない。金貨二十枚だし」

 「私もいいよ。豪華な寝床楽しみ」

 「カースケインがあれば大丈夫です。それに何よりラークがいますから」

 「そうそうラークがいるしね」

 「ラークがいるから大丈夫」



 全員俺に上目遣いで見てくる。


 滅茶苦茶可愛い。


 これを断るのは無理だな。



 「じゃあ受注するか」

 「あ、でもラークってここの王家に……」

 「向こうは覚えてないだろ。俺もクエストの為と割り切れる」

 「ごめんね。嫌な思いさせてたら」

 「いや全然。金貨二十枚は魅力的だからな」

 「ありがとう」



 リアだけでなくヴィクトリカ、ラフレア、アリスが俺にお礼を言う。


 どうやら俺を心配して思っていてくれているようだ。


 凄く嬉しい。



 「本当に受注するの?」

 「マジか。受注するパーティーがいるとは」

 「度胸あるわね」



 他の冒険者たちが俺達を見てざわつき始める。


 どうやら目立ってしまったようだ。


 まあ気にしない気にしない。



 クエスト受注後俺達は警備隊に囲まれて王族城へと向かう。


 どうやら俺達の事も一応警戒しているようだ。


 王族城に潜り込む為わざとクエストを受注する可能性も考慮しての事だろうな。



 「案内ご苦労様です。ここからは私が」

 「はい。宜しくお願いします」



 王族城の門を潜り抜けた後、一人の美人な女性と出会う。


 長い青髪に長い整ったまつげ、宝石のように輝く青い瞳。


 鋭い目つきをしている人物。



 「私はこの国の宰相ルーティアです」

 「俺達は何から守ればいいんだ。国王陛下を」

 「それは国王陛下の前でお話致します」



 そう言って俺達は厳重な魔法結界の中に存在する王族城へと足を踏み入れる。


 豪華な飾りが廊下を飾る。


 高そうな絵画に壺など置かれている。



 「ここが国王陛下の間です。失礼なきようお願いします」

 「ああ」

 「失礼します。宰相ルーティアです」



 俺達が国王陛下がいる広間へと入る。


 そこには豪華な椅子に座っただらしない腹の王様が存在した。


 何故か震えているが。



 「国王様連れてまいりました」

 「おお。随分早かったな。これで私も安心して夜を眠れる。ところでお前たちは何ランクだ。勿論Sランクであるな」

 


 国王陛下の問いに俺は淡々と答える。



 「いえCランクですが」

 「何だと!? いらんわゴミが」

 「は!?」

 「Cランクなど糞の役にも立たない冒険者だろうが」



 俺は内心苛立ちを覚えた。


 相変わらず傲慢だな。


 歳を重ねてますます傲慢になってやがる。



 「お言葉ですが国王様。現在このランシード王国にはSランクパーティーは存在しません。仕方ないかと」

 「じゃあせめてAランクを寄越せ」

 「引き受けてくれたのがこのホワイトアリス様のみでした」

 「この役立たずが」



 宰相ルーティアは陰で大きくため息をついた。


 何だこいつ殺してやりてえ。


 同じことを俺とルーティアは内心思っていた。



 執務室で宰相ルーティアが俺達に謝罪する。



 「すみませんでした。うちの国王がご無礼を」

 「いや知ってたからいい。それより俺達はどうすればいいんだ?」

 「守護をお願いします」

 「分かった継続だな。それで何から守護すれば?」

 「王を狙う何者かからです」



 俺達は金貨二十枚の為傲慢で器が小さくクズな国王陛下の守護をすることになった。


 そして国王陛下はまだ知らない。


 【ホワイトアリス】の実力を。


 そして自身が屈辱を味わう事も。


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