32話 アリスには呪いは効きません
俺達は道中の露天商の食料市場で食べ物を買おうとしたヴィクトリカを制止する。
ヴィクトリカには悪いが武器優先だ。
「何でじゃあ。妾は食べたいのじゃ」
「武器と防具買ってからだ。我慢しろ」
「ううっ。妾は腹が減ったのじゃあ」
「武器と防具買ったら好きなだけ買ってやるから」
「本当じゃな!!」
「ああ本当だ」
「それなら我慢しようではないか」
金貨四枚程持ってるが武器の値段がどれくらいか俺は覚えていない。
というか覚えても意味が無い。
時勢によって値段など変わるからだ。
武器屋に入ると沢山の武器が並んでいた。
そして客も多く存在する。
「鉄の剣よりいいのってどんなの?」
「うーん、鋼の剣とか、鉄の剣+とか、ダイヤモンドの剣とかまあ色々ある」
「金貨四枚で買えるの?」
「多分買えると思うが保証はしない」
「まあそんなに甘くないよね」
俺達は店に並んで置かれている武器を見ていく。
木の棒から銀の剣まで存在した。
「銀の剣金貨2枚って高いな」
「これ二つ買ってしまったら妾の食べ物代が無くなってしまうぞ」
ヴィクトリカが上目遣いで俺を見てくる。
買うなと暗示している。
「全部所持金使ったら流石にやばいだろ。大丈夫だ残しておく」
「ラーク、大好きじゃあ」
「分かったからここではくっつくな」
「ここじゃなければよいのか?」
「別にそういう意味ではないが」
俺とヴィクトリカがじゃれているとラフレアが何かを見つけた。
「ねえ、あそこのスペースおかしくない?」
「本当ですね。何か不自然に空いています」
「あれって何か前は置かれてたんじゃないの?」
「買われたんでしょうか?」
いや買われたのなら新しく補充する筈だ。
何故空白のスペースがそこに。
店主に聞いてみるか。
「少し聞きたいんだがいいか?」
「何だね。何でも聞いてくれ」
「あそこの空白のスペースには何があったんだ?」
「ああそれか。勘が鋭いね。あそこには呪われた杖が置かれてたんだ」
「呪われた杖?」
「カースケインという杖でね。何でも所持者を呪う杖だとか」
「事実なのか? 噂ではなくて?」
「ああ事実だよ。現に所持者はすぐに皆死んでる。呪われてるのさ」
「今はどこに?」
「何欲しいの?」
「いやい――」
俺がいらないと言おうとした瞬間急いでバックヤードへと戻っていく。
まさかここにあるのか!?
「これなんだけど」
俺達の目の前に頑丈なケースに入れられた真っ黒い杖が存在する。
これがカースケイン。
「運悪くうちに回って来てね。最初は他の武器と一緒に並べてたんだけどお客さんが気味悪がっちゃって。しかもこれを置いた場所に何か置くのは嫌だろ」
「成程ね。取り敢えず買わないんでしまってくれ」
「良ければタダであげるよ」
「いやいらな――」
そう俺が拒否しようとした時、アリスが意外な言葉を発する。
「私が貰います」
「え!? いいのかい!!」
「私何故かこの杖に惹かれるんです」
「うちとしては嬉しいんだが、本当にいいのかい?」
「はい」
俺達は一旦保留にしてアリスに聞く。
「おい大丈夫なのか? あれ呪われてるんだぞ」
「そうよ。所有者は皆死んでるのよ」
「そうじゃ。妾はアリスが死ぬのは嫌じゃ」
「何に惹かれるの?」
「分かりませんが大丈夫と言っています。まあ杖は喋らないんですけどね」
どうする。一応セーブしとくか。
「分かった。俺はアリスを信じる。だが万が一の為セーブしておくぞ」
「お願いします。ラークありがとうございます。皆も心配してくれてありがとうございます」
「分かったわ。アリスを信じる」
「妾も信じてみよう。第六感は大丈夫じゃと言っているしのう」
「私も信じてみる」
こうして俺達はアリスを信じることに決めた。
「セーブ」
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スロット1 ランシード王国冒険者ギルド
スロット2 ランシード王国武器屋
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俺はスロット2に上書きセーブをした。
そしてついでにカースケイン以外に鋼の剣を二つ、金貨二枚のところお礼も兼ねてか半額で売ってもらった。
よって金貨一枚で鋼の剣二つを購入した。
頑丈なケースから出してアリスがカースケインを持つ。
「軽くて私にピッタリです」
「よかった、何も起きてないな。呪いは直ぐに発動するんだよな?」
俺の問いかけに店の人は「その筈なんだけど」と困り顔で言った。
「全然普通です。何か強くなった気がします」
「そうか、ならよかった」
「心配してくれて嬉しいです」
「当然だろ大切な仲間なんだから」
結局この日一日アリスは呪われる事は無かった。
どうやらアリスには呪い耐性があるようだ。
「私に呪いは効きません」
アリスがそうどや顔で言った。
そのどや顔は凄く可愛かった。
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