第40話 旅の再開

しかし、それも束の間のことで、すぐに現実に引き戻されると同時に、

彼女たちの正体についても理解することになる。

というのも彼女たちは、全員エルフと呼ばれる種族の女性達だったからだ。

しかも、その中でも特に優れた力を持つ者だけが集うとされる聖樹の館に

住む選ばれし者達であるというのだから驚きである。

その証拠に、彼女達の周囲には、凄まじいまでの魔力を感じることができ、

その力の大きさを実感させられたほどであった。

中でも、特に印象に残ったのは、中心にいた人物であった。

その姿は美しく可憐でありながら、内に秘めた強さを感じさせるものであり、

まさに物語に登場するお姫様のような佇まいを見せていた。

そんな彼女に目を奪われていると、不意に声をかけられ、慌てて姿勢を正すことになる。

幸いにも機嫌を損ねることはなかったようで、ホッと胸を撫で下ろすことができた。

その後、簡単な自己紹介を済ませた後、改めて、

今の状況について説明を受けることになったのだが、その内容は驚くべきものだった。

なんと自分達は、この世界の創造主によって召喚されたのだというのである。

しかも、それだけではなく自分たちが選ばれた理由は、

この世界で生きる上で必要不可欠なものを手に入れるためであり、

そのためにわざわざ呼び寄せられたのだというではないか。

最初こそ半信半疑だったが、

話を聞くうちに徐々に現実味を帯びてくるようになり、

同時にこれから起こるであろう出来事に対する期待感が高まっていった。

そして、ついにその瞬間が訪れることになる。

それは、突然の出来事であった。

まるで地震が起きたかのような激しい揺れが起こり、

立っていることすら困難な状況に陥ったのである。

その直後、耳をつんざくような轟音と共に建物の一部が崩れ落ちていき、

瓦礫の山と化した箇所からは、大量の煙が立ち上っていた。

その光景を見た人々はパニックに陥り、我先にと逃げ出していったのだが、

そんな中ただ一人、その場に留まり続ける者がいた。

その人物とは、何を隠そう自分だったのである。

何故、そんなことをしたのかと言われれば、

自分でもよくわからないとしか言いようがないのだが、

強いて言うならば、ここで逃げてはいけないような気がしたからかもしれない。

それに、周りにいた仲間たちからも引き止められてしまったため、

逃げるタイミングを逃してしまったというのも理由の一つとして挙げられるだろう。

そんなこんなで、なし崩し的にその場に留まざるを得なくなってしまったのだが、

この状況は非常にマズイと言えるだろう。

何故なら、目の前には巨大なドラゴンがおり、今にも襲いかかってきそうな状況だからだ。

しかも、どういうわけか、自分には戦う力があるらしい。

とはいえ、実戦経験のない自分では到底敵う相手ではないと思うのだが、

どうしたものかと考えている間にも刻一刻と時間は過ぎ去っていくばかりであった。

仕方ない、こうなったら覚悟を決めるしかないだろう。

そう思い一歩前に踏み出そうとした瞬間、突然、後ろから声をかけられた。

振り返ると、そこにいたのは、幼馴染の少女であり、

自分は彼女との思い出を振り返るかのように語り始める。

最初はただ懐かしい気持ちに浸るだけであったが、

話しているうちに段々と気持ちが抑えられなくなっていき、

最後には涙ながらに告白してしまう。

それを聞いた少女は、微笑みながらも真剣な眼差しを向けてくる。

その表情を見た瞬間、心臓の鼓動が激しく高鳴り始め、顔が熱くなるのを感じた。

そして、お互い見つめ合う形になり、

しばらくの間沈黙が続く中、最初に口を開いたのは少女の方だった。

その言葉を聞いた瞬間、嬉しさのあまり涙が溢れ出しそうになるが、ぐっと堪えることに成功した。

なぜなら、ここで泣いてしまっては、相手に失礼だと思ったからだ。

だから、あえて強がるような態度を取ってみせたのだが、

そんな私の気持ちを察してか、優しく微笑みかけてくれる姿を見て、

胸の奥底から熱いものが込み上げてくるような感覚を覚える。

きっと、この人は私のことを心から想ってくれているのだということが伝わってきたからこそ、

余計に涙が溢れてきたのだろう。

だけど、ここで泣くわけにはいかないと思い、必死に我慢しようとするものの、

次から次へと溢れ出してくる涙を止めることができず、結局、最後まで泣き続けてしまったのだった。

それでもせめて最後くらいは笑顔でお別れしたいと思い、

涙を拭いながら、精一杯の笑顔を浮かべてみせたところ、

彼女もまた同じように微笑んでくれるのを見て、少しだけ救われたような気分になった気がした。

それからしばらくして、ようやく落ち着きを取り戻した私は、最後に一言だけ告げることにした。

ありがとう、さようなら。

その言葉を最後に、再び背を向けると、今度は振り返ることなく歩き出すことにした。

もう二度と会うことはないだろうけど、それでも構わないと思ったからだ。

だって、こんなにも素敵な出会いができたのだから。

それだけで十分幸せだと思えたから。

だからこそ、後ろ髪を引かれる思いを断ち切るようにして歩みを進めることにしたのだ。

そうすると、その時、背後から声が聞こえてきたような気がしたのだけれど、

きっと気のせいだろうと思い、そのまま足を進めることにした。

そして、どれくらい歩いただろうか?

いつの間にか辺りはすっかり暗くなっており、視界が悪くなっていたこともあって、

これ以上進むことは難しいと判断した私は、近くにあった木の下で一夜を過ごすことに決めた。

翌朝、目を覚ますと、見慣れない景色が広がっていた。

どうやら、昨日の記憶が曖昧になっており、どうやってここまで来たのかも覚えていない状態だった。

ただ一つ言えることは、ここがどこなのかすら分からないということである。

とりあえず、ここがどこなのかを知るためにも周囲を探索してみることにした。

そうすると程なくして、小さな村を発見した。

そこの住人たちは、皆、親切に接してくれて、

さらには、泊まる場所まで提供してくれることになったのだ。

その後、数日ほど滞在させてもらった後、旅を再開することにした。

道中、何度も道に迷いそうになったものの、

その度に、村人達が助けてくれたおかげで、なんとか目的地まで辿り着くことができた。

そこで目にしたのは、かつてないほどの規模を誇る大都市の姿だった。

その光景を見て感動していると、一人の女性が声をかけてきた。

「ようこそ、お越しくださいました。

歓迎いたしますよ」

そう言われて驚いたものの、不思議と嫌な気分にはならなかった。

むしろ、嬉しい気持ちの方が大きかったくらいだ。

その後、案内されるがままに付いていくと、辿り着いた先は大きな城の中の一室であり、

そこには王様らしき人物が待ち構えていた。

彼は、私のことを見るなり、嬉しそうに微笑むと話しかけてきたのである。

なんでも私を呼び出したのは他でもない、

この国の王女であるらしく、

ぜひとも会ってもらいたい人がいると言われた時には、嫌な予感しか感じなかった。

そして、実際に対面してみると、

そこに立っていたのは、どう見ても子供にしか見えない女の子だったのだ。

しかもその容姿ときたら、まるで人形のように整った顔立ちをしており、

透き通るような白い肌も相まって、どこか神秘的な雰囲気を漂わせていた。

そんな彼女を前にして呆然としていると、突然、名前を尋ねられたので、

咄嗟に名乗ってしまったところ、 何故か嬉しそうな表情を浮かべられてしまう始末である。

一体どういうことなのかと思っていると、今度は、別の部屋に案内されることになった。

そこで待っていたのは、先ほどの少女と同じくらいの年齢と思われる少年であり、

彼もまた私の顔を見るなり、満面の笑みを浮かべてきたのである。

そんな彼の反応を見て戸惑ってしまうものの、

何とか平静を保ちつつ、話を聞こうとした矢先、

突然、抱きしめられてしまい、さらに混乱することになってしまった。

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女王だった筈なのに転生すると奴隷ってどういう事よっ~あぁっ私の主よっ、何なりとご命令下さいませ~ 一ノ瀬 彩音 @takutaku2019

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