第39話 私と魔法

その理由というのが、元の世界に帰る方法が判明したというものだった。

なんでも、この世界にやって来た方法と同じ方法で帰ることが可能だということが判明したらしく、

今すぐにでも実行することができるということだった。

それを聞いて、最初は喜んだものの、いざとなると、

なかなか踏ん切りがつかないもので、結局、その日は、答えを出せないまま終わってしまったのである。

翌日、悩み抜いた末、答えを出すために、もう一度会う約束を取り付けると、

早速、その場所へと向かうことにしたのである。

そこは、いつもと変わらない風景が広がっている場所で、初めて出会った場所でもあった。

そこで待っている間、ずっと考えていたことだが、

やはり、自分の気持ちに従うべきだと思ったため、意を決して話しかけることにした。

そうすると、向こうも待っていたと言わんばかりに、笑みを浮かべて出迎えてくれたのである。

それを見て、ますます嬉しくなり、勢いに任せて抱きついてしまったのだが、

相手は嫌がる素振りも見せず、優しく受け止めてくれたばかりか、

逆に、こちらの頭を撫でてくれて、それがまた嬉しくて仕方がなかったのである。

そんなやり取りの後、いよいよ本題に入ることにした。

もちろん、ここに来た目的は、昨日の出来事に対する返事をするためだ。

正直言って、まだ迷っていたが、いつまでも先延ばしにするわけにもいかないと思い、

勇気を出して伝えることにしたのである。

「あの、この前の話なんだけど、

もし良かったら、これからもずっと一緒にいてほしいなって思ってます!」

そう言って、相手の目を真っ直ぐ見据えたまま、返事を待った。

果たして、どんな反応を見せるのだろうかと期待しながら待っていると、

やがて、口を開いたかと思うと、予想外の言葉を告げられることになる。

「私も、あなたのことが好きよ。だから、喜んでお付き合いさせてもらうわ」

その言葉に、思わず涙が出そうになったけれど、

グッと堪え、笑顔を見せることで精一杯だった。

こうして、晴れて恋人同士になった二人は、

その後も、幸せな日々を過ごすことになるのだが、

その一方で、新たな問題が発生しようとしていたことなど知る由もなかったのである。

ある日のこと、いつも通り、二人で仲良く過ごしていた時のこと、

突然、相手がこんなことを言い出したのだ。

曰く、最近、自分の周りで妙な出来事が続いているのだという。

具体的には、誰もいないはずの部屋から物音がしたり、

物が勝手に動いたりするといった現象が起きているそうなのだ。

初めは、気のせいだと思っていたそうだが、

日に日に頻度が増してきていることから、

さすがに怖くなって相談してきたというわけである。

話を聞いた限りでは、確かに気味が悪い話だとは思うが、

だからといって、自分にできることは何もないし、

そもそも、幽霊なんて存在するかどうかもわからない存在を相手に、

どう対処しろというのかという話である。

とはいえ、このまま放置しておくわけにもいかず、

ひとまず、様子を見に行くことになったわけだが、

案の定というか何というか、特に異常はなかったわけで、

そうなると、後はもう、専門家に任せるしかないということで、

知り合いの魔法使いに相談してみた結果、原因を突き止めることができただけでなく、

解決策まで提示してくれたおかげで、無事に解決することができたわけなのだが、

その際、お礼として渡されたものが、なんと、魔法のアイテムだったのである。

これには、二人とも大喜びしたのだが、問題はその後に起きた。

何と、そのアイテムを使用した途端、いきなり、視界が歪み始めたかと思うと、

次の瞬間には、見たこともない場所に飛ばされてしまっていたのだ。

しかも、目の前にいたのは、今までに出会ったことのないような美女たちばかりだったので、

一瞬、夢でも見ているのではないかと錯覚してしまったほどだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る