第38話 彼女との別れ
次に目を覚ました時、真っ先に飛び込んできた光景は、
薄暗い部屋の中にあるベッドの上で、素肌のまま寝転がっている自分の姿だった。
(ここは一体どこなんだろう?)
そんな疑問を抱きつつ、起き上がろうとした瞬間、全身に激しい痛みが走り、思わず呻き声を上げてしまった。
どうやら、怪我をしているらしく、身体中包帯だらけになっているようである。
どうしてこんなことになっているのか、さっぱりわからなかったものの、
とにかく、状況を把握する必要があると考え、行動を開始することにした。
まずは、ここがどこなのかを確かめるべく、周囲を見渡してみることにする。
部屋の広さは約十畳ほどあり、天井の高さは三メートル近くあった。
そして、部屋の隅に置かれたベッドの上に、自分が横たわっていることがわかった。
どうやら、このベッド以外には、家具らしき物は置かれていないようだった。
その他に目についたものと言えば、壁一面に設置された本棚くらいのものである。
試しに、ベッドから降りて、歩き回ってみることにする。
少し痛むものの、動けないほどではないと判断し、ゆっくりと足を踏み出した。
そして、ある程度進んだところで、ふと、何かの視線を感じたような気がして、後ろを振り返ってみる。
そうすると、そこには、一冊の本が置かれていたことに気がついた。
気になって手に取ってみると、表紙には、『禁忌の魔法』と書かれていることがわかる。
タイトルの下に書かれた説明文を読んでみると、次のようなことが書かれていた。
どうやら、この本には、魔法に関する様々な知識が記されているようだが、中には、危険なものもあるらしい。
例えば、相手を意のままに操れる催眠術や、人の心を読むことができる読心術などがあるそうだ。
その他にも、物体を自由に移動させたり、動物を操ることも可能らしい。
そこまで読んだところで、一旦、本を閉じ、元の場所に戻すことにした。
他にも、色々な魔法が載っているようだが、今は、それどころではないため、
また後で確認することにしようと思う。
次に、この部屋の構造について調べてみることにした。
見たところ、窓はなく、出入り口の扉が一つあるだけのシンプルな造りになっているようだ。
また、部屋の中にあるものといえば、今いるベッドの他に、
テーブルや椅子などの調度品が置かれている程度で、特に変わったものはないように思えた。
だが、唯一、気になる点があるとすれば、部屋の隅に置かれた鏡台の存在だろう。
一体、何のために置かれているのかは不明だが、
なんとなく不気味な感じがしたため、あまり近づかないようにしようと思う。
そうして、一通り、部屋の中を調べ終わったところで、次は、自分自身について考えてみることにした。
まず、一番初めに思い浮かんだことは、自分の名前や年齢、住所など、基本的な情報についてだった。
しかし、いくら思い出そうとしても、何一つ思い出すことができなかったのである。
次に、自分が着ている衣服を確認してみたところ、
下着姿の上に、薄いシーツ一枚だけという状態だったため、
恥ずかしくなったものの、それ以外には特に変わったところは見られなかった。
とりあえず、ここから脱出するためには、まずは、
この拘束を解いてもらう必要があると思い、行動を起こすことにした。
まず、手足を動かしてみるものの、しっかりと固定されているせいか、ビクともしない状態であった。
そのため、仕方なく、自力で抜け出すことは諦めることにして、誰か来るのを待つことにしたのである。
それから、数時間が経過した頃、ようやく、待ち望んでいた瞬間が訪れたのだ。
部屋の扉が開かれたと思ったら、そこから、一人の女性が現れたのである。
彼女は、こちらに気づくなり、驚いたような表情を見せた後、慌てた様子で駆け寄ってきた。
そんな彼女に対して、助けを求めるように声をかけると、
彼女は、ホッとした様子を見せた後、 急いで駆け寄ってきて、拘束を外してくれたのである。
やっと自由の身になれたことで、ホッと胸を撫で下ろしていると、突然、抱きつかれてしまった。
突然のことに戸惑いながらも、彼女の背中に手を回し、抱きしめ返すようにして応えると、
それに応えるように、さらに強く抱きしめてきたのである。
しばらく、そうした状態が続いた後、満足したのか、
ゆっくりと離れてくれたので、ホッと息をつくことができた。
その後、改めて、彼女にお礼を述べると、照れ臭そうに微笑み返してくれたので、
こちらも自然と笑顔になることができた。
その後、お互いの自己紹介を済ませた後、彼女から、この場所についての説明を受けた。
なんでも、ここは、とある国の王城内にある図書室らしいとのことらしい。
しかも、ただの図書室ではなく、貴重な書物が数多く保管されている場所なのだとか。
ちなみに、今いる場所は、その一部屋を借りて作ったもので、
主に、王族のみが利用できる特別な空間となっているのだという。
そのため、ここに立ち入ることができる者は限られているらしく、
自分以外に、許可なく立ち入れる者はいないと言われた時には、思わず驚いてしまったものだ。
しかし、同時に納得できる部分もあったため、素直に受け入れることにした。
そして、肝心の目的について尋ねてみると、返ってきた答えは意外なものであった。
何でも、偶然見つけた文献の中に、自分と同じ境遇の人間がいることを知ったため、会いに来たというのだ。
つまり、彼女もまた、この世界とは異なる世界からやってきた人間ということらしい。
そのことを聞いた時は、とても驚いたものだが、それと同時に、親近感を覚えたのも事実である。
それからというもの、毎日のように顔を合わせるようになり、
お互いのことについて語り合ったり、一緒に遊んだりと、楽しい時間を過ごしていたのだが、
そんなある日、突然、別れの時がやってきたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます