第37話 助けてくれた女性

一方で、噛みついた張本人であるはずの女性は、悪びれることなくニコニコとしていたかと思えば、

急に真顔になり、低い声で囁いてきたのだ。

その言葉を聞いた瞬間、背筋がゾクッとなり、恐怖のあまり震え上がってしまうほどだった。

しかし、それでも、まだ諦めきれずにいる自分がいて、

必死になって抵抗しようと試みるものの、全く歯が立たないどころか、

むしろ逆効果にしかならず、より一層、強く抱きしめられることになっただけだった。

それでも、なんとか逃れようと藻掻いているうちに、

今度は首筋を舐められて、またもや声が出そうになるのを堪えていると、耳元で囁かれたのだ。

その内容を聞いて、絶句してしまうしかなかった。

なぜなら、彼女が口にした言葉は、あまりにも衝撃的すぎて、信じたくなかったからだ。

しかし、何度確認しようとしても、結果は同じであり、疑いようがなかったのである。

その事実を知った瞬間、絶望に打ちひしがれていると、

追い討ちをかけるかのように、更なる言葉が紡ぎ出された。

それを聞いた瞬間、目の前が真っ暗になり、何も考えられなくなった。

ただ、一つだけ理解できたことがあるとすれば、

自分は、これからとんでもない運命に巻き込まれようとしているということだけだった。

そして、その時が来たことを悟り、覚悟を決めることにしたのである。

決意を固めた後、ゆっくりと目を閉じ、静かに待つことにした。

どのくらい時間が経っただろうか、いつまで経っても、

何も起こらないことに疑問を抱き、恐る恐る目を開けてみると、

視界いっぱいに広がった光景を見て、思わず言葉を失ってしまった。

何故なら、そこに立っていたのは、紛れもなく、先ほどまで話をしていたはずの女性だったからである。

一体、どういうことなのか分からず困惑していると、不意に声をかけられた。

どうやら、意識が戻ったことに気付いたらしい。

それなら、一安心だと思ったのも束の間、すぐにまた、

おかしな状況に陥ってしまったことに気づかされた。

というのも、目の前にいる女性の様子がおかしいと感じたからだ。

具体的に言うと、瞳が紅く輝いており、妖しい雰囲気を漂わせていたのである。

その様子を見ているだけで、不安と恐怖が入り混じった複雑な感情が湧き上がってきた。

だからこそ、一刻も早く逃げなければと考えたものの、身体が思うように動かず、

その場に蹲ったまま動くことができなかった。

それどころか、呼吸すらままならない状態に陥ってしまったようで、

次第に意識が遠のいていくのが分かった。

そんな状況下で、最後の力を振り絞って、助けを求めようとしたものの、

口から出たのは小さな呻き声だけだった。

もはや、これまでかと思った瞬間、突如として現れた何者かによって、

抱きかかえられ、その場から連れ出されることとなった。

薄れゆく意識の中、最後に見たものは、心配そうにこちらを見つめる女性の姿で、

その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいるように見えた気がした。

それから先は、何も分からなくなった。

気がつくと、見知らぬ部屋にいた。

窓から差し込む光が眩しく感じられ、思わず手で遮ろうとするも、腕が動かないことに気づく。

よく見ると、両手両足共に拘束されており、身動きが取れないことを悟った。

それでも、何とか抜け出そうと、身を捩っていると、部屋のドアが開き、

誰かが入ってくる気配を感じ取った。

反射的にそちらに目を向けると、そこには、見知った顔があった。

その人物とは、他でもない、自分を助けてくれた恩人だったのだ。

彼女は、笑顔で話しかけてきたが、その目は笑っておらず、どこか不気味さを感じさせるものだった。

そんなことを考えているうちに、再び、身体の自由を奪われ、抵抗することすらできなくなっていくのを感じた。

このままではまずいと思い、必死に叫ぼうとするものの、口が塞がれているため、

声にならない叫びを上げることしかできなかった。

その間にも、どんどん状況は悪化していき、最終的には、

何も考えられなくなり、完全に意識を失ってしまったのだった。

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