第31話 私と彼女の関係
けれど、それが誰なのかは全く分からない状況で、
今の自分が置かれている立場さえも分からないという有様です。
おまけに、手枷を付けられていて、思うように動くこともできません。
この状況を打破するには、何かしらの行動を起こす必要があると判断し、
周囲を探索することにしました。
と言っても、やれることと言えば、せいぜい壁伝いに移動してみることだけです。
せめて、現在地だけでも把握しようと歩き続けているうちに、
ふと一つの考えが浮かび上がりました。
もしかすると、ここの住人に協力を求めることで、
脱出のための足掛かりになるかもしれないという考えに至り、
早速実行に移すことに決めたのです。
とはいえ、具体的にどうやって接触すればいいのか、という問題が出てきます。
いきなりドアを開けて入ってくるわけにもいかず、
かといって、正面から訪ねるのも躊躇われます。
何か方法はないものかと思案を巡らせた後、ようやく一つの案が浮かんだので、
早速実行に移してみることにしました。
部屋を出て、廊下を真っ直ぐ進んでいくと、
突き当たりにドアが見えたので、思い切って声をかけてみることにしました。
「すみませーん、誰かいませんかー?」
そう呼びかけてみたものの、反応はなし。
もう一度呼んでみても、結果は同じでした。
困り果てながらも、諦めずに何度も繰り返していると、
不意に背後から声をかけられました。
驚いて振り返ると、そこには一人の少女が立っていました。
年齢は10代後半といったところでしょうか、身長はやや低めで、
華奢な体格をしているものの、出るところは出ているといった印象を受けます。
服装は、白いシャツの上に紺色のベストを重ね着しており、
下は黒いスカートを着用していました。
髪型は、肩にかかるくらいのセミロングヘアで、前髪の一部が長く伸びており、
右目が隠れているのが特徴的です。
全体的に落ち着いた雰囲気を感じさせる少女でした。
少女は、こちらをじっと見つめたまま、一言も発することなく佇んでいます。
その視線に耐えかねて、こちらから話しかけようとした瞬間、
「あなたは誰ですか?」
唐突に質問を投げかけられて、言葉に詰まってしまいました。
正直に答えるべきか、それとも誤魔化すべきなのか、
迷っているうちに、少女の目つきが鋭くなったような気がして、
背筋がゾクッとする感覚が走りました。
これ以上黙っているわけにはいかないと思い、勇気を出して答えを返すことにしました。
「私の名前は、ジェーナと言います。気がついたら、
ここに迷い込んでしまったみたいで、帰る方法が分からなくて困っています。
どうか、助けていただけないでしょうか? お願いします」
そんな願いを込めて、深々と頭を下げました。
少女はしばらくの間黙り込んでいましたが、
やがて小さく溜息をつくと、静かに口を開きました。
「……事情は分かったわ、だけど、このまま放っておくわけにもいかないわね。
いいわ、案内してあげるから付いてきてちょうだい」
その言葉に、思わず耳を疑ってしまいました。
まさか、こんな簡単に了承してくれるとは、思ってもいなかったからです。
驚きを隠しきれないまま、呆然と立ち尽くしていると、
少女が急かすような視線を送ってきたので、慌てて後を追うことにしました。
こうして、謎の少女に連れられて、館の中を歩いて行くことになったのですが、
その道中、いくつか分かったことがあります。
まず、この建物はかなりの広さがあるようで、外観からも分かるように、
相当立派な建物であることが窺えます。
次に、この場所に住んでいる住人達は、皆、普通の人間とは異なる特徴を持っているということ。
例えば、耳が尖っていたり、肌が白かったり、髪の色が違ったりと、様々です。
ただ、共通している部分もあって、全員が美男美女揃いであるということ、
それから、何らかの能力を持っているという点もあります。
これらの情報を踏まえて考えると、この館に住んでいる人達は、
全員、特別な力を持った存在、あるいは、特殊な能力を持つ者達ということになるのではないかと思います。
そこで、ふと思ったのですが、もしかして、自分も彼らと同じ、
もしくは、似たような力を持っているのではないかと考えたのです。
そこで、試しに、自分の中に眠る力を引き出してみようとしたのですが、
残念ながら、何も起こりませんでした。
がっかりしながら歩いているうちに、ある部屋の前で立ち止まりました。
そこは、他の部屋と比べて一際大きく、豪華な装飾が施されていました。
恐らく、この館の主人の部屋なのではないかと推測されます。
中に入ると、予想通り、そこに一人の女性がいました。
「ようこそ、我が屋敷へ」
そう言った彼女の姿を見た瞬間、思わず息を呑んでしまいました。
というのも、目の前にいる人物が、あまりにも美しかったからです。
年齢は20代後半くらいに見えますが、実年齢は不明です。
金色の長い髪、切れ長の青い瞳、豊満な肉体、
どれを取っても一級品としか言いようのない美しさを兼ね備えています。
特に目を引くのは、胸元が大きく開いたドレスを着ており、
胸の谷間が強調されているため、余計にエロティックな雰囲気を漂わせています。
そんな彼女の美しさに見入っていると、突然、彼女が話しかけてきました。
「それで、あなたの名前は何て言うのかしら?」
その問いかけに、ハッとして我に返り、慌てて自己紹介を始めました。
「初めまして、私の名前は、ジェーナと申します。
実は、道に迷ってしまって困っているところを、
こちらの方に助けていただいたんです。
それで、お礼も兼ねて、何かお手伝いさせていただきたいと思いまして、
ここまでやってまいりました。どうぞよろしくお願いします!」
元気よく挨拶をしたつもりだったのですが、緊張のせいか、少し声が裏返ってしまい、
恥ずかしさのあまり顔が熱くなるのを感じました。
そんな様子を見ていた彼女は、クスッと笑みを浮かべると、優しく微笑みかけてきました。
その表情を見た瞬間、胸の奥底から熱い感情がこみ上げてきて、心臓がドキドキし始めました。
これが一目惚れというものなんでしょうか?
そんなことをぼんやりと考えているうちに、彼女の方から話を切り出してきました。
「そんなに畏まらなくてもいいのよ、もっとリラックスしてくれて構わないんだから。
それに、困った時はお互い様でしょ? だから、遠慮せずに何でも相談してちょうだいね」
その言葉を聞いた途端、嬉しさが込み上げてきて、自然と笑みが溢れてきました。
やっぱりこの人は良い人なんだと確信した瞬間でした。
その後、しばらく雑談が続いた後、そろそろ本題に入ろうとした時、
部屋のドアが開き、一人の女が入ってきました。
その女を見た途端、彼女の顔色が変わり、険しい表情になりました。
一体どうしたんだろうと思って見ていると、女が彼女に耳打ちするように何かを呟きました。
それを聞いた途端、彼女の顔色が更に青ざめていき、額からは冷や汗が流れ落ちました。
その様子はまるで恐怖を感じているかのようでした。
そんな二人のやり取りを見ている内に、嫌な予感が頭をよぎり、不安に駆られてしまいます。
もしかしたら、自分がここにいる事で、二人に迷惑をかけて
しまっているのかもしれないと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになります。
一刻も早くこの場から離れた方が良いと考え、立ち去ろうとすると、
不意に腕を掴まれ、引き止められました。
驚いて振り返ると、そこには悲しそうな表情を浮かべた彼女と、
怒りに満ちた表情を浮かべる女の姿がありました。
どうしていいか分からず戸惑っていると、彼女が優しい声色でこう言いました。
大丈夫、心配しないで、私が必ず守ってあげるから、安心して頂戴、と。
その言葉を聞いた瞬間、不思議と安心感を覚え、心が軽くなるのを感じました。
同時に、この人のために頑張ろうという気持ちが強く湧いてきたのです。
それから、三人で話し合いを行い、今後どのように行動するかを決めることとなりました。
その結果、まずは情報収集を行う事になり、その為に必要な準備を始めることになりました。
最初に行った事は、食料の確保です。
いくらお金があっても、食べ物がなければ生きていけませんから。
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